平成17年4月の防災研究所の改組に伴い,地震防災研究部門,地震災害研究部門,地震予知研究センター,火山活動研究センターからなる地震・火山研究グループが発足いたしました.以降,グループでは,内外の研究連携および研究情報交換・発信の場として,毎月一回(通常は第4金曜日午後),グループ研究会を開催しています.
平成24年度
3月京都大学防災研究所 連携研究棟 3階 大セミナー室で開催!
以下の要領で、3月の防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
奮ってご参加ください。
3月地震火山グループ研究会
日時:3月22日(金)15:00 - 17:15(予定)
会場:京都大学防災研究所 連携研究棟 3階 大セミナー室
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/contents/tatemono_j.html
(地図中の5番の建物です)
15:00 - 15:30 内出崇彦(地震防災研究部門 地震発生機構研究分野)
「高周波地震波放射源と断層すべりの時空間的な関係について ~
2010年El Mayor-Cucapah地震を例にして~」
15:30 - 16:00 Jim Mori(地震防災研究部門 地震発生機構研究分野)
「Japan Trench Fast Drilling Project (JFAST):
2011年東北地震の巨大滑りを理解するための掘削調査」
16:15 - 17:15 松波孝治( 地震災害研究部門 強震動研究分野)
「最近の地震災害に関係した観測・調査・研究について」
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また、当日18時から、生協会館で本グループ研究会の懇親会を予定しております。
奮って御参加ください。
【要旨】
○内出崇彦(地震防災研究部門 地震発生機構研究分野)
「高周波地震波放射源と断層すべりの時空間的な関係について ~2010年 El Mayor-Cucapah地震を例にして~」
大地震(たとえばM7以上)による数Hz程度の「高周波地震波放射」は強震動評価の上で重要であるのみならず、震源の物理を理解する上での鍵になるものと考えられる。本講演では、これまでの高周波地震波放射の研究を紹介した上で、2010年El Mayor-Cucapah地震を例にして、高周波放射源と断層
すべりが相補的な位置・時間関係にある場合が数多く見られることを示し、それが示唆する物理的な背景を議論する。
○Jim Mori(地震防災研究部門 地震発生機構研究分野)
IODP Expedition 343, Japan Trench Fast Drilling Project (JFAST), sailed from April 1 to May 24, 2012, with the main goal of investigating the area of very large fault displacement during the 2011 Tohoku, Japan earthquake. A borehole site near the Japan Trench was chosen with the
objective of reaching the main slip zone of the earthquake at a depth of 800 to 1000 meters below seafloor. Huge fault displacements (30 to 50 meters) on this portion of the megathrust are thought to be largely responsible for the tsunami that devastated much of the coast of
northeast Honshu, so understanding of the fault properties and rupture mechanisms of this area is a primary research issue for the earthquake.
For these investigations, there are temperature measurements in the immediate vicinity of the fault to determine the level of dynamic friction during the earthquake. Also, core sampling of the actual fault zone provides direct observations of the physical properties of fault and
material for rock mechanics experiments.
The drilling operations had many technical challenges, mainly related to the very deep water of nearly 7000 meters. A new record was established for the greatest total depth from the sea surface of a research borehole.
○松波孝治( 防災研究所地震災害研究部門 強震動研究分野)
「最近の地震災害に関係した観測・調査・研究について」
ここ10年間ほどの間に起きた被害地震の中で、直接に観測・調査・研究したことについて振り返り報告する。
12月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
以下の要領で、12月の防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
(!いつもと曜日が違いますので、ご注意ください。!)
海底下で地震が起こり海面が急激に上昇・下降しますと、津波が励起されるだけでなく、大気の振動(微気圧波(インフラサウンド))も励起され、大気中を音速で伝播します。山本先生には、微気圧波を用いた津波減災警報システムに関する構想と取り組みについてお話しいただきます。続いて、沖合で観測される津波情報をもとに、沿岸に到達する津波をリアルタイムに予測する手法の開発状況について、安田先生にお話しいただきます。津波に伴う微気圧波は電離圏まで到達し、電子密度分布の擾乱を引き起こしますが、2011年東北沖地震の際に地上GPS受信機によって捉えられた電離圏擾乱とシミュレーションによる再現につきまして、松村さんにお話しいただきます。
奮ってご参加ください。
12月地震火山グループ研究会 「津波に伴う微気圧波と津波のリアルタイム検出」
日時:平成24年12月18日(火)14:00 - 16:20頃
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
14:00 - 15:00 山本 真行(高知工科大学 システム工学群 准教授)
「インフラサウンドセンサ製作と多地点観測による津波減災警報システムについて」
(要旨は下に添付)
- 休憩 -
15:10 - 15:40 安田 誠宏(京都大学防災研究所 沿岸災害研究分野 助教)
「沖合観測情報を用いたリアルタイム津波予測手法の開発」
15:40 - 16:20 松村 充(電気通信大学 宇宙・電磁環境研究センター ポスドク研究員)
「2011年東北沖地震後の電離圏変動の数値シミュレーション ~電離圏からの津波検出に向けて~」
(要旨は下に添付)
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山本 真行(高知工科大学 システム工学群 准教授)
「インフラサウンドセンサ製作と多地点観測による津波減災警報システムについて」
インフラサウンドとは可聴域下限20 Hz以下の圧力波のことで、波長がキロメートルスケールと大きく大気粘性による減衰効果が少ないため長距離伝搬できる特性を有している。核実験検知等の目的で計測技術としての研究が長年なされてきたが、近年では世界各国のCTBTO条約批准の準備として観測網が整備され、各観測点のデータが大気中の地球物理学現象研究に用いられる
事例が急増している。国際会議Meteoroids 2004のカナダ・西オンタリオ大学のチームの発表(Brown et al., 2004)他に触発され、講演者と石原吉明氏(現:環境研)は、隕石落下クラスの流星(火球)の音波観測を視野に入れた観測手法確立を目指しインフラサウンド研究に着手した。以降、人工励起波としては、打上花火、ロケットの打上げ、はやぶさ帰還カプセルの大気圏再突入を、自然励起波としては桜島・霧島等の火山噴火の観測を中心にエネルギー推定、方向探知等の課題に挑戦してきた。発生源としては、上述の他に、自然現象としては、雷鳴および高高度放電発光現象(スプライト等)、オーロラ、地滑り、雪崩、自然ダムの崩壊、巨大低気圧、竜巻、地震、津波、波浪等がターゲットとなり得る。人工現象としても、上述の他に、化学的爆発、高速鉄道のトンネル通過、工工場騒音、発破、高速道路、風力発電等も考えうる。大気中のセンシング手法としてだけでなく、地表面から超高層大気までの上下結合を考慮するうえでもインフラサウンドなど音波モードや大気重力波モードによるエネルギー伝搬過程の解明は重要である。
2011年3月11日の巨大地震により励起された津波において、CTBTO観測網を中心とする圧力計測点で津波に伴う明瞭なインフラサウンドの到達が確認され(Arai et al., 2011)、津波防災への役割を担える可能性が現実のものとなりつつある。本講演では、これまで実施した
観測的研究の経緯と成果について紹介し、インフラサウンド観測網の確立による津波等の防災への応用可能性について議論したい。
松村 充(電気通信大学 宇宙・電磁環境研究センター ポスドク研究員)
「2011年東北沖地震後の電離圏変動の数値シミュレーション ~電離圏からの津波検出に向けて~」
津波によって大気重力波が励起され、それが電離圏まで伝播して変動を引き起こすことは1970年代から理論的に予想されていた。
近年、観測技術の向上によりこのことがようやく実証され、電離圏変動の観測に基づいた津波検出も実用化に近づきつつある。
特に地上GPS受信機を用いた電離圏電子密度の観測は時間的にも空間的(水平2次元)にも高分解能であり、2011年の東北沖地震後にも津波起源の変動を明瞭に捉えている。
しかし、津波だけでなく津波発生地点の海面変動(津波源)も大気重力波や音波を励起し電離圏変動を引き起こすため、電離圏変動を津波と対応づけるためにはそれぞれの大気波動の寄与を定量的に評価することが必要である。
講演者は、津波源の広さ・振幅と津波の波長・振幅、および電離圏変動の特徴を対応づけることを目的として、津波・大気圏・電離圏の結合モデルを用いた数値シミュレーションを行っている。
本講演では数値シミュレーションで生成された電離圏変動を津波源の寄与と津波の寄与とに切り分け、それぞれが東北沖地震後に観測された電離圏変動とどのように対応しているかについて述べる。
10月京都大学防災研究所 連携研究棟 3階 大セミナー室で開催!
下記の通り,防災研究所 地震・火山グループ研究会を開催します.
今月のグループ研究会は,学内外の他の会議日程などの都合で,定例日より1週間遅らせて,11月2日(金)に開催します.
今月は,地震波形を使って,それぞれの分野で新しい手法や考え方を取り入れた研究をされている2名の講演者をお招きしました.
ぜひ,理学系の皆さんも工学系の皆さんも,関連するお互いの研究分野をよりよく知るために,積極的にご参加ください.
10月(11/2)地震火山グループ研究会
日時:2012年11月2日(金)14:00 - 16:10
会場:京都大学防災研究所 連携研究棟 3階 大セミナー室
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/contents/tatemono_j.html
(地図中の5番の建物です)
14:00 - 15:00 本多 亮(神奈川県温泉地学研究所)
「バックプロジェクション法による震源過程解析」
15:10 - 16:10 宮本 崇(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
「情報エントロピーに基づく性能照査用入力地震動の“集合”の 選定手法 」
【要旨】
14:00 - 15:00 本多 亮(神奈川県温泉地学研究所)
「バックプロジェクション法による震源過程解析」
日本のHi-net観測網のデータを用いて2004年に発生したスマトラ地震の震源過程解析を行ったIshii et al. (2005)以後、バックプロジェクション法を用いた震源過程解析の有効性が広く認識されるようになった。昨年の東北地方太平洋沖地震では、遠地・近地の観測網で多くの良好なデータが取得され、解析に用いられている。今回は、バックプロジェクション法を用いて震源過程解析をする際の利点や課題などを示しながら、東北地方太平洋沖地震のほか、これまで我々が行ってきた解析例を紹介する。
15:10 - 16:10 宮本 崇(山梨大学 大学院医学工学総合研究部)
「情報エントロピーに基づく性能照査用入力地震動の“集合”の 選定手法 」
構造物の地震時安全性を確かめる基準外力として用いられる入力地震動には,設計用応答スペクトルに適合する波形が用いられることが多い他,近年では強震動シミュレーションから生成される波形を用いる検討も進んでいる.
一方で,これらの手法では,波形の位相情報やシミュレーション上のパラメタが一意に決まらないため,入力地震動の候補が無数に生じることとなる.
従来の考え方では,構造物に求められる安全性が高いほど,それらの候補の中で「強い」と評価される波形が入力地震動として選ばれた.これに対し本手法では,構造物に求められる安全性が高いほど,候補全体の中で大きな範囲を占める「多様な」地震動の集合を,情報エントロピーに基づいて選ぶ手法を提案する.
7月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
以下の要領で、7月の防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
話題提供いただく野田さんは、数理的・実験的手法を用い、地震発生に関する
世界最先端の研究をおこなっていらっしゃいます。
今回は、地震の発生予測にとっても大変重要な二つのテーマに関するお話しを
たっぷり聴かせていただくことにしました。
奮ってご参加ください。【 要旨(PDF)】
7月地震火山グループ研究会 「地震発生の物理」
日時:平成24年7月27日(金)14:00 - 16:10
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
話題提供:野田博之(海洋研究開発機構・研究員)
14:00 - 15:00 「階層アスペリティの地震サイクルシミュレーション ― 地震サイズに見合う準備過程の有無」
15:10 - 16:10 「脆性・塑性遷移を考慮に入れた断層の構成則と、構造地質学の「断層モデル」の数理モデルによる具体化に向けて」
6月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
以下の要領で、6月防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、南九州の活動的な火山である霧島新燃岳と桜島を取り上げます。
奮ってご参加ください。
6月地震火山グループ研究会
日時:平成24年6月29日(金)14:00 - 16:00
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
話題提供:市原美恵(東京大学地震研究所)
タイトル:地震-空振相関法による火山活動のモニタリングと波動放出機構の考察
要旨:
空振観測は,火山の表面現象のモニタリング手法として,ますます盛んになっている.空振観測の最大の障害は,風のノイズであるが,アレイ観測やパイプを張り巡らせた空間フィルターによる低減方法が考案され,音源から数千kmも離れた場所でシグナルが捉えられるようになってきた.しかし,これらの大がかりな観測システムが整備されている火山は少なく,風ノイズとの区別の付きにくい連続的噴火(噴気)活動の検出はまだ限られている.本研究では,1つの空振計と併設された地震計を組み合わせて,空振シグナルを有効に検出する方法を考案し,それを利用して新燃岳2011年噴火や浅間2009年噴火の活動推移を解析した.両火山とも,噴火前には,火口近くの一点しか空振観測点が設置されていなかった.その準備不足は反省しつ
つも,その一点の観測データから微弱な空振シグナルを拾い出すことのできる本方法は,様々な状況に於いて有用であると考えている.さらに,新燃岳2011年噴火の準プリニー式噴火やブルカノ式噴火における,空振と地震のエネルギー配分の推移を解析し,他の火山の様々な噴火様式に伴う観測例と比較した.その結果から,噴火に伴う波動放出機構について議論する.
話題提供:井口正人(京都大学防災研究所)
タイトル:桜島火山活動と今後の火山噴火予知研究の問題点
要旨:
1955年に始まった桜島の南岳における爆発的噴火活動は1972年から1992年に最盛期を迎え,2003年以降は爆発回数が10回以下に激減した.代わって,2006年からは東山腹の昭和火口が噴火活動を再開し,2009年以降,爆発的噴火回数が急激に増えている.昭和火口の小規模爆発については1~24時間前に火口直下の浅部の膨張を示す,火口方向の収縮ひずみと直交方向の伸長ひずみが観測され,前兆現象を捉えられる段階にある.一方,長期的な活動については1993年以降,桜島の主マグマ溜まりがあるとされる姶良カルデラ下におけるマグマの蓄積が進行し,蓄積量は1993年以降,1億5千万立方メートルと推定される.噴出物量も増加しており,長期的に噴火活動が更に活発化することが懸念される.2010年11月のメラピ火山,2011年1月の霧島新燃岳噴火に見られるように開口した火道を持つ火山ではひずみが蓄積しにくく,地震活動の急激な活発化は見られない.1914年の桜島大正噴火開始の1日前から有感を含む地震が多発したが,1日前から前兆現象の捕捉では十分な防災対策ができない恐れがある.
5月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
以下の要領で、防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
奮ってご参加ください。
5月(6/1)地震火山グループ研究会 「東北地方太平洋沖地震前後の非地震性すべり」
日時:平成24年6月1日(金)14:00 - 16:10
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
14:00 - 15:00 内田直希(東北大学 地震・噴火予知研究観測センター)
「小繰り返し解析による2011年東北地方太平洋沖地震前後の準静的すべりの推定」
15:10 - 16:10 加藤愛太郎(東京大学 地震研究所)
「東北地方太平洋沖地震発生前に見られたゆっくりすべりの伝播」
【要旨】
14:00 - 15:00 内田直希(東北大学 地震・噴火予知研究観測センター)
「小繰り返し解析による2011年東北地方太平洋沖地震前後の準静的すべりの推定」
プレート境界でのすべりを表す小繰り返し地震の解析により,東北地方太平洋沖地震すべり域内外での対照的な準静的すべりパターンが明らかになった.東北地方太平洋沖地震前においては,将来の地震時すべり域で,低速で揺らぎの大きいすべりがみられたのに対し,その周囲では,比較的すべりレートが速く,揺らぎは少なかった.一方,東北地方太平洋沖地震後は,地震時すべり域ではすべりが完全に停止したのに対し,その周囲では明瞭な加速(余効すべり)がみられた.このような特徴は,東北地地方太平洋沖地震のすべり域内外でのプレート境界の性質の違いを表している可能性がある.
さらに準静的すべりの時空間分布を詳しくみると,地震時大すべり域近傍で地震前3-5年にすべり速度増加(固着のゆるみ)があることや地震後の余効すべりに伝播が見られることが分かった.これらは,大地震の発生過程をモデル化する上で重要な推定結果と考えられる.
15:10 - 16:10 加藤愛太郎(東京大学 地震研究所)
「東北地方太平洋沖地震発生前に見られたゆっくりすべりの伝播」
2011年東北地方太平洋沖地震は、その発生約1ヶ月前から、本震の破壊開始点の北側で群発的な前震活動を伴った。震源域に近接する地震観測網の連続波形データから、前震の新たな震源カタログを構築した。このカタログを分析することで、本震の破壊開始点へ向かう震源移動が、ほぼ同じ領域(以下、EMZ)で、2度にわたり起きていたことが示された。1度目の移動は、2月中旬から下旬まで継続し、その移動速度は2~5 km/dayであった。2度目の移動は、3月9日のM7.3の最大前震の発生後に見られた。その移動速度は平均約10 km/dayで、移動速度は前震M7.3の発生後から徐々に減速を示した。
これらの前震活動には、小繰り返し地震が含まれていたことから、震源の移動は、本震の破壊開始点へ向かうプレート境界面上のゆっくり滑りの伝播を意味する。3月9日の前震M7.3の発生後、EMZの北側では、M7-8級の地震後に見られる余効すべりと類似したすべり挙動が見られた。一方で、EMZ内では、2月中旬-下旬に引き続いて2度目のゆっくり滑りの伝播が観察された。本震前に生じた2度にわたる「ゆっくり滑りの伝播」が、本震の破壊開始点へ応力集中を引き起こし、巨大地震の発生を促した可能性が考えられる。
4月京大宇治キャンパス おうばくプラザきはだホールで開催!
⇒⇒⇒ 報告書(PDF)更新:2012/5/14
京大防災研地震火山グループでは、毎月一回研究会をおこなっておりますが、4月27日には、きはだホールで特別シンポジウムを実施することにしました。
多くの方のご参加をお待ちしております。【 趣旨および詳細(PDF)】(最終更新:2012/4/24)
4月地震火山グループ研究会 特別シンポジウム(京大防災研地震火山グループ主催)
テーマ:大規模地震発生の予知予測を考える ―東海地震に対する枠組みを軸に―
日時:平成24年4月27日(金)14:00 - 17:00
場所:京大宇治キャンパス きはだホール(地図参照)
前半(14:00 - 15:35)
福島:趣旨説明(5分)
橋本 学「大震法:地震科学の製造物責任」(30分)
小泉尚嗣「地震防災対策強化地域判定会での議論の実情について」(30分)
堀 高峰「地震発生予測研究の現状と展望~どのような情報発信が可能か~」(30分)
後半(15:45 - 17:00)
討論会(パネルディスカッション)
司会:福島 洋(京大防災研)
以下の三つのテーマに沿った討論を行う予定です。
・「望ましい予知予測情報は?」
・「防災情報としての予知予測情報に地震研究者はどこまで関与すべきか?」
・「研究者集団として今後取るべきアクションは?」
平成23年度
3月京大宇治キャンパス 防災研究所連携研究棟3階セミナー室で開催!
今回は、今年度限りで退職されます、技術室の平野憲雄さん・地震予知研究センターの竹内文朗先生・火山活動研究センターの石原和弘先生にお話しいただきます。
奮ってご参加ください。時間が変則的なので、ご注意ください。
3月地震火山グループ研究会
日時:3月23日(金)15:00 - 17:30
会場:京大宇治キャンパス 防災研究所連携研究棟3階セミナー室
(http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/contents/tatemono_j.html の5番の建物です)
15:00 - 15:30 平野憲雄(技術室)
「忘れがちのブラックボックス」
要旨:京大に就職したころ(1965年)は、センサーや記録器を手作りする時代であった。
時代が進むと、安くて精度の良い既製品の利用へと置き変ってきた。
地震計は振り子の電磁式で原理はそのままである。
特殊なセンサー(歪み計など)もあるが、安価であることが大学の必要条件だろう。
一方の記録方式は、印画紙や紙に記録する方式から磁気テープへ、そしてハードディスクやDVDへと変遷してきた。
現在では、パソコンの画面で記録を見て、解析処理が迅速にできるようになった。
工作室の役目は開発から修理のみになり、製作の熟練技術は無用になりつつある。
気温変化を見越した設計製作かの疑問も忘れてゆく技術痴呆症へと進むのだろうか。
ほとんどの市販の既製品は中身を知らなくても良くなり、判らないので信用するしかない。
センサーは良質でも、設置場所でデータの質が大きく変る。
肌(アナログ)で感じた環境は設置した人のみの体験で他人には伝わりにくい。
また、データ収録過程もアナログからデジタルになり、フイルターで信号を捨てている部分も含めて知る必要もない、知る事ができないブラックボックス扱いとなっている。
このブラックボックスの適用範囲が広がってくると、失敗に気づかない恐れがある。
最大のブラックボックスは「科学とは神の創られた世界を解明すること」を忘れていることではないだろうか。
時代の流れの体験から話題提供をしてみたい。
15:30 - 16:15 竹内文朗(地震予知研究センター)
「よくぞ今日まで」
要旨:大学生活がそろそろ半世紀になる。
若き日、地下の構造に着目し、地震探査、重力測定、やや長周期の微動、などの測定が面白かった。就職は微小地震部門で、北陸微小地震観測所にも勤務した。その時の福井地震断層調査に力が入った。再び宇治では、移動班や微小地震観測が続いた。
現在は、過去のデータを使っている。
皆さんにはよく生かして頂いたと感謝ばかりである。
16:30 - 17:30 石原和弘(火山活動研究センター)
「火山活動予測に関連して、やってきたこと、やり残してきたこと」
要旨:火山噴火の発生、活動の推移の予測は実に厄介である。火山活動の理解、特に、火山噴火に至る過程の解明を目指して、火山噴火予知計画発足以来、自身と研究者仲間が取り組んだ火山活動予測に関連する研究課題の成果と課題、火山噴火予知の到達点と現時点での限界などについて、桜島等いくつかの火山の事例をもとに紹介する。
12月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
今回は、地震波の散乱に関する研究で世界をリードしてこられた東北大学の佐藤春夫先生にお話しいただきます。
奮ってご参加ください。時間が変則的なので、ご注意ください。
12月地震火山グループ研究会
日時:12月16日(金)15:30 - 17:30
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
話題提供:佐藤春夫(東北大学大学院理学研究科)
タイトル:短周期地震波と地球のランダム不均質構造
要旨:
近地小地震の地震記録,特に短周期成分の記録は複雑で,想像される単純な震源過程とは大きく異なる様相を示す.S波相のみかけ振動継続時間は,地震のマグニチュードから推定される震源継続時間よりも長く,伝播距離の増加に伴って拡大することが知られている.また,S波相の後には,コーダ波と呼ばれる波群が長い時間にわたって観測される.遠地地震のP波記録の継続時間も震源継続時間より長く,水平動transverse成分にうも波動の励起が観測される.バンドパスフィルタを通した地震波形のエンベロープに着目すると,その形状は震源距離や周波数に依存し,また波線経路によっても異なる.これらの短周期地震波形の特徴は,リソスフェアにおけるランダムな不均質構造による散乱に起因すると考えられ,統計的散乱理論に基づいた解析によってランダムな不均質の定量的な推定が試みられてきた.これらの方法による不均質構造の統計的な記述は,トモグラフィーやレシーバー関数法などによる決定的な方法と相補的に,固体地球の構造に関する知識を豊かにするであろう.本講演では,多様な観測事実とこれらを説明するための超音波を用いた岩石実験や簡単な数理モデル,これらを基に推定されたリソスフェアのランダム不均質構造について,総合的な報告を行う.
資料(PDF34.8MB):(2011.12.13up)
<佐藤先生より補足説明>散乱と不均質のレビューですが,特にランダム不均質構造とエンベロープ形成に的を絞り,Sato & Fehler
1998収録のものに加えて,それ以降の仕事を付加したものです.できるだけ,波形を見てもらうように作ってみましたが,数式の導出は飛ばしてあります.
10月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
今回は、10月に着任されました倉田先生をはじめ、フレッシュな方々に話題提供をお願いしています。
奮ってご参加ください。
10月地震火山グループ研究会
日時:10月28日(金)14:00 - 16:30
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
14:00 - 14:50 倉田 真宏(地震防災研究部門)
「都市のレジリエンシーを支えるスマートな建築物群の構築-大規模構造物の長期モニタリングを目指したローコストセンサネットワークとサイバインフラの整備-」 要旨:大規模構造物に配置したセンサネットワークより得られる情報を用いて構造物の動的挙動と長期健全度をモニタリングする技術の開発に取り組んでいる.具体的には,地震力などの大きな外力を受けた前後の構造物の挙動変化を知ることから構造物の損傷状態を推定し早期危険度診断に利用したり,通常時荷重(橋梁のトラック荷重や超高層建物の風荷重など)に起因する経年劣化を追うことからや残留耐用期間を工学的に評価したりすることを目指している.提案するシステムではワイヤレスセンサ技術を利用してセンサ設置費用を抑え密度の高いセンサ配置を実現することからモニタリングシステムの精度を高める.また実用性の高いサイバインフラストラクチャを整備することから,得られた大量の生センサデータの中に埋もれた情報を自動的に評価して確率論的損傷指標や耐用期間推定に変換するデータインテロゲーションソフトウェアの開発にも取り組んでいる.将来的には,センサを整備したスマート建築群と地震動マップなどを組み合わせることから,構造種ごとに分類した地震被害推定マップの制作などにもチャレンジし,震災などの復旧活動を支援していくシステムの構築を考えたい.
14:50 - 15:30 山田 真澄(地震防災研究部門)
宇治キャンパスの災害リスクと事業継続計画の策定に向けて 要旨:宇治キャンパスには、大地震時に火災や事故が発生する可能性のある実験施設等が少なからず含まれており、危機的状況が発生した場合に、学生の安全を確保し、研究・教育活動を継続する必要がある。しかしながら、危険物の種類や量、危険物を取り扱う場所は、居住者間で十分に情報共有されているとは言えず、極端な話、隣の部屋で何が行われているかも知らずに生活している状況にある。我々は、防災研究に関わる者として、宇治キャンパス構成員の防災意識を高め、地震などの災害発生時にできるだけ被害を抑えるよう、日頃から努力していかなければならないと考える。本研究では、その第一歩として、私の研究テーマの1つである緊急地震速報の宇治キャンパスへの導入、さらに避難時の役に立つハザードマップの作成についての取り組みを紹介する。
15:30 - 15:40 休憩
15:40 - 16:30 宮澤 理稔(地震予知研究センター)
「東北地方太平洋沖地震に伴う日本列島での遠地トリガリング」 要旨:先の東北沖地震の発生により日本列島の応力場は大きく変化し、活発な余震活動や誘発地震が観測されている。断層長スケール内の地震活動の多くは、永久変位に伴う静的応力変化による誘発として解釈される。一方、地震波の伝播によってもたらされる動的な応力変化は、震央距離数100km以遠では静的応力変化に比べ遥かに値が大きく、一過性ではあるものの、地震を誘発する可能性がある。本講演では、これまでに観測例の多い表面波による誘発について今回明らかになった現象について紹介する他、発見が難しいP波による誘発の可能性についても報告する。
9月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
今回は、名古屋大学の寺川寿子さんに講演をおねがいしました。
解析手法の理論的背景についても時間を割いて解説していただけますよう、お願いしてあります。
奮ってご参加ください。
9月地震火山グループ研究会「日本列島の応力場」
日時:9月16日(金)14:00 - 15:30
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
話題提供者:寺川寿子(名古屋大学 環境学研究科附属 地震火山・防災研究センター)
タイトル:地震のCMTデータから推定される日本列島域の3次元テクトニック応力場
要旨:
日本列島は,4つのプレートが相互作用を及ぼし合う複雑なテクトニック環境下に ある.日本列島域では,これらのプレート間の力学的相互作用と地殻内の構造境 界の運動によって形成された複雑な応力場を反映して,時間的にも空間的にも複 雑で多様な地震活動が観測される。したがって,地震の発生を理解するためには, 地殻応力状態を推定することが本質的に重要である.本講演では,応力インバー ジョン法の発展の歴史を眺めながら,地震のCMT(Centroid Moment Tensor)デー タから広域テクトニック応力場を推定するCMTデータインバージョン法の原理を概 説し,防災科学技術研究のF-netモーメントテンソルカタログのデータから求めた 日本列島域の3次元応力パターンの特徴を紹介する.
7月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
今月は、東北地方太平洋沖地震の津波の調査と、地震前後の海底地殻変動観測について話題提供があります。
皆さまご存知の通り、津波と海底地殻変動は、今回の地震に関して大変重要な要素です。
奮ってご参加ください。
7月地震火山グループ研究会 「東日本大震災(4)」
日時:7月29日(金)14:00 - 16:10
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
14:00 - 15:00 森 信人(京大防災研気象・水象災害研究部門 准教授)
「東北地方太平洋沖地震津波の痕跡調査結果と被災状況」
要旨:東北地方太平洋沖地震津波の調査では,津波工学,海岸工学および地球物理関係研究者合が多数参加して全国的に大規模な津波痕跡調査が実施された.防災研は,全国の津波調査のための事務局として調査の調整と取りまとめを行った.
本研究会では,津波調査の概略と調査データの初期解析結果について概説する.
15:00 - 15:10 休憩
15:10 - 16:10 佐藤 まりこ(海上保安庁 海洋情報部 主任研究官)
「東北地方太平洋沖地震前後の海底の動き」
要旨:海上保安庁では、プレート境界地震の震源域である海域の地殻変動をモニターするため、海底地殻変動観測を実施している。これまでに、海洋プレートの沈み込みに伴う定常的な地殻変動や地震に伴う地殻変動を検出している。3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(M9.0)では、震央付近の海底基準点が同地震に伴い東南東に約24m移動し、約3m隆起したことがわかった。講演では、東北地方太平洋沖地震前までに得られていた成果、同地震に伴う海底の地殻変動及びその後の動き(余効変動)について報告するとともに、海底地殻変動観測技術の現状と今後の展望について述べる。
6月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
先月・先々月に続き、東日本大震災に関連するテーマです。
今回の研究会では、防災研地震予知研究センターの飯尾能久センター長から
東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の全体像に関する話題提供
があります。これまでに蓄積されてきた様々なデータや研究結果を概観し、
今後取り組むべき重要課題について議論を交わす機会になれば、と思います。
6月地震火山グループ研究会 「東日本大震災(3)」
日時:6月24日(金)14:00 - 16:00
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
話題提供:飯尾能久(防災研地震予知研究センター)
タイトル:東北地方太平洋沖地震の実際
要旨:
今回の地震に関して,
・なぜマグニチュード9となったのか?
・今後の地震活動はどうなるのか?
という質問を多くいただいている.
どちらの質問に答えるためにも,可能な限りの現状の正確な把握が最も重要である.
東北地方太平洋沖地震は,日本付近の海域としては,計器による観測データが一番豊富な地域で発生した.海底地殻変動データを用いた推定では,地震すべりの量は最大で50mにも及んだと言われている.上記の質問に答えるために,これまでに報告されているデータを吟味し,
・地震時に何が起こったのか?
・震源域とその周辺はどのような状況にあったか?
などについて整理したい.ただし,このabstractを書いている時点では,残念ながら,上記の質問に明確に答えることは出来ていない.
5月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
今回は、前回に引き続き、東日本大震災に関連する話題を防災研地震火山グループ内外の方々に提供していただきます。
前半は、強震動や強震動の成因に関する話題で、後半は4月11日に福島県東部で発生したM7の誘発地震に関するものです。
5月地震火山グループ研究会「東日本大震災の調査研究」
日時:5月20日(金)14:00 - 16:10
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
14:00 - 14:30
発表者名:浅野公之(地震災害研究部門)
タイトル:「2011年東北地方太平洋沖地震本震の強震動生成域」
要旨:2011年東北地方太平洋沖地震では広範に強震動が観測された.これらの 強震記録を分析し,地震動被害に密接に関係する周期0.1-10秒程度の地震動を説明するための震源モデルを構築している.強震動から推定された強震動生成域と長周期地震波形や地殻変動,津波等によって推定されている時空間のすべり分布との関係を議論することで,プレート境界巨大地震の震源像や強震動生成機構に関する本質的な知見が得られると考えている.現時点での解析結果について報告する.
14:30 - 15:00発表者名:川瀬博・松島信一(社会防災研究部門)
タイトル:宮城県K-NETサイト築館(MYG004)周辺における微動観測と余震観測の状況報告
要旨:川瀬・松島研究室のメンバー5名と清水建設技術研究所のメンバー3名からなる チームは、4月29日から5月1日にかけて宮城県のK-NET強震観測サイトMYG004築館とMYG006古川において、その地盤増幅特性を明らかにする目的で、サ
イト近傍でアレー微動観測を実施し、連続余震観測点を計5点設置してきた。現時点では、微動観測についてはそのスペクトル比の分析結果、余震観測については設置前後に記録された2地震のスペクトル比の分析結果しか得られていないが、その設置状況と予備的解析結果の概要を本震のスペクトル比と比較しつつ報
告する。
休憩
15:10 - 15:40
発表者:遠田晋次(地震予知研究センター)・堤 浩之・杉山達哉・安田大剛(理学研究科地球物理学教室活構造学講座)
タイトル:4月11日いわき市南部で発生したM7地震の地震断層
要旨:同地震によって,既往地質図と活断層図に示されていた井戸沢断層と湯ノ岳断層上で地震断層が出現した.念のため住民への聞き取りを行い,両断層とも4月11日の地震時に出現したことを確認した.両断層は『ハ』の字状に分布し,『ハ』の字内部には新第三系の堆積岩類が分布し,それを取り囲むように古期変成岩・花崗岩が分布し山地を構成する.特に,湯ノ岳断層上に現れた地震断層はほぼ正確に地質境界に沿っている.変位センスは,一部にわずかな横ずれ変位を伴う正断層で,両断層とも西落ちのセンスである.長さはそれぞれ14
kmと15 km,最大上下変位量はそれぞれ2.1 mと0.8mに達する.共役ないしは延長関係にない2つの正断層が同時に活動した例は珍しいと思われる.
15:40 - 16:10
発表者:齊藤隆志(地盤災害研究部門)・松波孝治(地震災害研究部門)・福島洋(地震予知研究センター)
タイトル:InSAR解析結果と10mDEMを用いた水文地形解析との関係
要旨:4月11日いわき市南部付近で出現した地震断層について,長波長トレンドを除去したローカルな変動を表すInSAR解析結果と国土地理院で公表されている10mDEMを用いた水文地形解析結果の関係を示す.高度分布,傾斜分布,集水域形状,河道網形状,地すべり分布,および地質との関係を示す.空中写真判読を用いたリニアメント抽出とあわせて報告する.
4月京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5で開催!
《話題が増えました》
今回は、東日本大震災に関連する話題を五名の防災研地震火山グループ内部の方々に
提供していただきます。前半は、3/11の地震によりトリガーされた、あるいは周辺で今後起こりうる地震に関する話題で、後半は被害調査に関する話題です。
4月地震火山グループ研究会「東日本大震災の調査研究」
日時:4月22日(金)14:00 - 16:20
会場:京大宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4,5
14:00 - 14:20
発表者名:深畑幸俊
タイトル:「東北地方太平洋沖地震による絶対歪みの解放」
要旨:地震は歪みの解放過程であるが,通常は蓄積されたひずみの一部を解放するに過ぎない.しかし,2011年東北地方太平洋沖地震は,断層上にこれまでに蓄積された歪みをおよそ全て解放する極めて例外的な地震であったと考えられる.なぜそのように考えられるのか本震の破壊過程や余震のメカニズム解から説明すると共に,その物理的意義について述べる.
14:20 - 14:40
発表者名:高田陽一郎 (高田、福島、橋本)
タイトル:InSAR解析による誘発された内陸地殻変動の検出
要旨:ALOS(だいち)搭載の合成開口レーダー(PALSAR)が東日本を広域かつ面的に撮像した。このデータを用いてInSAR解析を行い、さらにM9.0の地震に伴う変動縞から長波長トレンドを除去することで、同地震により誘発された内陸地殻の変形を検出した。茨城県北部から福島県浜通り、長野県北部、宮城県北部、吾妻山麓等について報告する。
14:40 - 15:10
発表者:遠田晋次
タイトル:太平洋沖地震による内陸地震のトリガリングと今後の地震活動への長期的影響
要旨:同地震による静的応力変化に関する計算結果と今後の地震活動の推移予測について紹介する.日本列島は地域によって応力場と構造に差があり,クーロン応力を解く断層面を適確に判断する必要がある.著者は本震前までの防災科学技術研究所のF-net解を使用し,各地震の両節面をローカルな断層の代表とみなし評価した.応力増加の節面が優位の地域で,その後の地震活動が活発化していることがわかった.
休憩
15:20 - 15:50
発表者:田村修次
タイトル:東京湾ウォーターフロントにおける液状化被害
要旨:東日本大震災では、東京湾のウォーターフロントで激しい液状化が発生し、多くの戸建て住宅が被害をうけた。その被害の状況について話題提供をします。
15:50 - 16:20
発表者:後藤浩之(前半),山田真澄(後半)
タイトル:宮城県北部を中心とした地震動による被害
要旨:本地震では栗原市築館で震度7が観測され,また広い範囲で震度6強の地震動が観測されている.今回は宮城県北部地域(大崎市古川,宮城野区苦竹,栗原市築館,登米市迫町佐沼など)に着目し,本震後の被害の実態について報告する.また,4/7に発生した余震では,この地域において工学的に重要な周期帯域で本震と同等なレベルの地震動が観測されている.この余震による被害を本震後の様子と比較することで抽出を試みた.
平成17年4月に防災研究所が改組され,あらたに地震防災研究部門,地震災害研究部門,地震予知研究センター,火山活動研究センターからなる地震・火山研究グループが発足いたしました.今回の改組の主眼の一つは,研究組織間の相互の連携の強化であり,そのための枠組みとして研究グループが設けられました.この機会に,地震予知研究センター研究会として実施してきました研究会を地震研究グループの研究連携および研究情報交換,発信の場としたいと考え,研究会の名称も変更し,新たに地震・火山研究グループ研究会といたしました.
9月京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E-320D(特別会議室)
以下のとおり,9月の防災研地震火山グループ研究会を開催します.
今月はアウトリーチ活動に焦点を絞って,地震研究所から大木先生,当所から矢守先生をお招きして行います.ふるってご参加下さい.
9月地震火山グループ研究会
日時:9月24日(金) 14:00 - 16:30
会場:京大宇治キャンパス研究本館東棟3階E-320D(特別会議室)
講演者:大木 聖子(東京大学地震研究所)
タイトル: 地球との対話と社会との対話
要旨:「3000万円以上の公的資金を使用している研究者のアウトリーチ活動を義務化する.」「被災したのは専門家による助言が不足だったため訴追に踏み切った.」これらは先進諸国の科学の世界で実際に起きていることです.地球と対話だけしていればいい時代が終わりつつある一方で,社会全体は情報開示を惜しみなく行う組織に信頼感を抱くようになってきました.一体どういった背景でこのような流れになったのでしょうか.そして,実学と理学との両面を備えた災害科学はどのようなアウトリーチ活動をしていけばいいのでしょうか.本講演では科学コミュニケーションの出現とその役割について,地震研究所での取組みを紹介しながらご説明させて頂きます.
講演者:矢守 克也(京都大学防災研究所)
タイトル:地震防災教育の新しいかたち
要旨:(地震)防災教育は、「防災・地震に関する教育」だけでなく、今後は、「防災・地震を通した教育」を重視する必要があると思われる。そうした新しい動向の具体例として、地震予知研究センターの「満点計画」と小学校教育とをリンクさせた事例、子どもや高齢者にターゲットを絞って、お遊戯ゲームや健康体操と防災学習を一体化させた防災教育教材の開発事例(「ぼうさいダック」や「歩一歩(ほいっぽ)体操」)、防災に関わるジレンマについて防災の専門家、行政職員、住民などがディスカッションすることを中核とする防災教育教材(「クロスロード」)などについて紹介する。
7月京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E-320D(特別会議室)
以下のとおり,7月の防災研地震火山グループ研究会を開催します.
今回は,産総研の安藤さん,静岡大学の林さんをお招きして行います.ふるってご参加下さい.
7月地震火山グループ研究会
日時:7月23日(金) 14:00 - 16:30
会場:京大宇治キャンパス研究本館東棟3階E-320D(特別会議室)
講演者:安藤亮輔(産総研 活断層・地震研究センター)
タイトル:火山が照らした活断層の根っこ:2008年岩手・宮城内陸地震の場合
要旨:2008年岩手・宮城内陸地震は,火山地帯で発生した大地震であったが,震源域の地熱異常の存在は,内陸活断層深部延長の構造と力学特性を調べる上で重要な手がかりを与えたと考えている.本発表では,Ando and Okuyama, 2010, GRLの内容を中心に,この地震の物理モデル化とSAR Pixel offset解析,地表踏査などで得られた結果を紹介し,断層深部延長に局在化した延性剪断帯が存在すCoseismicの証拠について議論する.
講演者:林 能成(静岡大学防災総合センター)
タイトル:防災に地震学をいかす ~新幹線からコミュニティー防災まで~
要旨:地震学と防災の間にはかなりの距離があり、ほとんどの地震学者は(研究費申請時期をのぞいて)防災のことを頭に思い描くことなく日々の研究生活を送ることができる。基礎科学としての地震学はもちろん重要であるが、防災の現場に近いところで仕事をすると地震学へのニーズは他にもあることを感じる。私はいくつかの運と不運が重なって「地震学の教育を受けたのは組織で一人だけなので何か考えろ」という職を何度か経験することとなり、そのたびに多くの人に助けられ地震防災の貴重な経験をさせてもらった。講演ではその経験の一部を紹介し、防災実務の世界で地震学の経験を活かす方策を考える。
(講演者略歴)
1991年 北海道大学理学部地球物理学科卒
1991-1996年 JR東海新幹線鉄道事業本部施設部工事課勤務
1996-2001年 東京大学大学院理学系研究科(地震研究所)
2001-2003年 防災科学技術研究所PD
2003-2008年 名古屋大学災害対策室
2008年- 静岡大学防災総合センター
2011年(予定) 関西大学社会安全学部
6月京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E-320D(特別会議室)
以下の通り,6月の防災研地震火山グループ研究会を開催します(5月は連合大会のため休会).
今回は,新しくセンターに着任された3名の教官,山崎さん(リアルタイム総合観測助教),高田さん(地殻活動助教),澁谷さん(地殻活動教授)にこれまでの研究と今後の抱負・展望をご紹介いただきます.なお,研究会の後,地震予知研究センター創立記念20周年パーティを行う予定です.そちらへの参加もぜひお願いします.
6月地震火山グループ研究会
日時:6月8日(火) 14:00 - 16:30
会場:京大宇治キャンパス研究本館東棟3階E-320D(特別会議室)
講演者:山崎健一(防災研)
タイトル:地震発生に先行する地磁気変化を探す試み
要旨:
地震の発生に先行して電磁場の変動が観測されたとする報告は数多いが,その大部分は観測事実を先行現象とみなす根拠が曖昧で信頼性に乏しい。しかし,多数が信頼できないという理由で全てを切り捨てることはもったいないことである。なぜならば,地表で観測される電磁場は地殻内部の物理状態に関する情報を含んでいるはずであり,もしも地震発生前の電磁場変動が事実であるならば,それを精査することは(たとえ地震予知に結び付かないとしても)地震発生の物理についてのなんらかの知見をもたらすことが期待できるからである。そのためにまず解決すべき問題は,いかにして先行現象かもしれない観測例に対して信頼性のふるいをかけるか、という点である。
本講演では,地震予知を目的としてこれまで行われてきた地球電磁気研究に内在する問題点を列挙するとともに,特に地磁気研究に関して、意味のある結果を導きうると私が考えているアプローチについて述べたい。
講演者:高田陽一郎(防災研)
タイトル:合成開口レーダーと私
要旨:
1997年の大学院入学以降、私は数値シミュレーションに長く関わってきた。2007年10月に英国から戻った私は突然合成開口レーダー解析を始めた。この新技術は「地殻の変形機構を知りたい」という私の欲求に応える心地良いものであったが、結果として地震観測および野外調査という旧来の技術の重要性を痛感し、また数値計算の重要性を再認識した。以上を主に栗駒山近傍の研究を例に説明し、今後の研究姿勢に触れたい。
講演者:澁谷拓郎(防災研)
タイトル:地震波で紀伊半島の地下を覗く-沈み込むフィリピン海スラブの形状とマントルウェッジの構造-
要旨:
フィリピン海プレートは南海トラフから西南日本弧の下に沈み込んでいる。これに伴い海溝型の巨大地震が引き起こされる。南海トラフで発生した巨大地震の最新活動は,1944年の昭和東南海地震(M7.9)と1946年の昭和南海地震(M8.0)である。次の地震は2030年~2036年ごろに発生すると予測されている(地震調査委員会,2001)。昭和の東南海・南海地震がそうであったように,紀伊半島南端部周辺域は,南海トラフの巨大地震の破壊開始点になる可能性が高いと考えられている。また,紀伊半島は,巨大地震から発せられた地震波の大阪,京都,奈良などの都市への伝播経路にあたる。このような紀伊半島下のスラブ形状や不連続面の分布を含む構造を推定することは,巨大地震の発生予測と強震動予測の高精度化にとって非常に重要である。
我々は,2004年3月から紀伊半島において,観測点間隔が約5km,長さが80km以上の稠密リニアアレイ観測を行っている。遠地地震の波形データを用いたレシーバ関数解析により,紀伊半島下の地震波速度不連続面のイメージングを行い,沈み込むフィリピン海スラブやその周辺の構造を詳細に推定するのが目的である。これまでに沈み込み方向に設定された3測線(潮岬-田尻測線,新宮-河内長野測線,尾鷲-京丹後測線)の観測と解析が終了した。その結果として,低速度層である海洋地殻の上面(フィリピン海スラブの上面),スラブ内の海洋性モホ
面,および島弧側の大陸性モホ面が明瞭にイメージされた。さらに,深部低周波イベント発生域のスラブ近傍とその陸側のマントルウェッジが強い低速度異常を示すことがわかった。講演では,観測と解析手法について簡潔に紹介したうえで,その結果として推定された紀伊半島下のフィリピン海スラブの形状とマントルウェッジの構造ついて議論したい。
4月開催場所が変更になりました。京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E-320D(特別会議室)
以下の通り、本年度最初の防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、地震研究所の泊さんと,京大次世代ユニットの山田さんのお二人に御講演頂きます.
泊さんは,元朝日新聞の記者・編集者で,現在は科学史の専門家という異色の経歴の持ち主です.
定年を前に朝日新聞を退職,東京大学総合文化研究科に入学し,地団研を中心とした
反プレートテクトニクスの運動を詳しく研究し,2007年学位を取得されました.
この研究成果は,「プレートテクトニクスの拒絶と受容」(東大出版)という実に面白い本にまとめられています.
本の出版後は,地震予知の研究の歴史を調べていらっしゃるとのことで,今回講演をお願いしました.
山田さんは色々な研究をされていますが,今回は,今話題のearly warningについてお話頂きます.
皆様よろしくご参集下さい。
4月地震・火山グループ研究会
日時:4月23日(金) 14:00 - 17:00
会場:京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E-320D(特別会議室)
講演者:泊次郎 (14:00 - 15:30)
タイトル:「地震予知研究の歴史から何を学ぶか」
要旨:日本の地震予知研究の歴史は、1965年開始の第1次地震予知計画とともに始まった、
と理解している人が多いと思う。
ところが、その歴史を調べてみると、1880年にミルンらによって日本地震学会が設立された当時には
すでに予知研究が存在し、1891年の濃尾地震の後に設けられた震災予防調査会では、
現在とそれほど変わりのない予知研究計画が立てられていた、ことが分かる。
以来、大きな被害が出る地震があるたびに、地震予知研究への関心が高まり、
研究への熱意がさめかけたころにまた、大きな地震が起きるという歴史の繰り返してであった、
といえる。 この間、いくつかの進展は見られたものの、失敗・挫折に終わった研究も多い。
主に1965年以前の予知研究の歴史を振り返り、どのような教訓を引き出すことができるのか、考えてみたい。
講演者:山田真澄 (15:45 - 16:45)
タイトル:「緊急地震速報のこれまでとこれから」
要旨:2007年10月に一般向けに緊急地震速報が発表されるようになって以来、
2年半の月日が流れた。すでに10回以上緊急地震速報が発表され、
うまくいかなかった地震や誤報があった事例については、
システム改良などの対応策が気象庁でとられている。
本発表では、これまでの緊急地震速報の発表事例についてまとめるとともに、
東南海・南海地震といった大地震に向けて、断層面を考慮して地震動推定を行う一手法を提案する。
平成21年度
3月開催場所がいつもと違うのでご注意下さい。宇治研究所本館D棟5階です。
以下の通り、3月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、本年度末にてご退職・異動される地震予知センターゆかりの3名
の教員の皆さまにお話ししていただきます。
なお、同日研究会終了後に、例年通り送別会を開催しますので,そちらの
ご参加も是非よろしくお願い致します.
3月地震・火山グループ研究会
日時:3月26日(金) 14時00分~17時00分
場所:京都大学宇治キャンパス内 宇治研究所本館D棟5階
D-1518大会議室
http://www.uji.kyoto-u.ac.jp/campus/map.pdf
(緑の丸2番と5番の間の建物.教授会の部屋)
プログラム(時間は目安です)
14:00 ~ 大谷文夫 「AM/PMはアナログかディジタルか」
14:45 ~ 柳谷俊 「『愚図のおおいそがし』わたしのボアホール井戸学,岩盤電磁波放射の素過程」
15:30 ~ 川崎一朗 「『紙と鉛筆の理論地震学』から地球ダイナミクスへ」
大谷文夫:講演要旨
「AM/PMはアナログかディジタルか」
最初に地殻変動観測に携わった40年を5分?で振り返ります。
続いて最近取り組んできたGEONETデータを使用した歪速度の
時間変化から見た近畿地方・新潟神戸歪集中帯・豊後水道の地殻変動
について述べる。
近畿地方では地震活動の静穏化の地域と歪速度が減少した地域が
非常によく一致し、かつ地震の発震機構とも調和的であった。
最後に長期の歪み時系列グラフを描き続けてきて気になっていた
時間軸の書き方に関連した話題を披露したい。
柳谷 俊:講演要旨
「『愚図のおおいそがし』わたしのボアホール井戸学,岩盤電磁波放射の素過程」
(実験中のため要旨はでたとこ勝負とのこと)
川崎一朗:講演要旨
「『紙と鉛筆の理論地震学』から地球ダイナミクスへ」
複雑系の科学が混迷を深めていることは多くの人々によって指摘されている通りである。
この状況を乗り越えて行くために、多くの提案がなされているが、
一つの選択肢として、「紙と鉛筆」の地震学を思い出したい。
「紙と鉛筆」の意外な側面は「予言性」である。例えば、Kawasaki and Tanimoto
(1981) は、異方的媒質に置かれた dislocation に等価な力源を求め、Kosevich
(1965) の異方的弾性媒質のグリーン関数の近似解を用いてP波とS波のradiation
pattern を計算したものである。Kawasaki (1982) は、この力源を用いて、
pair-event inversion により、中央海嶺直下最上部マントルの異方性を求める試み
を行った。このようなことが可能になったのは、「紙と鉛筆」の計算によって、
「異方的媒質に置かれた dislocation に等価な力源」を書き下したからである。
最近では、川崎(2009)は、方位異方的地球の自由振動の定式化を行い、
それに基づき、P波走時異常による内核のP波の異方性(自転軸の方向に軸対象)が
2象限型なのに対して、S波の異方性が4象限型になること予言した。「紙と鉛筆」の計算に
よって、解くべき連立常微分方程式を書き下したからである。
この講演では、「紙と鉛筆」の理論計算を焦点として、自分のたどってきた道を振り返りたい。
12月
以下の通り、12月の防災研地震火山グループ研究会を開催します。今回は,火山地震学分野でご活躍の防災科学技術研究所の熊谷博之さんをお迎えします。
12月地震火山グループ研究会
日時:12月25日(金) 14:00 - 15:30
会場:京大宇治キャンパス研究本館東棟3階 E-320D(表示:防災研所長室)
講演者:熊谷博之(防災科研)
タイトル:「地震波の決定論及び確率論的アプローチを用いた火山の監視手法」
要旨:
火山活動の監視において、マグマや熱水活動と密接に関連した低周波地震や微動などの振動現象の震源情報を的確に把握することは重要である。しかしながら、立ち上がりがはっきりしないこれらの波形を用いた震源決定は困難であった。本発表では、これらの振動現象の高周波の振幅が、震源情報を決定する上で有効であることを示す。さらに、この振幅を用いた震源決定手法は、地震波振幅の散乱特性に基づいていることを示すとともに、決定論的手法である波形インバージョンと組み合わせることにより、火山における広帯域地震波形をより有効に活用した火山監視の実例を紹介する。
11月 開催場所がいつもと違うのでご注意下さい。宇治おうばくプラザ1階 セミナー室4/5です。
11月地震・火山研究グループ研究会
日時: 11月27日(金) 14時 - 16時30分
会場: 京都大学 宇治おうばくプラザ1階 セミナー室4/5
http://www.uji.kyoto-u.ac.jp/campus/facilities.html
講演者:
樋本 圭佑
先生(京都大学次世代開拓研究ユニット)
タイトル:地震動と火災加熱の双方による建物部材損傷を考慮した地震火災延焼
モデル
要旨:
地震災害は、地盤被害、建物構造被害、火災被害、人的被害など、様々
な要因が輻輳するなかで進行する。現象としてはそれぞれ複雑であり、これら個
別の現象に着目した研究は、地震災害のメカニズムを明らかにし、その被害軽減
策を検討する上で不可欠である。一方で、複合災害である地震災害に対して総合
的な観点から対策を講じるには、地震災害による被害の全体像を把握すること
が欠かせず、そのためには、こうした成果を統合する努力も必要である。その
端緒として、我々の研究グループでは、地震動と火災加熱の双方による建物部
材損傷を考慮した市街地被害評価モデルの開発を進めている。ここでは、この
内容について概説する。
講演者:
鍬田 泰子 先生(神戸大学大学院工学研究科)
タイトル:
表面波探査を用いた四川省都江堰の断層周辺の地盤構造と地震被害
要旨: 2008年5月12日に中国四川省でブン川地震が発生した。震源断層は、四
川省の四川盆地と龍門山の境界に沿って3本の断層が並走する龍門山断層帯であ
る。龍門山断層とは別に並走・斜交する断層がこの断層周辺に多数存在し、それ
らの断層でも今回の地震で断層変位が発生したことが確認されている。龍門山断
層帯に隣接する都江堰市内にも断層が横断していると考えられているが、現在の
活断層地図には断層線は描かれておらず、今後これらの調査が急務であるといえる。
講演者らは2009年6月に都江堰市内の断層を特定することを目的に北側の山地境
界と西側の山地に近い平野部を中心に地盤探査を行った。現地調査では、表層
20m程度の浅層地盤のS波速度構造を調査できる表面波探査と表層10m程度の浅部
地下構造を電磁波の反射から調査できる地中レーダ探査を同じ測線上でそれぞれ
測定した。本講演では、表面波探査の結果を中心に断層近傍の被害と地盤構造に
ついて述べる。
9月 開催場所がいつもと違うのでご注意下さい。総合研究実験棟(HW525)です。
以下の通り、9月の防災研地震火山グループ研究会を開催します。
今回は,桜島の火山活動研究センターの二人の先生方にお話して頂きます。
皆様,ふるってご参加下さい。
今月は,総合研究実験棟(担当事務の入っている比較的新しい建物)
5階HW525(生存研セミナー室1)にて開催します。
毎月のように違う部屋で開催することとなり申し訳ありませんが,お間違えのないように,
よろしくお願いします。MAP
9月地震火山グループ研究会
日時:9月25日(金)
14:00 - 16:30
会場:京大宇治キャンパス総合研究実験棟(担当事務の入っている
比較的新しい建物)5階HW525(生存研セミナー室1)
講演者:為栗
健
タイトル:2008年桜島火山人工地震探査データを用いた3次元P波速度構造解析
要旨:桜島は姶良カルデラ南縁に位置する安山岩質の後カルデラ火山である.
南岳山頂火口では1955年から爆発的噴火を繰り返しており,2006年から山頂火口東側斜面の昭和火口においても,
噴火活動を行っている.地盤変動観測から,桜島の主マグマ溜りは姶良カルデラ下10km,
副マグマ溜りが山頂下5km付近に推定されており,地震の発生分布,発生メカニズム等から,
主マグマ溜りのマグマは北東-南西方向のtensile faultを通って桜島に移動していると考えられている
(Hidayati et al., 2007).
桜島火山および姶良カルデラの地震波速度構造,マグマ溜りの位置,マグマの移動経路を明らかにするために,
2008年11月に人 工地震を用いた構造探査が行われた.8点の大発破,425観測点の初動到達時を用いて
3次元P波速度構造を求めた.その結果,深さ2kmの断面において,北東側に低速度異常が顕著に見られた.
この異常の直下には姶良カルデラの主マグマ溜りから桜島に伸びる北東-南西方向のtesile faultがあると考えられており,
その影響を受けて低速度になっている可能性がある.
講演者:山本
圭吾
タイトル:桜島火山における地盤変動・重力変動・火山ガス放出量変化について
要旨:1955年から始まった桜島南岳山頂火口における噴火活動は盛衰を繰り返しながら現在も継続している。
1970年代後半から1990年代前半には噴火活動が非常に活発であったが、それ以降は比較的に静穏化した。
2006年からは山頂の東約500mの所にある昭和火口で噴火活動が開始し、桜島火山の噴火活動は活発化の兆しが見られる。
講演者は、これまで桜島火山において水準測量等による地盤変動観測、重力測定、火山ガス
放出量測定を行って火山活動の状態把握に努めてきた。
水準測量結果によると、桜島および姶良カルデラの地盤は、1974年以降の活発な噴火活動によって沈降してきたが、ラコスト重力計を用いた
重力測定結果からは、この時期に桜島中央部地下において重力増加が進行してきた事が明らかにされている。
1990年代以降の活動静穏化に伴って姶良カルデラの地盤は隆起に転じた事が確認される一方、
重力測定からは過去に測定されてきた桜島中央部における重力増加がほぼ停止した事が示唆された。
二酸化イオウ放出率観測では、1970年代以降の活動活発期に凡そ1500~3000トン/日の放出率で推移してきたが、
2000年代に入ると概ね500~1000トン/日とそれ以前に比べて減少し、活動の静穏化に対応しているように見受けられる。
一方、2007年5月や2008年2月には、昭和火口における噴火活動に関連して一時的に2000~3000トン/日 の放出率が観測された。
講演では、これらの測定項目の最新結果を紹介するとともに、これらの観測結果の火山学的な意味について議論したい。
7月
以下の通り、7月の防災研地震火山グループ研究会を開催します。
今回は,地震予知研究センターの前センター長で今年度いっぱいで定年退職予定の
川崎先生に思いの丈を語って頂きます。
今月は,本館東棟3階所長室(E-320D)で行います。
7月地震火山グループ研究会
日時:7月24日(金) 14:00 - 16:00
会場:京大宇治キャンパス研究本館東棟3階 E-320D(表示:防災研所長室)
講演者:川崎一朗
タイトル:「大規模異方性の研究のレビューと異方的地球の自由振動の研究の可能性」
要旨:過去数10年地震学は素晴らしい進歩を遂げたが、「LODの長期変動の原因」、
「自由振動や表面波のデータに基づく地球モデル(PREM)と実体波の走時データに基づく
地球モデル(AK135)の微妙なズレ」などの例のように、地震学と固体地球科学にとって
基本的で単純なことで未解決な問題も多い。発表の前半で、過去数10年の地震学の発展について、
発表者の問題意識に基づく独断に満ちたレビューを行う。
後半で、地震波速度大規模異方性研究に焦点を絞ったレビューを行い、 最後に、異方的地球の
自由振動の研究の可能性についての議論を行いたい。
6月開催場所がいつもと違うのでご注意下さい。本館E棟2階(E-232)です。
以下の通り、6月の防災研地震火山グループ研究会を開催します。
今回は,今年4月から地震予知センターに赴任された遠田さんに御講演頂きます。
それに加え,Moriさんが4月にイタリアで起こった地震について,簡単に(15分程度)お話し下さいます。
6月地震火山グループ研究会
日時:6月26日(金)
14:00 - 16:00
会場:京大宇治キャンパス研究本館東棟2F
E-232D
講演者:Jim Mori
タイトル: Field Investigation of the 2009 L'Aquila, Italy Earthquake
講演者:遠田晋次
タイトル:「関東の地震テクトニクス再考:新しいプレート構造の提案」
講演要旨:
関東地域は丹沢・伊豆半島の衝突と海溝三重点に挟まれた複雑な地域で,
多様な地震発生場にあり,複雑なプレート構造の議論を避けては通れない.
90年代以降に定着した石田モデル(Ishida, 1992)では,フィリピン海プレート(PHS)は関東平野直下で
赤城山直下約90kmの深さまで沈み込み,千葉県直下で太平洋プレートに平行にのし上がる.
しかし,四国~東海よりも長いPHSスラブ,浮揚性PHS火山弧の急激な沈み込み,
つくば~千葉市直下の深部地震クラスター,銚子周辺に拡がる非震域,非火山性微動の欠如など,
同モデルでは単純に説明できない点が多い.
そこで我々は,3次元地震分布,応力テンソル解析,減衰Q構造,
地震波トモグラフィーの再解析・再検討を行い,上記疑問点の解決を試みた.
その結果,関東平野直下の深さ30-100kmの範囲に横たわる厚さ25km,
幅100kmの独立したマイクロプレートを推定した.
本発表ではそのプレートモデルを紹介し,関東の地震発生場について議論したい.
5月開催場所がいつもと違うのでご注意下さい。本館E棟2階(E-232)です。
以下の通り、5月の防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
5月地震火山グループ研究会
日時:5月29日(金) 14:00 - 16:00
会場:京大宇治キャンパス本館E棟2階 E-232
南アフリカの鉱山というユニークな環境を生かした研究で知られる
地震学者のご夫妻に御講演頂きます。
(今回のアレンジでは立命館大の小笠原さんにお世話になりました。ありがとうございます)
■ Maria van Aswegenさん
(ISS international社 鉱山地震監視技術サービス部・部長)
講演タイトル 南アフリカ金鉱山における地震リスクの実践的予測と地震活動のコントロール(1)
ー ISS社による金鉱山内での地震監視システム
講演要旨 南ア鉱山における地震監視業務について, トリガー方式によるセンサから
中央コンピュータまでのデータの収集、通信システム の技術的側面を紹介する.
観測点におけるセンサ信号のデジタル化の重要性, および、鉱山の典型的な
地震観測システムの一般的管理方など.
<English Title and Abstract
(1)>
Title: ISS seismic monitoring in South African gold
mines
Abstract:Technical aspects of seismic monitoring in S.A. Mines. The triggering,
association and communication of the data from the sensors to the central
computer.
The importance of digitizing at the sensor site.
The general management of a typical mine seismic system.
■ Gerhard van Aswegenさん
(ISS社
鉱山地震監視リスク評価部・部長)
講演タイトル 南アフリカ金鉱山における地震リスクの実践的予測と地震活動のコントロール(2)
ー 南アフリカ・ウェルコム金鉱区の3つの断層と5つのM4~5級鉱山被害地震
講演要旨 ウェルコム市のダーク・ブリーク断層では、1976年に地表でも大被害が出た
M5級の地震が発生した。そして、1988年に再び、1999に三度大きな地震を発生させた。
最後の地震はマチャベン地震である。最後の地震は、先行した二つの大地震のギャップで
発生したと説明することができる。また、いくらかの前兆活動があり、
また、もしかしたら当時の坑内火災によって地震がトリガーされた可能性もある。
ブラント断層では、1989年に教科書的に地震が発生した。1990年のシュトゥルマンスパン地震は、
みかけ応力によって、その地震の震源域の場所が示されていた。
<English Title and Abstract
(2)>
Title: Three faults, five earthquakes in Welkom gold field, South
Africa
Abstract: The Dagbreek fault yielded the first major
mining-induced
earthquake in Welkom in 1976. It failed again in 1988 and the
last time
in 1999 – the last one being the 'Matjhabeng' earthquake.
The latter is described in terms of the seismic gap remaining after
the first two
earthquakes and also in terms of some precursory activity and
the
possible triggering affect of a mine fire at the time. The Brand
fault
failed in 1989 – a textbook example of how to make an earthquake.
The
Stuirmanspan earthquake in 1990 showed the practical application
of
apparent stress as a spatial indicator of the future earthquake
source.
■ Gerhard van Aswegenさん
(ISS社
鉱山地震監視リスク評価部・部長)
講演タイトル 南アフリカ金鉱山における地震リスクの実践的予測と地震活動のコントロール(3)
ー ルーチン的鉱山被害地震予測業務の実践例
講演要旨 ISS社は, 応力や歪みの変化に関連した地震活動の指標をみることで,
岩盤の安定性の状況を評価するという手法を、鉱山における安全管理業務に導入した.
これは、統計でもしめされるように、ある程度の成功をえたが, 成功率を高めるためには、
更なる取り組みが必要である。
<English Title and Abstract
(3)>
Title: Experiences in rockburst prediction
Abstract: ISSI has
introduced a method of assessing rockmass instability
based on variateions in
stress- and strain- related seismicity
parameters. Some modest succes has
been achieved and the statistics show
this. Much more work is, however,
required to improve success rate.
4月開催場所がいつもと違うのでご注意下さい。所長室の隣のセミナー室I(E-326D)です。
以下の通り、本年度最初の防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、元筑波大の小林洋二さんにお願いしました。
幅広い研究をされてきた方で、色々と面白いお話が聞けるものと思います。
皆様よろしくご参集下さい。
4月地震火山グループ研究会
日時:4月24日(金) 14:00 - 16:00
会場:京大宇治キャンパス本館E棟3階 E-326D セミナー室I
講演者:小林洋二
タイトル:「a-bの正負を決める要因をさぐる」
平成20年度
3月
以下の通り、3月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、本年度末にてご退職・異動される地震・火山研究グループゆかり
の3名の教職員の皆さまにお話ししていただきます。
なお、同日研究会終了後に、地震予知研究センターと地震防災部門地震発
生機構分野および地震テクトニクス分野の主催で、送別会を宇治生協会館
1階にて開催いたします。ご参加を歓迎いたします。
<グループ研究会>
日時:3月27日(金) 14時00分〜16時15
分
場所:京都大学宇治キャンパス内 生存圏研究所 木質ホール3階 セミナー室
http://www.rish.kyoto-u.ac.jp/access.html
プログラム:
14:00
- 14:45 許斐直 「四国東部の地震と中央構造
線」
14:45 - 15:30 宮澤理稔 「防災研究所での6年間とこれ
から」
15:30 - 16:15 中尾節郎 「足かけ42年間の「お陰さま」」
講演要旨:
許斐直
「四国東部の地震と中央構造線」
四国東部の地震・津波被害は宇佐美によれまず歴史 上繰り返す南海・東南海地
震によるものである。例外としてチリの地震による津 波があった。
次に内陸に震源を持つ地震としては1955年徳島県南部 M6.4、1789年(寛政元)
M7.0がある。前者は昭和の南海地震の余震で地殻内の地震である。後者に対して
宇佐美は‘震央が紀伊水道にある中規模地震と言う考えもありうる’と言う但し
書きを付けているが、マントル内の地震と読みかえれば震度分布や余震の状況が
理解しやすい。その場合M7.0は大きすぎる。また震央は必ずしも陸地である必要
はない。この他1812年高知市付近M6.0があり、それ以外宇佐美はM6以下である。また1938
年田辺沖M6.8によって徳島県の東岸で多少の被害が出ている。
四国東部では起震応力は地殻に対し東西、マントルに対し南北とほぼ直交する
主圧力の方向を持っており、陸域では完全に分離された二つの地震発生層があっ
てその中で大地震も起こる。一方、最初金子から提出され岡田の精力的な調査か
ら主張された中央構造線の右横ずれの考えは、当初は歴史時代に大地震の記録が
無い事から将来大地震を起こす可能性があると考えられたが、現在はトレンチ調
査から最新の活動が16世紀に四国全体であった、あるいは同時に複数の区間に分
かれて活動したと考えられるようになって将来の活動が履歴に基づいて確率的に
評価されている。しかし16世紀に内陸の巨大地震と言うべきそのような
地震被害の資料は知られていない。
中央構造線の右横ずれ説はプレートテクトニクスの 支持を受け、測地学のデー
タももっぱらその枠組みでの解釈がされている。田部井らは35度で傾斜する断層
が15kmまでは固着しそれより下部の地殻で右横ずれが起きているとすると地表
の変位が説明できるとしている。固着していると言うのはその断層部分が他の領
域に比べて変形しにくいことを意味するが果たして現実的な仮定と言えるだろう
か。
和歌山県から徳島県の間のいくつかのポイントで行われた反射法の探査によっ
て中央構造線のすぐ南側に第三紀鮮新世から第四紀更新世までの厚い堆積層が存
在することが確認されている。また徳島部分での地質調査では阿讃山地の山麓あ
るいは中腹に同じ時代に属す二つの層準の堆積層(土柱礫層)があって中央構造
線での大きな上下の変動が二つの時代で激しく、それは長期に渡った事が分る。
この運動がいつ頃まで続いたかは分っていないが筆者は少なくとも完新世には活
動は停止したのではないかと思っている。
中央構造線地域の地殻は東西の圧縮場に置かれ弾性歪を蓄えているが、断層が
起震力の伝達や歪の蓄積に特別な役割を果たしているようには見えない。
宮澤理稔
「防災研究所での6年間とこれから」
2003年4月に防災研究所に着任し、21世紀COE研究員として2年間、
教員として4年間の研究・教育活動を行ってきた。この6年間には
未曾有の地震災害が日本を含め世界各地で多く発生し、地震学者
としてなすべき事を見出し始めた期間でもあった。その理学面に
おける研究の道筋を、研究以外の複線を交えながら辿る。
中尾節郎 「足かけ42年間の「お陰さま」」
足掛け42年間、多くの方々の「お陰さま」によって、なん
とか種々の技術的研究支援を行って来ることができました。
鳥取観測所•地震観測そして私の変革など振り返って見たいと
思います。さらに、私が得た中でのいろいろな体験での苦労
話、楽しかった話など、公私に渡って思い出話をしたいと思います。
<送別会>
場所:宇治生協会館1階
日時:3月27日(金)17時~
(※送別会に関するお問い合わせは、加納さん
kano@rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp までお願いします)
12月
以下の通り、12月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、京都大学理学部の宮崎真一さんと防災研地震予知研究センターの橋本学さんに講演をお願いいたしました。お二人とも、以前は国土地理院に所属され測地学がメインの研究分野ですが、そこをベースに地震発生やテクトニクスの分野に研究を広げていらっしゃいます。皆様よろしくご参集下さい。
12月地震火山グループ研究会
日時:12月26日(金)
14:00 - 16:00
会場:京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E320D(表示: 防災研所長室)
講演者:宮崎真一(京都大学理学研究科地球惑星科学専攻)
タイトル:
「プレート境界面上のすべりのGPSによるイメージングと数値シミュレーションによる計算結果の比較(序報)- 十勝沖地震を例として」
要旨:
2003年十勝沖地震はGEONETのdensificationが行われた 後に発生した唯一のM8クラス海溝型地震である。この地震についてはGPSを用いて震源過程の推定および余効すべりの推定が行われており、余効すべりの推定結果から摩擦特性に関する議論も行われるようになってきた。
我々は、その後、地震後2年間の余効すべりの推定を行い、摩擦特性の推定を行った。ただし、地震後2年程度になると無視することができないであろう粘弾性応答を無視しているので、オーダーでの議論である。一方、インバージョン解析と全く同じプレート形状を用いた速度・状態依存摩擦構成則による数値シミュレーションに与えて、すべりの時間発展を計算している。その際、余効すべり領域での摩擦パラメータa-bが正の場合と負の場合とを計算している
(現在進行形)。両者の比較を行い、将来両者をすり合わせる足ががりにしたいと考えている。
講演者:橋本学(京大防災研地震予知研究センター)
タイトル:「宇宙から見るアジアの地震」(Earthquakes in Asia observed from the Space)
要旨:
2004年のスマトラ地震以来,今年の四川の地震などアジアでは大地震が続発している.SARやGPSなどの宇宙測地技術により,これらの地震による変動の様子を捉えてきた.これらのデータを基に,これらの地震はどのようにして発生したのか,そして,アジアの変動帯にどのような影響をもたらすのか,考察する.
Large earthquakes such as Wenchuan EQ have occurred in Asia since the2004
Sumatra-Andaman EQ. Space geodetic techniques have revealed crustal
deformations associated with these events. On the basis of these
data, I would like to discuss how were these events generated, and what
do these events bring about in Asian tectonics zones.
11月
11月防災研地震火山グループ研究会
「工学的な立場から見た震源・地震動」
日時:11月28日(金) 14:00 -
16:00(予定)
会場:京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E320D(表示:防災研所長室)
http://wwwcatfish.dpri.kyoto-u.ac.jp/~goto/tmp/map_E320D.png
14:00
- 15:00 野津 厚 主任研究官(独立行政法人港湾空港技術研究所)
15:00 - 16:00 川瀬 博 教授(防災研究所
社会防災研究部門)
各講演のタイトルと要旨は以下の通りです。
野津 厚
主任研究官(独立行政法人港湾空港技術研究所)
「海溝型巨大地震による周期1-5秒の帯域の地震動の予測方法について」
海溝型巨大地震による地震動の予測方法、特に、周期1-5秒の帯域における地震
動の予測方法については、現時点において様々な議論がある。話題提供者の専門
である港湾構造物は周期1-3秒の帯域の影響を受けやすいことから、この帯域に
おける強震動の予測方法には重大な関心を持っている。また、例えば建築物につ
いてみても、10階建て~50階建ての建物の固有周期はほぼ1-5秒の帯域に存在す
る。十勝沖地震による石油タンクの被害から周期5秒を越える長周期地震動に目
が行きがちであるが、むしろ国民の安全に直結するのは長周期と言っても周期1-
5秒の帯域の地震動であると言えるのではないだろうか。この帯域における地震
動の予測に関する現時点での地震学の分野の研究は、どちらかというと震源モデ
ルの複雑化を基調にしていると理解している。しかしながら、工学の分野では、
この帯域における強震動を十分説明でき、かつ、単純さも併せ持つ震源モデルが
すでに提案されている。ここでは、海溝型巨大地震である2003年十勝沖地震、ま
た、巨大地震と言うには規模は小さいが重要な海溝型地震である1978年宮城県沖
地震に関して、周期1-5秒の帯域における地震動を説明できる震源モデルを紹介
し、海溝型巨大地震に対する強震動予測の今後について議論する。なお、2003年
十勝沖地震の際、各地で観測されている波形は、単純なパルス状のものから、継
続時間の長い複雑なものまで多様である。それら多様な波形を説明するために
は、サイト特性がフーリエ振幅とフーリエ位相の双方に与える影響を精度良く考
慮することが必要となる。これを可能とする強震動評価手法の一つとして、経験
的サイト増幅・位相特性を考慮した強震動評価手法に関する紹介も併せて行う。
川瀬 博
教授(防災研究所
社会防災研究部門)
「南海地震を対象にした時系列被害予測とその環境負荷評価」
我々がその発生を危惧する地震は未来において発生し、その地震で被害を受ける
建物も未来の建物であり、対象とする地震の空白期間が長くなるほど地震の規模
が変化するだけではなく、現存する建物の耐力も変化し、建物ストックの全体棟
数やタイプ別・年代別の構成比率も大きく変化していく。しかし、これまでの巨
大地震に対する被害想定では、限りある歴史地震の推定規模などから今後起こる
得る地震の規模を固定し、過去の地震による建物被害率に基づいた経験的被害関
数と現在の建物統計データを用いて建物被害を推定する手法が一般的であった。
本来ダイナミックに変動するモデルパラメターを考慮しないと、いくら高度な技
術を用いて被害予測を行っても実被害とは大きく異なってしまい、当然その被害
予測を前提とした地震対策の合理性も大きく損なわれる可能性がある。特に、海
溝型地震の場合はその規模が大きいために広域にわたって影響を与えるだけでは
なくその平均発生間隔が短く、実発生時期が予測発生時期よりずれるとそれにと
もなって建物被害状況が大きく変化する可能性が高い。
そこで我々は数十年以内に発生が危惧されている
南海地震を対象として、ま
ず、時間予測モデルを前提としつつもその予想発生時期が変動した場合に、想定
すべき南海地震の規模(すべり量)が前回の発生からの経過期間に比例して変動
すると仮定して、四国を中心とした西日本における強震動波形を予測した。次に
得られた時系列強震動を非線形応答解析モデルに入力して構造種類別、階数別に
時系列建物被害率を推定した。最後に新築床面積に関する情報、人口予測、およ
び構造種別ごとの建物寿命曲線を用いて、建物ストックの床面積の推移を構造種
別、階数別に推定し時系列的な建物被害の総量予測を行うとともに、算定した総
被害建物面積に基づく建築廃棄物量、およびその建物を復元するに必要な環境負
荷を算定し、想定南海地震が起きた場合にどの程度の環境負荷が発生するかを時
系列的に明らかにした。
9月
以下の通り、9月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。奮ってご参加ください。
9月防災研地震火山グループ研究会
「島弧海溝系の形成過程の解明に向けて:山脈と火山列はなぜ一致する?」
日時:9月26日(金) 14:00 - 15:30(予定)
会場:京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E320D(表示: 防災研所長室)
講演者:深畑幸俊(京都大学防災研究所地震予知研究センター准教授)
<要旨>
海洋プレートの沈み込みに伴い島弧海溝系が形成されるのは半ば自明のことと考えられているが,
島弧海溝系に特徴的な地形が一体どのような物理的過程によって形成されるのか,
その具体的なメカニズムは実のところ良く分かっていなかった.
私はこの課題を大学院入学以降ずっと探求してきたが,講演では,
この課題のどのような点に困難がありそれをどのように克服してきたか,
また島弧海溝系の形成過程が現時点でどこまで解明できたと考えているかを述べる.
7月
以下の通り、7月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。奮ってご参加ください。
近年の地震予知研究と火山噴火予知研究の進展により,地震と火山噴火現象に共通な場の理解を進めるための実証的な研究が現実的な課題となってきています。この流れのなかで、二つの研究計画を統合した
「地震・火山噴火予知研究計画」が平成21年度よりスタートします。九州地域は、フィリピン海プレートの沈み込みに起因する活発な地震・火山活動があり、両者の相互作用を研究するうえで重要なターゲット地域です。今回は、九州における次期地震火山噴火予知研究計画へ向け、キーパーソンであるおふたりに話題提供を
いただきます。
7月防災研地震火山グループ研究会
「九州における次期地震火山噴火予知研究計画への展望」
日時:7月25日(金)
14:00 - 16:40(予定)
会場:京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E320D(表示: 防災研所長室)
14:00 - 15:00 鍵山恒臣 教授(京都大学理学研究科地球熱
学研究施設)
15:10 - 16:40 松本 聡 准教授(九州大学大学院理学研究
院地震火山観測研究センター)
各講演のタイトルと要旨は以下の通りです。
鍵山恒臣
教授(京都大学理学研究科地球熱学研究施設)
「火山活動の多様性と九州-次々期予知計画への布石」
火山噴火予知は,噴火の前に異常現象を捉えるなど多くの成果をあげているが,
異常現象が捉えられても噴火しないケースが多いこと,数百年~数千年ぶりの噴火の予測に
必ずしも成功していないこと,休止期の長い火山がいつまで静穏の状態が続くかといった問題
には十分対応できていない.
本講演では,これらの課題に取り組むために以下に示す作業仮説を提案する.
火山活動には2つの端的な例に代表される多様性がある.この多様性は,マグマが地表に噴出
しやすいか,地下に滞留しやすいかによって規定されており,噴出が容易な場合には
噴火卓越型火山活動,滞留が容易な場合には地熱活動卓越型火山活動となる.マグマが地下に容易に滞留できる条件下では,噴火未遂や「教科書的ではない噴火」が繰り返される.
間欠的に深部から供給されるマグマは,地表に達することなく地下に滞留するイベントを繰り返し,
地下に滞留したマグマでは,分化や地殻の同化が進行する.このようなイベントを繰り返す中で,深部
から供給されてきたマグマが地下に滞留していたマグマにぶつかり,過熱・発泡が進行して大規模な噴火が発生する.ここに示した考えには多くの疑問や異論があると考える.我々は,ここに示した考えを
作業仮説として個々の疑問を検証することで,より高精度な噴火の予測につながると思う.
九州には,異常現象の後に噴火につながる桜島や,異常現象がしばしば起きてもマグマ噴火につながることがまれである阿蘇山,地震の群発活動はしばしば発生するがほとんど噴火しない火山など多様な火山活動が存在する.こうした火山の構造がどのようになっているか,活動の推移によって何が地下
で起きているかを明らかにすることで,多様性の理解が進むと思われる.
松本 聡 准教授(九州大学大学院理学研究院地震火山観測研究センター)
「九州大学地震火山観測研究センターの次期計画概要」
九州大学地震火山観測研究センターでは次期地震火山噴火予知計画において,日向灘を中心としたプレート境界地震に関する研究,福岡県西方沖地震・警固断層地域を中心とした内陸地震に関する研究,別府―島原地溝帯を中心とした地震火山相互作用の研究を挙げ,これらを推進する.
特に,別府島原地溝帯の研究は当センターの中心課題として位置づけ,京都大学理学研究科地球熱学研究施設や鹿児島大学理学部と共同し,その地殻活動を詳細に調べる.本講演ではこれらの研究の概要について紹介する.
6月
以下の通り、6月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、産業技術総合研究所の高橋雅紀さんに講演をお願いいたしました。
高橋さんは、地質学的・地球物理学的・地形学的情報を基に精緻な 思考実験を繰り返し、
過去・現在・未来の日本列島の形成と応力場についての重要な知見を導出しておられます。
休憩をとりながら、わかりやすくじっくりと3時間半お話しいただ きます。貴重な機会ですので、
奮ってご参加ください。
6月地震火山グループ研究会「日本列島のテクトニクス」
日時:6月20日(金)
14:00 - 17:30
会場:京大宇治キャンパス研究本館 新棟東3F E320D(表示: 防災研所長室)
講演者:高橋雅紀(産業技術総合研究所・地質情報研究部門)
タイトル:「フィリピン海プレートがコントロールする日本列島のテクトニクス」
要旨:地質学的,地球物理学的,地形学的制約条件に基づいて,フィリピン海プレートの過 去(300-1500万年前)の運動を明らかにした.その結果,日本海の拡大が終了した1500万年前以降
の東北日本弧の弱伸張テクトニクスと沈降,引き続く弱圧縮テクトニクスと隆起・陸化過程,
そして300万年前から今日に続く強短縮テクトニクスがフィリピン 海プレートの運動により
説明できることが判明した.さらに,内陸地震の応力蓄積の原因が太平洋プレートの運動そのものではなく沈み込み位置の移動,すなわち日本海溝の移動による強制変位によるものであり,
その移動をコントロールしているのがフィリピン海プレートの運動であることを明らかにした.
さらに地質学的に近い将来,伊豆背弧リフトがbreakupに至り海洋底拡大に移行すること,
その結果,日本列島の圧縮応力場は終焉を迎え日本沈没に至ることが予想された.
このことは,将来沈み込み 帯に成長するとしてプレート境界とされてきた日本海東縁が
収束境界には発展しないこと,換言すれば日本海東縁はプレート境界ではないことを示している.
このよう に,フィリピン海プレートの運動と,従来の予測に反して安定であり続けたいとする
三重会合点の幾何学的制約による地質学的応答が,過去から未来に至る日本列島の
テクトニクスである.
5月
以下の通り、5月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、空間スケールは違いますが、地下に穴を掘って地震について研究をおこなっている
二名の方に講演をお願いしました。奮ってご参加ください。
5月地震火山グループ研究会
日時:5月23日(金) 14:00 - 16:00頃
会場:京大宇治キャンパス研究本館5F 共通会議室
14:00
- 14:45 加納靖之(地震予知研究センター)
15:00 - 16:00
木下正高(海洋研究開発機構)
各講演のタイトルと要旨は以下の通りです。
加納靖之・柳谷俊(地震予知研究センター)・北川有一(産総研)
「間隙水圧測定の使いみち」
神岡鉱山や野島断層に掘削されたボアホールを用いて間隙水圧測定 を続けている.
地下の間隙水圧はひずみや応力の変化に比例して変 化するので,
間隙水圧を測定すれば岩盤の変形をモニターすること ができるが,
ボアホールを密閉して測定することにより,特に高周 波数帯域で従来の開放井戸よりも
よいデータを得ることができるこ とがわかった.また,地下の水の流れによって生じる
間隙水圧の周 波数応答を利用して,周囲の岩盤の透水性を見積ることができる.
これは,注水/揚水試験などを行わなくても,例えば断層帯の透水性の
情報を時間的に連続的に得ることができるということである.
木下正高(海洋研究開発機構)
「「ちきゅう」掘削で巨大地震の仕組みを探る ーNanTroSEIZE 第1次航海報告ー」
M8超の海溝型巨大地震の準備から発生までを理解するために、地震・津波発生断層に
到達して試料を採取し、その場の状態・性質を計測する調査が、2007年9月に
熊野沖で開始された。地球深部探査船「ちきゅう」による初めての科学掘削、
初めての南海掘削である。付加体の先端部から熊野海盆まで、8地点で最大1400m
の掘削を行い、LWD検層による連続イメージや物性データ、断層岩やスラストシート、
過去の付加体物質の採取に成功した。固着域上部の応力場や、断層の幅、
また活動年代など、preliminaryではあるが大変興味深い成果が得られたので報告する。
4月
以下の通り、4月京大防災研地震火山グループ研究会を開催いたします。
今回は、地震予知に関連して興味深い室内岩石実験の研究を進めて おられる二名の方に
講演をお願いしました。奮ってご参加ください。
4月地震火山グループ研究会「室内岩石実験」
日時:4月25日(金) 14時~15時20分頃
場所:宇治研究本館西棟5F共通会議室
14:00~14:40 川方裕則
14:40~15:20 堤 昭人
各講演のタイトルと要旨は以下の通りです。
川方裕則(立命館大)・高橋直樹(三井住友建設)・西澤修(産総
研)・吉光奈奈(立命館大)
「震源核形成・成長に伴うAEや透過弾性波の波形変化」
室内岩石破壊実験において,AE(アコースティック・エミッショ ン)がしばしば観測される.
これは微小クラックの発生,成長およ び剪断に伴って発生する弾性波動であると考えられている.
AEと 地震とのアナロジーについては,過去のさまざまな実験研究がある にも関わらず,
必ずしも明らかにはされていない.我々は,AEの 特性や弾性波の伝播特性を明らかにすることを
主眼に置いた新たな 破壊実験をはじめた.この発表では,実験で得られたAEの特徴 や,
破壊に先行した透過弾性波の変化などについて,解析途上では あるが結果の一部を紹介する.
堤 昭人(理学研究科 地球惑星科学専攻 地質学鉱物学分野)
「岩石摩擦の素過程研究-特に中~高速摩擦について-」
現在使われている摩擦構成則は,すべり速度が1 mm/s程度ま での低速の条件下で行われた
実験結果に基づいて記述されたもので あり,およそ1 mm/s より高速のすべり速度範囲における
岩石 摩擦の性質は組み込まれていない. 1990年代に入って,高す べり速度で
大変位条件下での岩石摩擦の性質を調べることを目的と した摩擦試験機が開発され[嶋本・堤
(1994)],岩石の高速摩擦について様々な知見が得られた.例えば高速の摩擦においては,
すべりに伴って摩擦強度が著しく低下する場合のあることが明らかになりつつある.
講演では,これまでの高速摩擦実験の成果を紹介し,今後の課題を述べる.
次回の予定:
5月23日(金):木下正高(海洋研究開発機構)、
加納靖之(地震予知研究センター)両氏に話題提供いただく予定です。
平成19年度
3月
3月京大防災研地震火山グループ研究会
日時:3月28日(金) 13時30分~17時30分
会場:京大宇治キャンパス木質ホール
今回は、本年度末にてご退職される地震・火山研究グループゆかりの
6名の教職員の皆さまにお話ししていただきます。
日時:3月28日(金) 13時30分~17時30分
場所:木質ホール
13:30~14:00 和田博夫
14:00~14:30 細 善信
14:30~15:10 尾上謙介
(休憩10分)
15:20~16:00 中村佳重郎
16:00~16:45 松村一男
16:45~17:30 伊藤 潔
和田博夫「微小地震観測40年」
私が上宝地殻変動観測所に就職したのは,地元の高校を卒業して1 年後の昭和42年でした。
当時学校の先生を夢見ていましたが,結局夢 で終わりました。家庭の事情もあり,
地元就職を考えていた頃に, ある人から観測所に空きポストが有るが,勤めないかと言う誘いが
ありました。文系志望を考えていた私は,多少悩みましたが,地元 就職を優先に考えて,
勤めさせて戴くことにしました。最初は,事務補佐員の身分で3年ほど勤めて,昭和45年から正職員にしていただきました。最初の頃は地殻変動の光学記録の読み取りを行っていましたが,1969年の岐阜県中部地震(M=6.6)を契機に微小 地震観測に没頭しました。以降現在まで微小地震観測一途で勤め きました。
今回のお話では,40年を振り返ってお話しさせて戴きたいと考えています。
細 善信「不易流行と技術支援」
昭和41年(1966年)、防災研究所に就職させていただき地 殻変動観測、GPS観 測、地下水観測など
多くの先生方と仕事をさせていただきました。研究活動の変化に流され、その中に巻 き込まれながら
研究支援という仕事の中でどれだけ本質を見極め仕事が出来たのか?
自戒の念も込め て振り返ってみたいと思います。
尾上謙介「屯鶴峯(地殻変動)観測所とともに」
約38年間の屯鶴峯観測所における観測とこの間の地殻変動連続観測結果から
どの程度のことが言えるのか、そして次につながる観測について紹介します。
中村佳重郎「未定」
松村一男「宇治キャンパスでの40年余りを振り返って」
学部の4回生から宇治に居ついて、所属は替わりながらも地震学の周辺をウロウロ
してきた中で何があったかを回想したいと思います。
伊藤 潔「合同地震観測と地震予知研究」
全国の大学による合同地震観測が各地で実施されてきた。これらはその時代ごとに最先端の
地震観測とその研究をめざすものであった。合同観測では,単独の機関ではできない
稠密観測の実施のため の,機材と人員および経費の確保を可能にし,
高精度のデータ取得を目指した。
また,新しい観測方式の開発・実地テストも兼ねていた。さらに,院生,技術員を含め,
観測技術の教育,継承に大いに 貢献してきた。また,大地震の余震観測でも大きな力を発揮した。
しかし,単独あるいはいくつかの機関で同様の観測が可能になり,最近では異なった様相を
呈している。主な合同観測の概要と成果についてレビューし,地震予知研究の中でこれらの観測の
果たした役割について述べる。
#同日研究会終了後に、地震予知研究センターと地震防災部門地震
発生機構分野および地震テクトニクス分野の主催で、上記の方々の
送別会を宇治生協会館1Fにて開催いたします。ご参加を歓迎
いたします。
日時: 平成20年3月28日(金) 18時~
場所: 宇治生協会館
会費 男性 4000円
女性 2000円
学生 1500円
会費は当日会場にて申し受けます。
12月
12月京大防災研地震火山グループ研究会
日時:12月21日(金)
15:00 - 17:30頃
都合により通常より一時間遅れてはじめますので、ご注意ください。
会場:京大宇治キャンパス大会議室 C565(本館・西 5F)
プログラム:
15:00 - 15:20
山田真澄(次世代開拓研究ユニット・地震防災研究部門)
「京大型次世代緊急地震速報」
15:20 - 16:10
橋本 学(地震予知研究センター)
「次の南海地震発生予測に向けた地震予知研究センターの取り組み」
16:10 - 16:20
休憩
16:20 - 17:30
飯尾能久(地震予知研究センター)
「満点計画-次世代型地震観測システムの開発-」
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山田真澄(次世代開拓研究ユニット・地震防災研究部門)
京大型次世代緊急地震速報
現在、多くの企業や自治体で緊急地震速報の導入が進んでおり、地震被害軽減の
期待が高まっている。宇治地区には、防災研究所を初めとして、化学研究所やエ
ネルギー研究所など、地震時に、大きな被害が発生すると予測される施設が多く
集まっている。そこで、防災研究所における地震被害対策に対するアウトリーチ
の1つとして、宇治地区での緊急地震速報システムの導入を提案する。本発表で
は、速報を配信するためのプロトタイプシステムの構築から、将来的な発展計画
を紹介する。
橋本 学(地震予知研究センター)
次の南海地震発生予測に向けた地震予知研究センターの取り組み
次の南海地震は,地震予知研究センターのみならず防災研究所の地震研究者に
とって最重要課題の一つである.とはいえ,これに対する取り組みは必ずしも万
全はいえなかった.その震源域の大きさゆえ,ターゲットを絞りきれなかったの
が一つの原因である.平成14~18年度の大大特の成果として,紀伊半島沖合いに
カップリングが弱い領域があることがわかってきた.この成果に基づいて,紀伊
半島先端部周辺の地殻変動・地殻構造さらにはカップリングの推定を集中的に行
うことが妥当と考え,昨年度から地震予知研究センターの研究基盤整備事業によ
り,研究基盤が整いつつある.その進捗状況と初期の成果を報告する.
Progress
in Researches of RCEP for the Forecast of Impending
Nankai
Earthquake
The next Nankai earthquake is one of the most
important research themes
not only for RCEP, but for DPRI. However it has
not necessarily seen
significant progress, since clear target has not been
identified due to
the size of source region. So-called Dai-Dai-Toku project
showed us a
low-coupling region off the Kii peninsula. On the basis of this
result,
we consider that an integrated research is required to reveal
crustal
deformation, crustal structure and interplate coupling in Kii
peninsula
and surrounding region. Since 2006, we are establishing
research
infrastructure in Kii peninsula. I present its status quo and
some
preliminary
results.
飯尾能久(地震予知研究センター)
満点計画-次世代型地震観測システムの開発-
計測データに基づいてものごとの本質を明らかにしようとする,あらゆる学問
分野において,計測データの質と量は,結果の成否を左右する最も重要な要因
である.ところが,野外でデータを取る分野においては,計測システムの様々
な制約により,十分なデータを得ることが出来ない場合が多かった.そのた
め,例えば,医学分野において,CTによる「断層」写真はガンの早期発見な
どに大活躍しているけれども,地震波トモグラフィーは,現在のところ,地震
断層の実体を解明するほどの精度や分解能を持っていない.それは,Computer
を駆使した解析・処理は同様であっても,受信点(観測点)の数が少なく,対象
の複雑さに対してデータが圧倒的に足らないからであると考えられる.
多点・高精度・容易にデータを計測できる次世代型の地震観測システムを開発
し,万点規模の観測点によりデータを取得することが,地震・火山現象の解明
とその発生予測のために極めて重要である.
本講演では現時点までの開発状況について報告する.
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来月(1月)はお休みです。
11月
11月地震火山グループ研究会 「長周期地震動と構造物被害」
日時:11月30日(金)14:00~17:00
場所:京大宇治キャンパス 総合研究実験棟5F (HW525)
** 場所が通常と異なります.事務室のある棟の5階になります.**
プログラム(敬称略):
14:00 - 14:50
北村春幸 (東京理科大学 理工学部建築学科)
14:50 - 15:40 畑山健 (総務省消防庁)
(休憩)
15:50 - 16:40
三浦正博 (出光エンジニアリング)
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北村春幸 (東京理科大学 理工学部建築学科 教授)
「長周期地震動と超高層建物の耐震性」
東京,大阪,名古屋などの大都市が,東海・東南海・南海地震などの海溝型巨
大地震に襲われると,数秒から十秒の周期で大きなゆれが数分から十分間にわ
たって続く,長周期地震動に襲われることが指摘されている。大都市圏では数多
くの巨大構造物が建造されており,特に超高層建物や免震建物は2~6秒と長い固
有周期を持つことから長周期地震動に対する対策が求められる。これらの状況を
受け,土木学会と日本建築学会は「巨大地震対応共同研究連絡会」を設立して共
同調査研究を始めた。これに対応するために,日本建築学会では,2004年4月に
「東海地震等巨大災害への対応特別調査委員会(秋山宏委員長)」を設けて調査
研究を行い,その成果を報告書にまとめ,2006年9月の建築学会大会の研究協議
会で公表され,2007年12月に「長周期地震動と建築物の耐震性」として刊行され
る予定である。
講演では,特別委員会における超高層建物や免震建物などの長周期建築構造物
の耐震性能を検証する長周期地震動を,速度応答スペクトルSVとエネルギースペ
クトルVEの両者で設定する試みについて紹介する。さらに,これらのスペクトル
を目標スペクトルとして位相特性を2003年苫小牧記録とする模擬波を作成し,予
測波や告示波とともに鋼構造超高層建物モデルに対する部材レベルの時刻歴応答
解析を行う。これらの応答結果をもとに,最大値や累積値を比較・検討すること
により,鋼構造超高層建物の応答評価を行う。
畑山健 (総務省消防庁 危険物保安室)
「石油タンク防災の観点から見た長周期地震動予測の難しさについて」
2003年十勝沖地震や2004年紀伊半島南東沖の地震の際に発生した長周期地震動
が、現在の強震観測網によりかつてない空間的密度で観測されたことなどによ
り、長周期地震動の「実像」が捉えられつつある。一つは、ある地点で観測され
る長周期地震動の卓越周期は、地震により異なり得ること、すなわち卓越周期な
どの長周期地震動の特性は、必ずしも観測点直下の地下構造のみに支配されるわ
けではないことである。もう一つは、波長の長い地震波を成分とする長周期地震
動といえども、その特性は短い距離で大きく変動し得ることである。これらの
「実像」からは、石油タンクをはじめとする長周期構造物の地震防災に資する精
度の長周期地震動予測を実現するには、未だ解決すべき課題が多いことがわかる。
重要な課題の一つは、長周期地震動特性の平野内における空間的較差は、平野
地下構造のどの部分の特徴を強く反映したものであるかということである。この
ような問題意識から、2003年十勝沖地震の際に勇払平野において観測された長周
期地震動の空間較差と平野地下構造の関係を考察した。その結果、本事例では、
周期7~8秒の揺れの震幅は、深さ1km以浅にあるS波速度800m/s程度以下の軟らか
い堆積層の厚さによって支配されていることがわかった。この結果は、高精度な
長周期地震動予測を実現するには、地震基盤の深さ、すなわち平野各地点の堆積
層全体の厚さといったおおまかな地下構造情報だけでは不十分で、より詳細な情
報が必要であることを意味している。
三浦正博 (出光エンジニアリング 技術部)
「十勝沖地震による石油貯蔵タンクの被害とその後の取り組み」
平成15年(2003年)に発生した十勝沖地震では、石油貯蔵タンクに大き
な被害が発生した。その被害は、やや長周期地震動によるスロッシングが引き起
こしたものであった。
本講演では、スロッシングの発生状況、タンクの被害状況、被害に至ったメカ
ニズムについて説明する。また、この地震後、被害防止のために次のような取り
組みを行ってきており、その内容についても、紹介する。
・タンク構造の強化
・地震時のタンク被害を推定し地震後の点検ガイダンスを提供するシステムの設置
・スロッシングを抑制する技術の開発
10月
今月の研究会は,「新潟県中越沖地震」をテーマにおこないます.
奮ってご参加ください.** 場所が通常と異なります**
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10月地震火山グループ研究会 「新潟県中越沖地震」
日時:10月19日(金) 14時~16時30分頃
場所:京大宇治キャンパス研究新館1F
HS109(生存研遠隔講義室)
** 場所が通常と異なります**
プログラム(敬称略):
14:00 - 14:15
片尾浩(地震予知研究センター)
「2007年中越沖地震合同余震観測」
14:15 - 14:40
鈴木祥之(社会防災研究部門)
「木造建築物の地震被害 -悉皆調査と構造詳細調査-」
14:40 - 15:05
牧紀男,林春男(巨大災害研究センター)
「2007年新潟県中越地震の被災自治体に対する災害対応支援」
10分休憩
15:15 - 15:40
飛田哲男(地盤災害研究部門)
「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震調査-地盤関連被害-」
15:40 - 16:05
後藤浩之(地震災害研究部門)
「柏崎地域の深層地盤構造調査」
16:05 - 16:30
高橋良和(地震災害研究部門)
「新潟県中越沖地震における道路・鉄道構造物被害調査」
片尾浩「2007年中越沖地震合同余震観測」
2007年中越沖地震発生直後から8月22日まで、全国の6大学が合同で余震観測
を行なった。全体で臨時のオフライン観測点を40点展開し、そのうち5点を京
大防災研
が担当した。これらのデータは定常観測網のデータも加えて現在解析
中であるので、今回は観測の概要について簡単に紹介する。
鈴木祥之「木造建築物の地震被害 -悉皆調査と構造詳細調査-」
新潟県中越沖地震では、刈羽村、柏崎市地域において木造住宅のみならず、神
社・仏閣などの伝統木造建築物も大きな被害を受けた。これらの地域での木造
建築物の悉皆調査を実施し被害状況の把握を行うとともに、社寺建築物の構造
詳細調査に基づいて建築物の耐震性能と被害との関連性を調べた。
牧紀男,林春男「2007年新潟県中越地震の被災自治体に対する災害対応支援」
京大防災研巨大災害研究センターが新潟大学・民間企業と共同で実施した新潟県
なら
びに柏崎市での災害対応支援活動について紹介する。新潟県庁における、
災害対策センターのレイアウト支援、EMC(Emergency Mapping
Center)の運
営に関する支援、柏崎市におけるり災証明発行業務支援とEMC(Emergency
Mapping
Center)の運営支援について報告する。
飛田哲男「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震調査-地盤関連被害-」
2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震(Mj
6.8, D=15 km)
における地盤関
連被害について報告する.主な被害として,液状化に起因する地盤変状,斜面崩
壊,軟弱粘土地盤の沈下などが観察された.また,K-NET柏崎の強震記録には周
期約2秒のスパイク状の波形が記録されているが,柏崎刈羽原発における観測波
とK-NET柏崎付近の地盤構造をモデル化し,有効応力解析によりその波形の再現
を試みる.
後藤浩之「柏崎地域の深層地盤構造調査」
新潟県中越沖地震の柏崎地域で観測された地震動は様々な影響が複合的に働いた
ものであり,深層地盤構造の影響も考えられている.本発表では,すでに報告さ
れている地盤構造の紹介と,深層地盤構造のモデル化を目的として実施した微動
アレー観測について報告を行う.
高橋良和「新潟県中越沖地震における道路・鉄道構造物被害調査」
土木学会第2次調査団として8/1-3に主に構造物被害を中心に調査した.橋梁構造
物では兵庫県南部地震以降に改訂された示方書に基づくものも被災している.本
報告では特に道路,鉄道構造物被害について報告を行う.
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今月と来月(11/30)は,地震災害部門が担当いたします.
よろしくお願いいたします.
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9月
京大防災研地震火山グループ研究会のご案内です.奮ってご参加ください.
今月は,「地殻構造」をテーマにおこないます.
9月地震火山グループ研究会「地殻構造」
日時:9月27日(木) 14時~16時30分頃
**曜日が通常と異なります.ご注意ください.**
場所:京大宇治キャンパス研究本館4F
C473(化学研究所中会議室)
プログラム:
14:00 - 14:30
吉村令慧(地震防災部門.発表代理:大志万先生)
「跡津川断層および能登半島地震震源域周辺の比抵抗構造の
不均質性」
14:30 -
15:00 大見士朗(地震防災部門)
「地震波干渉法の応用による地殻構造モニタリングの試み」
10分休憩
15:10 - 16:30
中島淳一(東北大地震・噴火予知研究観測センター)
吉村令慧「跡津川断層および能登半島地震震源域周辺の比抵抗構造の
不均質性」
(急な事情により,大志万先生に代理で紹介していただくことに
なりました.また,中島さんの発表と関連する山陰の結果につい
てもご紹介いただけるかもしれません.)
全国14機関による歪集中帯合同観測により取得した広帯域MTデータ
を用い、跡津川断層周辺の比抵抗構造解析を行った。得られたモデル
では、(A)高山・大原断層帯、牛首断層を南北限とし、跡津川および
茂住祐延断層付近で薄くなる上部地殻の高比抵抗ブロック、(B)牛首
断層、茂住祐延および跡津川断層、高山・大原断層帯下の下部地殻に
は低比抵抗領域が特徴的構造として推定された。
本発表では、上記測線の北側延長線上で発生した能登半島地震周辺
で実施した広帯域MT観測の結果も併せて紹介する。
大見士朗「地震波干渉法の応用による地殻構造モニタリングの試み」
昨今,地震波干渉法(seismic
interferometry)による地下構造のイメージ
ング手法が物理探査分野で発展している.この方法では地表に設置された複
数の地震計で地震による震動やノイズを観測し,相互相関処理することによ
り,ある受振点を震源として全ての受振点でその震源の波動伝播を観測した
ような波形記録を合成することができるというものである.
これは,本来はある時刻の地殻構造のスナップショットを得るための方法であ
るが,同一の組み合わせの複数受震点間の相互相関や,単独受震点の自己相関
を求め,その時間発展を追うことにより地殻構造のモニタリングをおこなう方
法が最近提唱されている.
この方法では,データとして微小地震観測波形データの中のバックグラウンド
ノイズ部分を用い,近接観測点間の相互相関または同一観測点の自己相関を計
算し,その時間的な推移を監視するというものである.この方法により,たと
えばWegler
and Sens-Shonfelder
(2007)は,新潟県中越地震前後の地殻の状
態変化をF-netの柏崎観測点のデータの自己相関関数によって論じている.
今回,同様の方法を能登半島地震や新潟県中越沖地震前後の震源域周辺の微小
地震観測点のデータに適用した予備的な解析結果を紹介し,本手法による地殻
構造の時間変化のモニタリングの可能性を述べる.
中島淳一「新潟-神戸歪集中帯および山陰地方の地震帯の深部構造」
基盤地震観測網で得られたデータを用いて地震波速度トモグラフィーを行い,
中部・西南日本の三次元地震波速度構造を推定した.その結果,新潟-神戸歪
集中帯に沿った下部地殻および最上部マントルに顕著な低速度域が存在するこ
と,中国・四国地方直下の上部マントルには大規模な低速度域が存在すること
が明らかになった.中国・四国地方下の低速度域は,フィリピン海プレートの
北端を経由して,下部地殻まで上昇しているようにみえる.日本海沿岸に分布
する第四紀火山および山陰地方の地震帯と密接に関係しているのかもしれない.
7月
京大防災研地震火山グループ研究会のご案内です.奮ってご参加ください.
今月は,「地殻変動・重力」をテーマに,内外からの講演者三名に話題提供
をいただきます.
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7月京大防災研地震火山グループ研究会「地殻変動・重力」
日時:7月27日(金)
14:00 - 16:00頃
会場:京大宇治キャンパス研究本館4F C473(化研中会議室)
14:00 - 14:30 徐 培亮 XU
Peiliang(地震予知研究センター)
「Toward a Seafloor Geodetic Network for Deformation
Measurement」
14:30 - 15:00 中村佳重郎(地震予知研究センター)
「重力の経年変化の観測 」
15:00 -
15:10 休憩
15:10 - 16:10
高橋浩晃(北海道大学地震火山研究観測センター)
「地殻変動データによるリアルタイム防災情報発信の試み:津波予報と火山
噴火規模」
徐 培亮「Toward
a Seafloor Geodetic Network for Deformation Measurement」
Although crustal
deformation on land can now be measured and monitored
routinely and precisely
using space geodetic techniques, and although
many huge earthquakes and
submarine volcanic events take place under
water, we are not yet able to go
and directly measure crustal
deformation at the seafloor. It is well known
that up to this moment,
all what we can do is to use one survey vessel in
order to measure the
horizontal components of a seafloor geodetic mark at the
accuracy of one
to a few centimeters. As in the case of using the method
developed by
the Scripps Institution of Oceanography, nothing can be said
about the
accuracy of the vertical component. In this talk, we try
to
theoretically demonstrate that seafloor geodetic measurements can be
as
easily done as on land. We will show that in principle, all the
three
components of a seafloor geodetic mark can be determined as
accurately
as within one centimeter. Unlike any other studies of the same
kind, we
will further show that in principle, construction of a seafloor
geodetic
network (not one single point!) can be
possible.
中村佳重郎「重力の経年変化の観測」
最近では数年に1回の割合で繰り返されている一等水準測量は嘗ては全国を一周
するのに約20年を要していた。地表付近の大気中では重力の鉛直勾配は一般的に
0.3086
mgal/m である。可搬型の重力計を使
用した相対重力の決定精度は注意
深い準備と測定によって数μgalまで可能である。これを高さ変化に換算すると約
2-3cmとなる。重力の1測定ごとの分解能は水準測量の場合と比較す
ると数段落
ちるが、100kmを超すような長距離の点の間では重力測定による変動量の検出も
水準測量による検出も観測精度の面でそれ程大きな差は出てこなくなる。
京都大学では、東海、紀伊半島、四国東部の様な大きな重力変化が見込める地域
において重力の繰り返し測定を実施してきた。最近では、国土地理院の電子基準
点の分布密度が高くなったので、重力測定によって水準測量を補完する意味は薄
れてきた。しかし、地盤の上下変動と重力変化の比較検討によって地下の物質の
移動を議論する楽しみはまだ残されている。
高橋浩晃 「地殻変動データによるリアルタイム防災情報発信の試み:
津波予報と火山噴火規模」
北海道の太平洋沿岸部には,高さ15mを超えるような巨大津波が500年
間隔で繰り返し襲ってきている.前回の津波は17世紀初頭で既に400年
が経過しており,近い将来次のイベントが発生する可能性が高い.この
ような巨大津波を引き起こすであろう超巨大地震の地震モーメントと断
層破壊方向を近地の歪計データを用いてリアルタイムに追跡し,津波予
報に生かそうとする取り組みを紹介する.また,同じく地殻変動データ
を用いて火山噴火の「規模」をリアルタイムに推定し,火山防災情報と
して生かす試みについても紹介する.
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8月は,当グループ研究会は開催されません.
京大防災研地震火山グループ研究会のご案内です.奮ってご参加ください.
今月は,「地震活動・誘発地震」をテーマに,内外からの講演者三名に話題提供
をいただきます.
6月京大防災研地震火山グループ研究会「地震活動・誘発地震」
日時:6月22日(金) 14:00 -
16:00頃
会場:京大宇治キャンパス研究本館4F C473(化研中会議室)
プログラム:
14:00 - 14:30
片尾 浩(地震予知研究センター)
「近畿地方北部における微小地震活動の静穏化」
14:30 - 15:00
宮澤理稔(地震防災研究部門)
「誘発現象を利用した地震発生メカニズムの推定」
15:00 - 15:10 休憩
15:10
- 16:10
岩田貴樹(統計数理研究所)
「地震誘発現象への点過程モデルの適用例二題」
片尾 浩 「近畿地方北部における微小地震活動の静穏化」
大地震の発生に先行して、震源域の周辺で地震活動が静穏化する事例は多く知られており、
いわゆる地震前兆現象としてはかなり普遍的に見られると考えられるが、そのメカニズムはほとんどわかっていない。
丹波山地を中心とした近畿地方北部は、定常的に微小地震活動が活発な地域であるが、2003年初頭に地震発生数が突然30%ほど低 下し、現在もそのレートを維持したままである。地震が減少しているのは主に丹波山地中央部から琵琶湖西岸にかけての地域である。
また、時を同じくして伸縮計やGPSによる地殻変動観測結果にもトレンドの変化が見られている。
このような広域長期の静穏化は、近年では1995年の兵庫県南部地震前の2年間あまりの間に見られた例しかない。
これらの静穏化現象について、中規模地震に先行して小規模の例も含めまとめて報告する。
宮澤理稔 「誘発現象を利用した地震発生メカニズムの推定」
地震活動は些細な「きっかけ」で変化することがある。その「きっかけ」になるものに、地震波伝播に伴う応力擾乱がある。つまり地震が地震波によって誘発されることがあり、これは地震の動的誘発と呼ばれている。
どのような地震波が地震を誘発するかを調べることで、様々な震源情報が得られる。
近年注目を集めている深部低周波地震も地震波によって誘発されることがあるが、その誘発過程を調べ震源メカニズムについて考察する。
岩田貴樹 「地震誘発現象への点過程モデルの適用例二題」
点過程モデルは、地震活動全般に対して使われる統計的手法ですが、これを地震誘発現象に適用した例を2つ紹介します。1つ目は、地震活動と月齢との相関を調べた例です。従来、相関を調べる際に
使われて来たモデルを改善した、よりデータに適合するモデルを示します。
もう1つは余震活動に関するものです。Dieterich[1994, JGR]は、地震誘発の観点に基づき余震活動のモデル化を行いましたが、従来用いられている大森・宇津公式(改良大森公式)より統計的には劣っています。Dieterichのモデルをどう改善すればよりよいモデルを作れるかについて、やはり点過程モデルを通して見えて来たことをお話しします。
5月
京大防災研地震火山グループ研究会のご案内です.奮ってご参加ください. 前回とは会場が異なりますので,お気をつけください. 今回は,「早期地震警報システム」をテーマとして,おふたりにご講演いただきます 山田さんは,同テーマに関する研究でカリフォルニア工科大学で博士号を取得し, 3月に次世代開拓研究ユニット助教に着任しました.束田さんは,9月に一般に向けても 提供される気象庁緊急地震速報の原理を中心的に開発された,同システム実現の筆頭立役者です (関連HP http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/EEW/kaisetsu/index.html). おふたりの講演の要旨は,以下にあります. 5月京大防災研地震火山グループ研究会「早期地震警報システム」 日時:5月25日(金) 14:00 - 16:00 会場:京大宇治キャンパス研究本館4F C473(化研中会議室) プログラム: 14:00 - 14:50 山田真澄(京大次世代開拓研究ユニット) 「断層の有限性を考慮した緊急地震速報システム」 14:50 - 15:00 休憩 15:00 - 16:00 束田進也(気象庁地震火山部管理課) 「緊急地震速報とは何か?」 山田真澄「断層の有限性を考慮した緊急地震速報システム」 近年、実用化が期待されている緊急地震速報システムについてご紹介します。緊 急地震速報システムは、P波とS波の伝達速度の違いを利用して、地震情報をでき るだけ早く伝えることを目指しています。これまでの研究では、断層の有限性を 考慮して、リアルタイムで破壊領域を推定する手法と、すべり量を推定する手法 の開発に取り組んできました。今回はこの手法を能登半島地震に適用したときの 結果についても発表します。 束田進也「緊急地震速報とは何か?」 震源を決めることは地震学の基礎解析の一つである。近年のコンピュータや通信 ネットワークの飛躍的な高速化によって、強く揺れる前にあらかじめ強く揺れる ことを報知し、防災対応をとることができる可能性が出てきた。その歴史と科学 的な背景、最新状況についてお話します。
4月**これまでと場所が異なりますので,ご注意ください.**
下記のとおり,平成19年度年4月の地震火山グループ研究会を開催いたします 今回は,先月3月25日に発生しました「能登半島地震」についての特集です 総合的な理解のため,被害調査をおこなわれた当グループ以外の方にも講演 をお願いしました.多数のご参加をお待ち申し上げます. 平成19年度4月地震火山グループ研究会「能登半島地震」 日時:4月27日(金)14:00 - 16:30 場所:宇治共通・大会議室(本館西5F) 14:00-14:20:強震動 浅野公之(地震災害) 14:20-14:40:木造建物被害 鈴木祥之・向坊恭介(社会防災) 14:40-15:00:道路,橋梁被害 後藤浩之(地震災害) 15:00-15:20:港湾被害 飛田哲男(地盤災害) - 休憩 - 15:30-15:50:アーリーウォーニング 山田真澄(次世代開拓研究ユニット) 15:50-16:10:余震観測 西上欽也(地震防災) 16:10-16:30:地殻変動 橋本 学・福島 洋(地震予知) 各講演のタイトルと要旨は以下の通りです. 浅野公之(地震災害) 「2007年能登半島地震の強震動」 2007年能登半島地震では,穴水町や輪島市,七尾市などで強い揺れが観測され た.特に,穴水町のK-NET観測点では最大地動速度が100cm/sに近い記録が観測さ れている.我々の研究グループは,本震時に得られた強震記録を解析するととも に,これらの地域での地震動特性と地盤構造の関係を解明するため,余震観測や 常時微動観測を実施した.これらの結果について報告する. 鈴木祥之・向坊恭介(社会防災) 「能登半島地震における木造建物被害調査」 木造建物の被害について,悉皆調査による被害状況と被災建物の詳細調査による 被害の特徴や耐震性能について報告を行う. 後藤浩之(地震災害) 「能登半島地震における道路・橋梁被害調査」 能登半島地震発生直後の3/25-26に現地で被害調査を実施したので,道路・橋梁 に話題を絞ってその報告を行う. 飛田哲男(地盤災害) 「能登半島地震における港湾・地盤被害調査」 能登半島地震では多くの港湾,漁港に液状化によると見られる被害が発生した. また,能登有料道路では,多くの地点で盛土部が崩壊し通行不能に陥った.本報 告では,これらについて現地被害調査に基づき報告する. 山田真澄(次世代開拓研究ユニット) 「2007年能登半島地震における緊急地震速報システム」 緊急地震速報システムのアルゴリズムを能登半島地震の地震記録に適用し、この 地震における緊急地震速報の可能性、正確性、課題点などについて発表する。 西上欽也(地震防災) 「2007年能登半島地震の余震観測」 能登半島地震の直後から大学合同の余震観測が実施され、防災研も震源域周辺の 10カ所に地震観測点を設置した。そのねらいと解析結果の速報、その他、今回の 地震活動に関連する話題について紹介する。 橋本 学・福島 洋(地震予知) 「2007年能登半島地震による地殻変動と余効変動」 国土地理院GEONETと,京大・北大・富山大・金沢大で地震直後に設置したGPS データの速報解析結果を紹介する.また,衛星レーダ画像を用いたInSAR解析に よる地震による地殻変動・地滑りによる地表面変動を紹介する.これらの地殻変 動データに基づく速報断層モデルも紹介する.
3月
3月地震・火山グループ研究会 (先月と会場が異なります!) 下記の予定で,3月の地震・火山研究グループ研究会を開催します. 今回は,本年度末にてご退職される地震・火山研究グループゆかりの5名の教職 員の皆さまにお話していただくことになりました. 多数の皆さまのご参集を歓迎いたします. 日時:3月30日(金) 14時~17時30分 場所:化学研究所共同研究棟 大セミナー室 **これまでと場所が異なりますので,ご注意ください.** 1.上宝における地殻変動連続観測 和田安男 主に蔵柱観測室の地殻歪・傾斜の観測結果、降水による地殻歪等の 変化について述べます。 2.良質のデータは泥臭い仕事から 平野憲男 地震のデータはフィールドに出てみて、先輩からの経験談と自分の体感 でセンサーの設置場所を決める。耳を澄ますと鳥のさえずりやせせらぎ、 町のざわめきから判断する。ここぞと思う場所は保守が困難な所が多い。 少しの期間だから「なんとかなる」と決めた負債が長期になると出てくる 若い時は気軽に登れた山道が年と共に角度を増す。長期の観測を持続する ための工夫や苦労を振り返って、皆さんとの思い出話になります。 3.堆積盆地の地盤構造調査の現状と問題点 赤松純平 地震防災に関連して堆積盆の地盤構造-特に基盤構造-を,脈動観測と 重力測定により国内外で調査してきた. 若干の具体例をあげて調査方法の現状と問題点を述べる. (休 憩) 4.地震 - 予知と防災と社会 渡辺邦彦 地震予知に向かう姿勢、地震災害の軽減と社会への かかわり方について考えてみたい。 5.新しい研究に挑戦を 梅田康弘 「ほとんどの地震は破壊開始と同時に加速するが、それ故すぐ停止す る。逆に破壊成長が抑制されればされるほど大きく成長する」と、これ は亀伸樹 (1997)の研究成果である。この成果は「初期破壊が長いほど大 きな地震になる」という現象の理論的裏付けとなるに違いない。理論に 出てくる破壊強度や応力降下量は直接測ることは出来ないが、それらを 知るため新しい発想で研究や観測あるいはフィールド調査を行えば、必 ず新たな知見を得るに違いない。そのことが地震予知への道を切り開く ことにもなる。
2月
2月地震・火山グループ研究会 日時:2007年2月23日(金) 14時~17時過ぎ 場所:防災研究所 本棟5階 D570 今回は,ジャワ島の泥火山調査関連の報告と,九大吉岡祥一先生と大学院理学研究科 D3の白さんによる南海トラフに関する研究成果のご講演でまとめてみました. 多数のご来聴を歓迎いたします. なお,次回は3月30日(金)今年度ご退職予定の梅田先生,渡辺先生,赤松先生, 平野技術室長,和田安男氏によるご講演を予定しております. 1)東ジャワSidorajoの泥火山活動 Jim Mori・加納靖之(地震防災研究部門) 2006年12月に,インドネシア東ジャワのSidoarjo(スラバヤの南約30 km)で 噴出した泥火山を調査した.推定で1日10万立方mもの大量の熱水と泥が放出さ れており,熱泥水の流れをつくりだしている.この泥火山の起源は深さ1~2 km に位置する過剰圧の層であると考えられている.泥火山の噴出のはじまりは 近傍で行われていた天然ガスの掘削作業に関連している可能性がある. 泥水の噴出を止めるいくつかの努力が続いているが,どれも成功していない. Mud Volcano Activity in Sidoarajo, East Java Jim Mori, Yasuyuki Kano In December 2006 we visited a mud volcano that has been erupting since May 2006 in the town of Sidoarjo, located about 30 km south of Surabaya in East Java, Indonesia. Large amounts of hot water and mud are being emitted with estimated volumes of about 100,000 cubic meters per day. The large volumes of material produce fast running streams of hot water and mud. The source of the mud volcano is presumed to be a region of over-pressurized water and gas located at depths of between 1 and 2 km. The start of the mud volcano eruption may be associated with some drilling activities for natural gas, which were being done in the local area. There have been several efforts to stop the flow of water and mud, but none have been successful. 2)だいち衛星のデータを用いたSAR干渉解析によるジャワ島泥噴出に伴う地盤沈下 計測とモデリング 福島洋(地震予知研究センター) 2006年1月にJAXAによって打ち上げられた「だいち」(ALOS)衛星に搭載された 合成開口レーダー(SAR)PALSARにより,ジャワ島泥噴出現場の撮像が何度かお こなわれた.これらのSAR画像の解析から,1メートルを超える地盤沈下が泥噴 出口を中心に直径3-4キロの領域で起こっていることがわかった.また,モデル 計算により,地盤沈下の変動源が数百メートル以浅にあることがわかった. 3)2004年紀伊半島南東沖地震:震源再決定、震源過程、そのテクトニックな意味 The 2004 earthquake offshore of the Kii peninsula, Japan: hypocentral relocation, source process and tectonic implication 白玲(地震予知研究センター) 西南日本では、フィリピン海プレートの沈み込みに伴い、100年から150年の間隔で M8クラスの巨大地震が繰り返して起こってきた。2004年9月5日、紀伊半島南東 100km沖で、次の東南海地震の想定震源域に隣接して、M7.2と7.3の地震が5時間 間隔で発生した。まず、Hi-net観測網でsP波が観測されたM4.0クラスの余震につ いて、DD法に深さに敏感なsP波を加え、深さの決定精度を上げる試みを行った。 次にそれより大きな地震について、depth phaseを取り入れた遠地のデータのイン バージョンにより、震源の再決定を行った。最後に破壊伝搬の途中でメガニズムが 変わることを許す遠地の観測波形のインバージョンから、M7.2と7.3の地震の震源 過程を求めた。その結果、今回の地震はフィリピン海プレートと銭洲海嶺の反応で 起こったことが分かった。M7.2と7.3の地震はフィリピン海プレートの最上部マ ントル に起こった逆断層型の地震であることは確実であった。東西と南北のT字形の余震 分布は、M7.2と7.3の地震のメガニズムと対応することが明らかになった。 4)3次元熱対流モデルから推定した南海トラフにおける熱構造とプレート間大地震 吉岡 祥一(九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門) 1.はじめに 南海トラフは海洋性プレートであるフィリピン海プレートが、西南日本を形成す る陸側のアムールプレート下に沈み込む収斂境界である。南海トラフではこれまで 90~150 年周期でM8 クラスの海溝型巨大地震が発生してきた。 Hyndman et al. (1995)は、南海トラフにおいて、地殻熱流量のデータを用いて沈み込むフィリピン 海プレート上面の温度分布を推定し、100-150℃~350-450℃の範囲を地震発生域と 考えた。Hyndman et al.(1995)では、2 本の測線に沿った解析結果のみを補間して、 南海トラフにおける地震発生域を議論している。しかしながら、その後の研究で、 詳細なプレート上面の形状やプレート相対運動の解明、地殻熱流量データの蓄積が なされ、より空間分解能の高い温度分布の推定が可能となりつつある。特に、 Hyndman et al.(1995)のモデルは2次元鉛直断面内のモデルであるため、トラフ軸方 向の地殻熱流量変化に対応したモデルを構築することができないといった欠点もある。 以上の点に鑑み、本講演では、3次元箱型モデルによる数値シミュレーションを通 して、南海トラフから沈み込むフィリピン海プレート上面の新たな温度分布を提案す る。この温度分布を、南海トラフにおけるプレート間地震のすべり分布と比較し、検 討を行う。また、隣接地域である四国沖と日向灘において、前者ではM8クラスの海 溝型地震が発生するのに対し、後者ではせいぜいM7.5 の地震しか発生しない原因 についても考察を行う。 2.データとモデル BSR、ヒートプローブ、ボアホールによる地殻熱流量データを用い、数値シミュ レーションによって得られた温度分布から計算された地殻熱流量と比較した。本 研究では、3次元のマントル対流コードであるstag3d(Tackley and Xie, 2002) を沈み込み帯に適用できるよう改良することで、フィリピン海プレートの沈み込 みに伴う温度分布の計算を実現した。モデルには、過去のプレート相対運動の変 遷と、地磁気縞模様異常から推定されている四国海盆の形成史を取り入れた。ま た、日向灘地域にも同様のモデルを適用した。同地域南部の地殻熱流量の値は、 四国沖の地殻熱流量の値に比べ、有意に低いことから、この原因を年齢が古いと 推定される九州-パラオ海嶺の沈み込みによるものと仮定してモデル計算を行っ た。 3. 結果と考察 四国沖~紀伊半島にかけての解析結果から、トラフ軸方向のプレート境界の温 度分布の空間変化は海洋プレートのトラフ軸方向の冷却プロセスに関連した時空 間変化によって説明できること、地震発生固着域の下限は温度によって規定され ること、1944年東南海(M 7.9) 、1946 年南海地震 (M 8.0)に伴う地震時の最大す べり域は温度計算から推定された地震発生固着域内に位置していること、などが わかった。地震発生帯の深部延長上で発生する低周波地震の震源分布は、約450℃ の等温線に概ね一致しており、海洋性地殻の含水鉱物の相転移に関連している可 能性もある。地震発生固着域の幅は、1944 年東南海、1946 年南海地震の震源が 位置する紀伊半島沖で最も狭く、このことは、速度-状態依存則を用いた地震サ イクルの数値シミュレーションによって示されているように、海溝型巨大地震の 破壊開始点が地震発生固着域の幅によって規定されていることを示唆しているの かもしれない。 また、日向灘地域の解析結果からは、日向灘地震は、南東側のプレート境界面 上の約200℃の等温線、北西側の沈み込むフィリピン海プレートの上面と大陸側の モホ面が接する境界線、北東側のバリア、または大きな摩擦パラメターLを持った トラフ軸に直交する地帯によって囲まれる、吉岡(2006)が提唱した“日向灘ト ライアングル”内で発生しているという結果が得られた。そのような限定された、 地震発生固着域内では、せいぜいマグニチュードが7.5程度のプレート間地震しか 起こしえないのかもしれない。また、日向灘地域の海側の地震空白域と九州南部 沖から南西方向に伸びる琉球海溝における地震空白域は、それぞれ、プレート境 界での低温による安定すべり、及び、プレート境界での2つの安定すべり領域、す なわち、古いフィリピン海プレートの沈み込みによる浅部での低温領域と深部で の蛇紋岩化したマントルウェッジ領域、の重なりによるものかもしれない。
12月
12月地震・火山グループ研究会 地震・火山研究グループ研究会を,今月は25日(月)に開催いたします. 2006年12月21日が昭和南海地震60周年にあたるということもあり,南 海トラフ下の探査を精力的に行われている海洋開発研究機構の小平秀一さんをお 招きし,西南日本の構造に関する研究を中心に南海トラフの巨大地震や話題の深 部低周波地震などのメカニズムについて議論したいと思います. 多数のご来聴を歓迎いたします. 日時:2006年12月25日(月) 14:00~17:30 場所:防災研究所 D570 1)Andri Dian Nugraha(地震予知研究センターD1) Three-dimensional Velocity Structure in the Bungo Channel and Shikoku Area, Japan, and its Relationship to Low-frequency Earthquakes We used a tomographic inversion to determine P and S wave structures in the western Shikoku and Bungo Channel region, for comparison with the locations of low-frequency earthquakes. The velocity model clearly images the high velocity subducting slab and we can see the spatial relation to the low-frequency earthquakes. Under western Shikoku the low-frequency earthquakes occur at depths close to the plate interface, but under the adjacent Bungo Channel region to the west, there is a clear depth separation. Our interpretation is that the low-frequency events are occurring in a region of high Vp/Vs that is located above the subducting slab. The depth separation above the plate seems to vary depending on the region. 2)広瀬一聖(地震予知研究センター産学連携研究員) 広角反射法・屈折法地震探査による近畿地方の地殻構造 近畿地方に被害をもたらす大地震の震源断層の詳細な位置と深部形状、断層周辺 の物性や構造を解明することは、活断層の活動を予測するだけでなく、地震発生 機構を解明する上で非常に重要である。また、大地震による強震動予測をするた めに、地震動の伝播媒体となる地殻の地震波速度構造を調べることも重要であ る。そこで本研究では、1960年代から近畿地方で行われた複数の制御震源を用い た地殻構造探査の記録を用いて、広角反射法と屈折法走時解析による地表から上 部マントルに至る広域の構造調査を行っている。本発表では、2004年秋に観測が 行われた大大特・ 新宮-舞鶴測線の結果を中心に、これまでに得られた反射面構造とP波速度構造 の結果を示し、それらと地震活動や地質構造などとの関連について述べる。 3)小平秀一氏(海洋開発研究機構・グループリーダー) Shuichi Kodaira, IFREE, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology Recent results of JAMSTEC's seismic studies in the Nankai seismogenic zone Recent availability of a large number of ocean bottom seismographs (OBSs), a large volume of air-gun array and a long streamer cable for academics provide several new findings of lithospheric scale structures in subduction seismogenic zones. Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC) has acquired long-offset seismic data using a super-densely deploy OBS (i.e. 1 - 5 km spacing OBSs along 100 - 500 km long profiles) in the Nankai seismogeinc zone, SW. Japan, since 1999. Long-offset multichannel seismic (MCS) data by a two-ship experiment, as well as conventional 2D MCS data, have been also acquired at a part of the profiles. Some of those profiles have been designed as combined onshore ? offshore profiles for imaging a land-ocean transition zone. One of the most striking findings is an image of several scales of subducted seamounts/ridges in the Nankai trough seismogenic zone. We detected the subducted seamount/ridges, which are 50 - 100 km wide, distributing from near trough axis to ~ 40 km deep beneath the Japanese island. An important aspect, from a point of seismogenic process, those structures are strongly correlated with slip zones of magnitude (M) 8-class earthquakes, i.e.; subducted seamounts/ridge control the rupture propagations. Moreover, the most recent seismic study crossing the segmentation boundary between M=8 class earthquakes detected a high seismic velocity body forming a strongly coupled patch at the segmentation boundary. The numerical simulation incorporating all those structures explained the historic rupture patterns, and shows the occurrence of a giant earthquake along the entire Nankai trough, a distance of over 600 km long (Mw=8.7). The growth process revealed from the simulated slip history in and around the strongly coupled patch are; 1) prior to the giant earthquake, a small slow event (or earthquake) occurs near the segmentation boundary, 2) this accelerates a very slow slip (slower than the plate convergent rate), at the strong patch, which reduces a degree of coupling, 3) then a rupture easily propagates through the strong patch when the next earthquake is nucleated near the segmentation boundary; consequently growing into a giant earthquake.
11月
11月地震・火山グループ研究会 日時:11月24日(金) 14時から17時(予定) 場所:防災研究所本館D570室 発表者: 後藤浩之さん(JSPSポスドク研究員 地震災害・耐震基礎) 福山英一さん((独)防災科学技術研究所、CREST/JST 地震災害・強震動・非常勤 講師) Jason McCormickさん(JSPS外国人特別研究員 地震防災・耐震機構) 発表タイトルと要旨: 後藤浩之さん(JSPSポスドク研究員 地震災害・耐震基礎) 「動力学に基づく震源インバージョン手法の安定な定式化」 要旨: 断層の破壊過程の力学的な理解を目的として,震源断層で発生している動力学を考慮 した動力学震源モデルが利用されているが,現在は強震動予測においても動力学震源 モデルを利用する試みもされつつある.このモデル化においては,実際の地震と対応 させて適切なモデルパラメタを設定する必要があると考えられることから,動力学を 満たす破壊過程を推定する動力学震源インバージョン手法の開発について研究を行っ ている.本発表では,動力学震源インバージョン手法の具体的な定式化と,推定パラ メタの選択による安定化手法について述べる. 福山英一さん(防災科学技術研究所、CREST/JST) 「動的破壊のシミュレーション -プレートの沈み込から強震動の発生まで- 要旨: 断層の形状、地震発生直前に震源域に働いている応力場、そして断層面上での破壊の 構成法則がわかっていれば、大地震の破壊過程を再現することが可能である。沈み込 み帯の大地震はプレート境界で起こることから、精度の良いプレート境界形状を用い ることができる。プレートは、大局的には一定速度で運動しているが、局所的には定 常的にすべっている部分と、非定常的にすべっている部分がある。非定常的にすべっ ている部分は、すべり残しが蓄積するとともに応力が増大する。蓄積された応力があ る限界値を越えると地震が発生する。これが繰り返されて、地震サイクルが形成され る。この地震サイクルをコントロールするのが、プレート境界における破壊強度の構 成法則である。ここでは、時間とすべり量に依存する破壊法則を用いる。このように して、地震発生直前の応力蓄積状態とプレート境界面における構成法則が得られれ ば、地震の動的破壊伝播を計算できる。地震の動的破壊の計算には、三角要素を用い た境界積分方程式法を用いる。この手法は、非平面の断層形状 において構成関係を 精度良く考慮できる手法である。動的破壊過程の計算の結果、この地震のすべりの時 空間関数が得られる。このすべりの時空間関数を入力とする波動場の計算を差分法で 行なうことで、この地震から発生する地震波動場を計算できる。さらに、精度のよ い、よく校正された構造を用いることで、それぞれの場所における地震動を計算し、 観測データとの比較が可能となる。強震動の予測において重要な要素は地殻構造と震 源過程であるが、後者の不確定性がはるかに大きい。そこで、このような、統合シミ ュレーションを行なうことで、震源に関する不確定性を減らし、強震動予測を効果的 に行なう一助になることを期待している。 Jason McCormickさん(JSPS外国人特別研究員 地震防災・耐震機構) A Multi-scale Approach to the Use of Innovative Materials for Seismic Applications Abstract: Shape memory alloys are a unique alloy which can undergo large deformations while reverting back to their undeformed shape through either the application of heat (shape memory effect) or the removal of the load (superelastic effect). This ability to recover their shape provides self-centering capabilities to a system and the flag-shape hysteresis provides supplemental damping to control the response of the structure. In order to explore the use of large diameter shape memory alloys for seismic applications in building structures, a multi-disciplinary and multi-scale approach is undertaken. Materials characterization studies are performed along with cyclic uniaxial tests in order to correlate the microstructural properties with the macroscopic mechanical properties resulting in a previously non-existent fundamental link between the nanometer-scale structure up through the full-scale deformation response. With this understanding of the behavior of NiTi shape memory alloys, a variety of systems implementing them in building structures are studied both analytically and experimentally. The preliminary results suggest that the use of a shape memory alloy bracing system can lower inter-story drifts and residual drifts as compared to conventional methods.
10月
今月の研究会は地震災害,地震防災研究部門の非常勤講師の先生方から3名お招きし て,地震災害軽減に関する話題提供のプログラムを準備しました.皆様のご来聴をお 待ちしております. 日時:2006年10月27日(金) 14:00~17:30 場所:防災研究所研究本棟5階 D570号室 発表者: 香川敬生さん((財)地域地盤環境研究所) 新井 洋さん((独)防災科学技術研究所防災システム研究センター) 福和伸夫さん(名古屋大学大学院環境学研究科) 発表タイトルと要旨 香川敬生さん((財)地域地盤環境研究所) 「地表断層と潜在断層による地震動の違いとその原因となる震源断層破壊」 要旨 断層破壊が地表に明瞭に現れる地表断層地震では,同じ規模で地表にまで破壊が及ば ない潜在断層地震よりも,被害に関連する周期1秒付近の地震動が小さい傾向がある。 震源インバージョンによるすべり分布にモデルをあてはめて評価した応力降下量や最 大すべり速度は、アスペリティの深さ依存性を示していて、深いアスペリティほどそ れらのパラメータが大きいことがわかった。地震規模が大きくなり、地表地震断層を 伴う浅いアスペリティが卓越することによって、最初に掲げた地震動の特徴を説明す ることができる。また動力学的な検討からも地表断層を伴うアスペリティと伏在のそ れにはすべり時間関数に差のあることが説明された. 新井 洋さん((独)防災科学技術研究所防災システム研究センター) 「微動探査法において交通振動を積極的に利用する可能性に関する一検討」 要旨 地盤のS波速度構造を推定する手法として,近年,微動観測に基づく方法(微動探 査法)が実用段階に入りつつある.この手法では,従来,車両通行等による交通振動 はノイズとして除去される場合が多かった.しかし,深さ数メートル程度の表層S波 速度を精度良く推定するためには,むしろ微動よりも交通振動を利用する方が有利で ある可能性も考えられる.この可能性を検証するためには,振動源の力学特性や近傍 での波動伝播特性を把握しておくことが重要である. そこで本発表では,地盤構造が既知の地点において,単一走行乗用車により生じる 地盤振動の同時多点観測を行い,その伝播特性について検討した.その結果,交通振 動の鉛直成分からレイリー波の位相速度が得られることを示した.また,振動源の近 傍における水平成分の特異な距離減衰特性を説明するためには,表面波と実体波を区 別できる応答変位解を用いた検討が必要であることを確認した.さらに,乗用車走行 の振動源を3成分地表点加振力にモデル化し,これを観測波形データから逆算したと ころ,既往の研究成果と調和的な結果を得た.ただし,得られた振動源モデルの精度 は,これに基づく交通振動の数値シミュレーションを行うには未だ不十分であり,今 後さらなる検討が必要である. 福和 伸夫さん(名古屋大学大学院環境学研究科) 「地震災害軽減のための研究と実践」 要旨 前回の南海トラフの地震以降、私たちがどんな社会を作ってきたのか、また、私たち の実力はいかほどなのか、素直な目で再点検をし、今、どんな研究や実践が望まれて いるのか、一緒に考えてみたい。 最初に、過去と今の社会・生活圏とを対比することで、私たちの社会を見つめ直して みたい。つぎに、地震観測データから地盤と建物の揺れの実態を見つめ、意外なほど、 分かっていないことが多いことを再確認する。そして、ごく簡単な振動論から、実務 者が意外な落とし穴を抱えていないかを考えてみる。その上で、今、私たち、防災に 関わる研究者が、災害軽減のためにどんな貢献や実践ができるか、私たちの活動事例 を紹介しながら一緒に考えてみたい。
9月
下記の要領で,標記研究会を開催いたします. 今回の研究会には前地震予知連絡会長の茂木清夫先生をお招きします.先生は 現在も勢力的に研究を進められておられ,近々に「Experimental Rock Mechanics」が上梓されます.さらに先生は,「地震予知」について,1995 年兵庫県南部地震後、多くの人々が消極的になるなかで,岩波新書「地震予知 を考える」(1998年)を出版し,そのような動向に反対して、予知の可能性 を追及すべきだと一貫して主張されております.講演では,茂木先生のながい, そして輝かしい研究生活の経験をもとにした地震予知の話が聞けると期待して います. なお研究会に先立ちまして13:40~14:00には,本館の玄関内に当 グループによって設置がすすめらています「現在の地震火山活動」(Current Earthquake and Volcano Activity)の玄関ディスプレイのお披露目会が催され ます.どちらの出席もよろしくお願いもうしあげます. 日時;2006年9月29日(金)14:00~17:00 場所:防災研究所研究本棟5階 D570 1.14:00~14:50 新しいプレート境界面を用いた南海トラフ沿いの プレート間カップリングの推定 京都大学防災研研究所 地震予知研究センター 小林 知勝 近年,紀伊半島・四国及びその海域において地震波構造探査が精力的に行われ, 南海トラフ沿いのプレート境界面の様子が明らかにされつつある.それによると, プレート境界が従来考えられてきたものより約10km浅くなることが指摘されてお り,南海トラフ沿いの歪蓄積過程の解明に向けて,新しいプレート境界面による プレート間カップリングの再評価が迫られている. そこで本研究では,構造探査から得られた結果を基にしてプレート境界面を再 設定し,西南日本におけるGPSデータを用いて南海トラフ沿いのプレート間カッ プリングの空間分布を推定した. その結果,紀伊半島先端部直下に固着が弱い領域があることが明らかにされた. この領域は,1946年南海地震の震源の近傍にあたり,また過去の東海・南海地震 の震源域の境界付近に位置することから,固着の弱いセグメントが,これらの断 層運動をコントロールする可能性が示唆される.本講演では,これらの解析結果 を詳細に報告する. 2.15:00~15:50 弾性波による摩擦強度のモニター Monitoring frictional strength with acoustic wave transmission 東京大学大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻 博士課程1年 永田 広平 摩擦強度は,面の接触状態に依存すると考えられている.一方,接触面を透過す る弾性波の透過振幅も,面の接触状態を強く反映することが知られている.我々は, 摩擦強度と弾性波の透過振幅の関係を調べることを目的とし,すべり面を透過した P波やS波の透過振幅を連続測定しながら岩石の摩擦すべり実験を行った.実験では 様々な操作により面の接触状態を変化させたが,どの場合にも摩擦強度と透過振幅 は同じような変化を見せた.これらの間の定量的な関係にはまだ議論の余地がある が,透過振幅を測定することは,面の強度の変化を監視するための有力な手段とな りうるだろう. Frictional strength is known to be dependent on the state of the interface. On the other hand, some earlier studies have shown that the amplitude of an acoustic wave transmitted across a frictional interface is sensitive to the state of the interface. We performed friction experiments while continuously measuring the amplitudes of longitudinal or shear waves transmitted across interfaces between granite samples in order to examine the relationship between the amplitude and the frictional strength. In the experiments, similar positive dependence of the amplitude on the frictional strength was found for changes of the contact state, which changes for various reasons. Although the quantitative relationship between the amplitude and the frictional strength should be examined more closely, acoustic transmission will be a useful tool to monitor the frictional strength. 3.16:00~16:50 地震予知に関する問題 茂木 清夫 講演の内要は, ① 長期的予測の問題 兵庫県南部地震、福岡の地震、スマトラの地震 など ② 短期的予測の問題 北伊豆地震、 十勝沖地震、インドの地震 など ③ 長期予測に関連するΔCFS (Coulomb stress increment)や、 目下出版予定の「実験岩石力学」に詳しく書いた中間主応力の 破壊のパターンや強度に対する効果について。
7月
下記の通り7月の地震・火山グループ研究会を開催いたします. 前半は,6月に引き続き「地震予知のための新たな観測研究計画(その2)」に 基づく事業の課題の報告です. 今月の招待講演は,前名古屋大学環境学研究科地震火山・防災研究センター長で 現静岡大学客員教授の藤井直之先生にお願いしました. 多数の御来聴を歓迎いたします. 日時:2006年7月28日(金) 14:00~17:30 場所:防災研究所研究本棟5階 D570号室 第1部 「地震予知のための新たな観測研究計画(その2)」事業課題報告 1)次の南海地震の発生予測の高度化(渋谷) 2)内陸歪み集中帯の構造とダイナミクス(伊藤) 3)半制御実験による震源核形成過程の解明(飯尾) 4)強震動予測に関する研究(岩田) 5)西南日本の低周波イベントの発生環境と特性の研究(大見) 6)次の南海地震に向けた応力蓄積過程の解明(柳谷) 7)キネマティックGPSによる時間~日周期の変動の検出方法の開発(橋本) 第2部 招待講演 静岡大学客員教授 藤井直之 先生 (前名古屋大学環境学研究科地震火山・防災研究センター長) Monitoring and Modelling of Deformation Processes of Volcanic Edifice: (火山体変形のモデルとモニタリング) We summarize various geodetic methods such as dense GPS networks, InSAR, laser altimeter, and etc. used for the detection of deformations associated with the recent activities of some strato-volcanoes and possibility of future developments. Modeling of observed geodetic data should provide the evolutional evidence of volcanic edifice, although little information will be obtained for the changes of chemical compositions and bubble formation for rising magma. Various styles of deformation processes associated with the eruptive activities of volcanoes could mostly reflected to the changes in the stress field within the volcanic edifice, such as inflation and deflation of throughout the evolution of volcanoes. The mechanisms that could cause these deformations are likely to be the intrusion of dikes that originated from the magma chamber, unrest of volcanic edifice by landslide or evolution of rift zone system, and so on. Volcanic activities of 1998 Iwate volcano, 2000 eruption of Usu volcano, 2000 eruption of Miyake-jima volcano and the 2000 dike intrusion event between Miyake-jima and Kohzu-shima will be discussed in some detail. Especially, we focus on the detectabilities of temporal changes of deformation associated with each volcanic activity. For example, composite volcanoes (strato-volcanoes) have the simplest cone shape of volcanic edifice, and are built from effusive products that cumulated to a sequence of flow units from a mostly radial distribution of dike swarms. Besides, hotspot volcanoes in the Hawaiian, the Canary, and the Reunion islands have two or three directions of dominant rift zones (dike swarms oriented parallel to the rift) have not a cone, irregular shapes. Those volcanoes had large landslides generated during the past millions of years. Presumably, most of such landslides are caused by lateral failures. In other words, landslides are presumably caused by lateral failures. Destabili-zation of volcanic edifices resulting from internal and external factors (such as local stress field by dike intrusions, surface loading by eruption erosion, and seismic activities) should contribute to lateral fracturing and collapsing. Adequate modeling of these various processes critically requires identification of all the essential physics.
6月
下記のとおり,2006年6月の地震・火山グループ研究会を開催いたします。 今回は、地震予知研究センターを中心に取り組んでいる「地震予知のための新た な観測研究計画(第2次)」に基づく事業の報告と、本年4月1日に立命館大学 へ移動されました川方裕則氏による講演です。なお、下記第一部につきましては 講演者は予定であり、変更される場合があります。 ご来聴を歓迎いたします。 ◎日時:2006年6月23日 14時~17時30分 ◎場所:京都大学防災研究所D570 (宇治キャンパス研究本棟5階) 第1部 地震予知観測研究計画事業費に基づく研究報告 1)西南日本内陸における歪・応力蓄積様式の解明(飯尾能久) 2)断層における注水実験および応力状態の時間変化(西上欽也) 3)断層面上の不均一な応力・強度分布の解明(James Mori) 4)スロー・スリップ・イベントのマッピング(川崎一朗) 第2部 招待講演 「地震の初期破壊とは何を反映した現象なのか」 立命館大学理工学部物理科学科 川方 裕則 室内における岩石圧縮破壊実験や摩擦すべり実験においては、高 速破壊前にゆっくりとした応力低下が見られることが分かっている。 特に摩擦すべり実験においては、空間分解能の高い応力分布が得ら れており、ゆっくりとした応力の低下は震源核部分で観測されるこ とが分かっている。自然地震においても、1989年伊豆半島東方沖群 発地震に関して、M5クラスの地震発生に先行してこの震源域にお いてのみ応力が低下したことを示唆する結果が得られている。 このように、震源核、すなわち破壊開始点近傍において、地震発 生に先行して応力低下が発生していることが示唆されており、大規 模地震の際に、破壊開始点近傍において発生する「初期破壊」と何 らかの関係があることが期待される。 本講演では、2005年に発生した福岡県西方沖地震を例に、「初期 破壊」の定義を試み、その発生環境、「主破壊」へのつながり方に ついて、検討してみたい。
5月
5月の地震・火山グループ研究会の案内です. 今月は,第1部として「大大特Ⅰ」の報告,第2部として招待講演(東京大学大 学院教育学研究科Struzik氏)の構成です. 多数のご来聴を歓迎します. 日時:2006年5月26日 14時~17時30分ころ 場所:防災研D570(宇治キャンパス研究本棟5階) 第1部 大大特Ⅰの報告 1.大深度弾性波探査・・・・伊藤潔 2.断層モデル等の構築 1)自然地震・制御震源を用いた内陸活断層の深部モデルと地殻内三次元構造 モデルの構築に関する研究・・・・渋谷拓郎 2)断層の準静的モデルの構築と歪蓄積過程に関する研究・・・・橋本学 3)強震動予測高精度化のための震源モデル、堆積盆地構造モデルの構築に 関する研究・・・・岩田知孝 第2部 Zbigniew Struzik(東京大学大学院教育学研究科) Verification of Criticality Hypothesis in Heart Rate Control and in Stock Index Crash - Possible Implications for Use in Earthquake Analysis (Abstract) Complex phenomena know several benchmarks, or 'hard' and to date unsatisfactorily understood problems. Just like the earthquake phenomenon in geophysics, human heartbeat control is such a complexity benchmark in biophysics, as is the financial stock index in market interactions. In the first part of the talk, recent results from the analysis of human heart rate variability (HRV) will be discussed. Special attention will be paid to the contrast between the Criticality versus Cascade description of HRV complexity, which has led to the recent discovery of phase transition and criticality in heart rate control. In the second part of the talk, the recent discovery of phase transition and criticality in stock market fluctuations will be presented. The unexpected similarities and known differences from HRV criticality will be addressed, as well as the issue of the predictability of critical events. The context of the information cascade and analogies with hydrodynamic turbulence will also be discussed, together with the possibility of modelling the critical behaviour in an extension to the Bak Tang Wiesenfeld (BTW) sand pile model of self-organised criticality. Possible implications for potential use in earthquake analysis of the multiscale-type detrending approaches, used for the analysis of time series from the two discussed benchmark domains of complexity, will be suggested in the conclusions and open to discussion.
4月
下記のとおり、2006年4月の地震・火山グループ研究会を開催いたします. ご来聴を歓迎いたします 日時:2006年4月28日 14時~17時30分 場所:京都大学防災研究所D570 (宇治キャンパス研究本棟5階) ◎2005年地震予知研究センター・プロジェクト研究成果報告 1.大見士朗 Source-Scanning Algorithmを使った深部低周波イベントのマッピング 2.梅田康弘・浅田照行 南海地震の予知に向けた塩水・淡水境界の変動測定 3.渡辺邦彦 漏洩電流のハイサンプリング測定による地電流伝播特性の研究 4.尾上謙介 メカニカル拡大システムを用いた3成分短スパンひずみ計の試作 5.佐藤一敏 地震発生時のGPSリアルタイム解析アルゴリズムの構築 6.加納靖之 ボアホール内の水の移動と温度変化の関係を調べる現場実験 7.竹内文朗・森井亙 北陸観測所での歪観測による歪集中帯内歪みの空間分布の研究 ◎講演 福島 洋(京都大学防災研究所・地震予知研究センター) 境界要素法を用いたInSARデータのモデリングから推測されるフルネーズ火山 のマグマ輸送システム 5年半の休止期間の後,フルネーズ火山は1998年3月に新たな活動期に入った.干 渉合成開口レーダー(InSAR)データは,この活動期の最初の五つの噴火(1998 - 2000)に伴う地殻変動が複雑であったことを示している.本研究では,InSAR データから,噴火に伴い形成されるダイクの形状と過剰圧を推定する手法を開発 した.この手法は,地形の効果を取り入れた境界要素法とモンテカルロ・インバー ジョンの組み合わせから成る.手法をデータに適用した結果,ほとんどの場合に おいて,高さ約1300メートル未満で横長のダイク形状が推定された.このような ダイク形状と,傾斜計連続データ,噴火前に生じる群発地震のサイスミシティは, マグマがまず山頂下でほぼ垂直に上昇し,噴火開始直後に浅部で主に横方向に伝 播することを示唆している.また,このようなマグマの動きは,地表面下1000メー トル以浅に浮力がゼロとなる深さ(Level of neutral buoyancy)が存在するこ とにより説明できる. Yo Fukushima (RCEP, DPRI, Kyoto University) Magma transfer at Piton de la Fournaise volcano from 3D BEM modelling of radar interferometric data Piton de la Fournaise volcano (Reunion Island) entered into an active period in 1998. Synthetic aperture radar interferometry data show complex displacements associated with the first five eruptions that occurred between 1998 and 2000. A method was developed to find realistic geometries and overpressures of dike intrusions from the data. This method is based on a combination of a 3D boundary element method and a Monte Carlo inversion. Most of the estimated dikes are laterally elongated with their height less than about 1300 meters. Such dike geometries as well as preeruption deformations and seismic swarms are consistent with a subvertical magma ascent beneath the summit and a subsequent lateral propagation. This magma movement can be explained by a level of neutral buoyancy of propagating magma less than 1000m beneath the ground.
3月
下記の予定で地震・火山グループ研究会を開催いたします.多数のご来聴を歓 迎いたします. 今回,Mori先生の招聘により防災研ご滞在中のUCLAのJackson 教授に,お話いただきます.Jackson教授は,地球物理データインバージョ ンの基礎理論をはじめ,GPS等による地殻変動の観測・モデル化,あるいはま た地震活動の統計に基づく地震ハザード評価の研究まで,幅広く研究を進められ てきました.今回は地震ハザード評価に欠かせない大地震の大きさの評価に関す る研究成果をお話いただきます.さらには,レイテ島の地すべり災害を捉えた 「だいち」で注目を浴びるInSARについて,この分野の日本の第一人者お一 人,国土地理院の藤原さんにご講演をお願いいたしました. なお,前座で橋本がタイにおけるスマトラ地震にともなう地殻変動のGPS観 測結果を話します. 皆様,ふるってご参加ください. 地震・火山グループ研究会のおしらせ 日時:3月24日(金) 14:00~17:00 場所:防災研究所本館5階 D570 内容: 1)橋本 学(地震予知研究センター) 東南アジアのGPS連続観測によるスマトラ-アンダマン地震の余効変動 +タイの地球物理観測事情 2004年12月26日のスマトラ・アンダマン地震は数千kmにわたる広い領 域に地殻変動をもたらしたが,余効変動も当然大きなものが予想される.タイや インドネシアの東南アジア各国に設置されたGPS連続観測点のデータを解析した 結果,震央から約600kmはなれたタイ・プーケットにおいて,地震後の9ヶ月 の間に18cm程度の西南西方向の変動をはじめ,顕著な変位を得た.簡単なディ スロケーション・モデルを当てはめると,Mw9近いモーメントが解放されたもの と推定される. あわせて,チェンマイなどの地球物理観測施設を訪れたので,当地の現況を紹 介する. 1) Manabu Hashimoto (RCEP) Postseismic deformations following the Sumatra-Andaman earthquake deduced from continous GPS observations in SE Asia + the status quo of the GPS observation in Thailand The 2004 Sumatra-Andaman earthquake caused significant deformations in the area within a epicentral distance of 5,000km and its postseismic deformations are expected large enough to be detected with several geodetic techniques. We analysed continous GPS data from the SE Asian countries such as Thailand and Indonesia and detected about 18cm of WSW-ward displacement at Phuket, Thailand and significant displacements at surrounding regions. By applying a simple dislocation model, we estimated released seismic moment equivalent to about Mw9. I will also introduce status quo of geophysical observations in Thailand. 2)藤原 智(国土地理院測地部宇宙測地課) 宇宙から見る大地の動き:衛星干渉合成開口レーダ(InSAR)による 地殻変動検出 人工衛星に搭載された合成開口レーダ(SAR)による観測で、数十km四方の 範囲の地表の変位を数cmの精度で面的に捉えることができる。これは、地表には何ら 機器を設置する必要はなく、居ながらにして世界中の地殻変動を手に取るように 把握できる画期的な技術である。1992年から1998年の間に運用された「ふよう1 号」(JERS-1)以降は日本のように植生の多い地域で有用なSAR衛星が存在しな かったが、ようやく本年1月にJAXAによって「だいち」(ALOS)が打ち上げられ た。 干渉SAR技術を概説しJERS-1や外国の衛星を使った地殻変動の検出例を示すと ともに、今後のALOSによる地殻変動検出の計画を紹介する。 2) Satoshi Fujiwara (Geographical Survey Institute) Crustal Deformation Observed from Space: Satellite Synthetic Aperture Radar Interferometry SAR (Synthetic Aperture Radar) measures ground geometry and the distance between the satellite and the ground surface with radar waves. In particular, interferometric synthetic aperture radar (InSAR) from space, which calculates the pixel-by-pixel phase differences between two SAR images generated at different times over the same location, has become a powerful tool to monitor deformation of the Earth's surface because the technique has high measurement accuracy (a few centimeters) in a wide area. However, there had been no efficient SAR satellite for heavy vegetated area such as Japan after operation of JERS-1 (from 1992 to 1998). In January 2006, JAXA launched a new satellite ALOS (Advanced Land Observing Satellite), which has L-band SAR sensor. I will introduce the InSAR technique, the results of JERS-1 and other satellites, and plan for detecting crustal deformation by the Geographical Survey Institute. 3)David D. Jackson(Univ. California, Los Angeles) How to stop an earthquake What determines how big an earthquake can grow? Some studies assume that earthquake size is limited by segment boundaries or by the ends of a fault. The seismic gap model assumes that earthquakes will stop when their rupture reaches the edge of a recent fault rupture. After an earthquake it is relatively easy to suggest, retrospectively, why it stopped where it did. However, in seismic hazard estimation we must try to identify the limits to earthquake rupture before the quake. I will describe some often-used models of earthquake size limits based on fault geometry, and ways to test them using historic and future earthquake data. Because the largest earthquakes are so infrequent, we can only estimate the lower-limit to maximum magnitude by direct observations. However, when earthquakes are expected to release a known seismic moment rate, the limits on earthquake size affect the rate of smaller earthquakes, which can be observed much more reliably. I use data for California earthquakes to evaluate some hypotheses about maximum magnitudes. By examining fault maps predating recent earthquakes, I show that southern California earthquakes frequently rupture beyond the faults that could be identified before the earthquakes. Based on these observations, I suggest some modified rules for forecasting earthquake size limits, and their effect on seismic hazard calculations.
第8回(12月)
今月は水曜日の開催です.
日時:2005年12月21日(水) 14時~17時 場所:D570 1.東海・南海地震サイクルのシミュレーション(仮題) 堀 高峰 氏(海洋研究開発機構) 2.Detailed image of precisely relocated earthquakes Dr. Bogdan Enescu (EQH) Abstract: In this talk I will refer to two of my recent studies concerning: a) the early aftershocks of 2004 Mid Niigata earthquake and b) the seismic activity in the Atotsugawa fault region. The goal of the first study is to determine an accurate image of the aftershock activity immediately following the Niigata earthquake. For this purpose, we examined the JMA earthquake catalogue and also the continuous seismograms recorded at six Hi-Net seismic stations located close to the aftershock distribution. By high-pass filtering the seismograms we were able to count aftershocks starting at about 35 sec. after the mainshock. The results show that the c-value, which expresses the saturation of the aftershock rate close to the mainshock, is very small (less than about 3 min.), but has a non-zero value of about 100 sec. that relates to the physics of the aftershock generation process. In the second work, we determined accurately the seismic activity associated with different fault lines in the studied region: the Atotsugawa fault, the Mozumi-Sukenobu fault and the Ushikubi fault. The lower cut-off depth of seismic activity and the creeping section of Atotsugawa fault are clearly revealed. 3.(レシーバー関数のお話の予定ですが,タイトル未定) 平原 和朗 氏(理学研究科)
第7回(11月)
第7回地震・火山研究グループ研究会のご案内を差し上げます.明後日です. 松波孝治先生(地震災害研究部門・強震動研究分野) 上西幸司先生(神戸大学都市安全研究センター助手) 岩田衛先生(神奈川大学工学部建築学科教授) 日時:2005年11月25日(金)14時から17時 場所:宇治キャンパス・化学研究所 共同研究棟1階 大セミナー室(CL- 110号室) 共同研究棟の位置は下記URLのサイトを参考にしてください.本館北隣の建物です. http://www.kuicr.kyoto-u.ac.jp/kaken_map1.html 上西先生は,Aki and RichardsのQuantitative Seismology(定量地震学)の 和訳者です. 岩田先生は,新日本製鐵におられた頃,今ではわが国の超高層ビルの90%以上 が採用している制振ダンパーの開発・普及に従事された経験を持っておられま す. 皆さんのご出席をお待ちしております. このメールは興味のある方に転送していただいて結構です. 吹田啓一郎 ===話題提供内容の説明=== 1)松波孝治(地震災害研究部門・強震動研究分野) Matsunami, K. (Research Division of Earthquake Disaster Prevention , Section of Strong Motion Seismology) 強震時の間隙水圧応答と地盤の変形-破壊(液状化)過程 Pore-water pressure response and the process of deformation to failure in soils during strong ground motion 従来,強震時の液状化危険度予測は,極端に言えば,液状化が起こるか否かの 情報でしかなかった.近年,阪神淡路大震災の液状化被害資料と地面の揺れ (地震動)との関係から,予測値に被害レベルとの関係付けがなされ,飛躍的 に改良された.一方,液状化危険度を何段階かのレベルに分けるために,地盤 の変形から完全破壊(液状化)に至るプロセスを表わす物理量,すなわち,間 隙水圧変化,を予測値として利用出来ないであろうか.これまで,間隙水圧変 化は液状化が生じたかどうかの判断にしか使われていない.しかしながら,我 々の観測から,間隙水圧は地震動に対して極めて敏感に応答することがわかっ てきており,今後,強震動と間隙水圧の同時観測記録が得られれば,地震動に 対する間隙水圧応答,及び,それに対する地盤の非線形化から完全破壊(液状 化)へのプロセスとの対応付けが期待出来る. 次に,危険度予測において地面の揺れが物理的に正しく評価されているのだろ うか.すなわち,地表面の揺れは,震源(断層の破壊過程),地震波の伝播経 路,そして地表面近傍の複雑な地質構造や地形等の影響を受けているにも拘わ らず,地表面の揺れをあまりにも単純化しているように思われる.従って,従 来の方法について検討を要すると考える. 上述の観点から,強震動の生成,伝播特性を十分考慮し,地震動に対する間隙 水圧応答を地盤の変形・破壊過程の指標とする液状化危険度予測の可能性につ いて議論したい. 2)上西幸司(神戸大学都市安全研究センター・助手) Uenishi, K. (Research Center for Urban Safety and Security, Kobe University) すべり弱化構成則に従う断層面の力学的不安定現象について On the mechanical instability of a slip-weakening fault plane 地震災害の多くは断層面が力学的に不安定となるために発生すると考えられて いるが,断層面の力学的性質そのものについては未だ不明な点が見受けられ る.本研究では,不均一に分布する外部応力下にある平面状断層の力学的安定 性について準静的な力の平衡ならびにエネルギーバランスを考慮することによ り検討する.二次元あるいは三次元線形弾性体中に存在する断層面はすべり弱 化構成則に従うものとし,作用する外部応力はあるピークをもち,時間ととも に増大していくものと仮定する.断層面上では時間の経過とともにすべり領域 が発達し,その大きさがある臨界値に達すると断層を含む系が不安定となる. すべり弱化則が線形の場合,臨界すべり領域の大きさは周囲の剛性とすべり弱 化率のみに依存し,厳密な外部応力分布にはよらないことを理論的に示す.最 後にこの結果を室内実験および地震観測から得られるデータと比較する. Many seismic hazards are considered to be caused by the mechanical instability of fault planes, but their mechanical properties have not been fully clarified. In this study, by analyzing the quasi-static equilibrium of forces and energy balance, we consider the nucleation of instability on a planar fault subjected to a heterogeneous loading stress. The fault plane, located either in a 2D- or in a 3D-linear elastic body, is supposed to follow slip-weakening relations, and the loading stress is assumed to be locally peaked and gradually increase in time. On the fault plane, a slipping region develops with time and the fault system becomes unstable when the size of the expanding slipping region reaches a critical value. If a linear slip-weakening relation holds, it can be proven analytically that the critical size of the slipping region depends only on the surrounding shear modulus and the slip-weakening rate and it is independent of the shape of the loading stress distribution. Finally, the results are compared with laboratory-derived and earthquake-inferred data. 3)岩田衛(神奈川大学工学部建築学科・教授) Iwata, M. (Professor, Department of Architecture and Building Engineering, Kanagawa University) 時代に生きる-ある建築構造技術者の場合 Live in line with the times --- a half life of an architectural structural engineer 大空間構造から損傷制御構造そして地球環境建築へ関わった、ある建築構造技 術者(私)の半生を語る。主観的にならざるをえない話題だが、できるだけ客 観的に見つめてみる。自分としては個性的に行動してきたつもりが、改めて見 つめ直してみると、時代の流れの中で行動してきたことが分かる。
第6回(10月)
第6回地震・火山研究グループ研究会のご案内を差し上げます. 今回の内容は以下の3名の方の話題提供をいただきます. 田中仁史先生(地震災害研究部門・構造物震害研究分野) 吹田啓一郎先生(地震防災研究部門・耐震機構研究分野) 岡崎健二先生(政策研究大学院大学政策研究科教授) 内容の詳細は末尾をご参照ください. 日時:2005年10月28日(金)14時から17時 場所:防災研究所本館D570室 皆さんのご出席をお待ちしております. 岩田知孝 ===話題提供内容の説明=== ○田中仁史(地震災害研究部門・構造物震害研究分野) Tanaka, H. Jin (Research Division of Earthquake Disaster Prevention , Section of Structural Dynamics) 鉄筋コンクリート構造物の耐震設計におけるISO ISO requirements for seismic design of reinforced concrete structures 各国が国内規格や基準を制定する場合、ISO規格・基準が既に存在していると、これ に整合させることがWTO/TBT(貿易の技術的障害に関する協定)によって義務づけら れており、日本を含め多くの国がこれを批准している。コンクリート関係のISO規格 ・基準は、ISO/TC71(国際標準化機構第71専門委員会:コンクリート、鉄筋コンクリ ートおよびプレストレストコンクリート)で原案が作成されるが、日本では、日本コ ンクリート工学協会内に設置されているISO/TC71対応国内委員会が中心となり独立行 政法人・建築研究所、日本建築センター、日本建築総合試験所など関係機関の意見を 集約、ISO規格・基準の採否を検討してきた。 第11回のISO/TC71の総会(2003年7月23日、オーストラリアで開催)2)においては、 SC4「コンクリート構造の性能規定」分科委員会の報告に基づき、ISO/FDIS 19338規 格案(構造コンクリートに関する設計基準における性能及び評価のための要求事項: Performance and assessment requirements for design standards on structural concrete)について審議され、その後、ISO/TC71に登録された各国代表機関の投票を 経て採用されISO 19338となった。規定文そのものから言えば、日本国の建築基準 法、同施行令、告示などはISO 19338を満足していないのが日本の苦しいところであ る。 ○吹田啓一郎(地震防災研究部門・耐震機構研究分野) Keiichiro Suita(Research Division of Earthquake Hazards, Earthquake Resistant Structures) 実大載荷実験に見る阪神大震災後の鉄骨接合部研究 Research on steel connections after Kobe earthquake achieved by full-scale loading tests 高度成長期から急速に普及し,これまで目立った地震被害を受けてこなかった 鉄骨 造の建物が,阪神大震災で溶接接合部に多くの亀裂や破断を被る損傷を受 けたこと から,その耐震性の再確認を迫られ,原因究明と破断防止のための研 究が続けられ た.早期破断を防ぐのに効果的な接合詳細の提案,溶接部の応力 負担を軽減する接 合部設計,耐震性能を確保するための接合部要求性能の評 価,それを満足する保有 性能を確保するための接合部設計法の提案,などの成 果が挙げられてきた経緯を, 防災研究所で実施された実大載荷実験を通じて紹 介する. ○岡崎健二(政策研究大学院大学政策研究科教授) Kenji OKAZAKI, Prof., Department of Policy Studies, National Graduate Institute for Policy Studies(GRIPS) 地域社会に根ざした地震防災とその促進策 Community-based Disaster Management against earthquakes and its promotion 地震災害による犠牲者の大半は、住宅の損壊により命を失う。住宅が破壊されれば、 生活の場が失われる。肉親を失った人の精神的なダメージは、容易に回復しない。住 宅の倒壊は、避難活動や消防・救急活動を阻害し、災害を拡大させる。被害を受けた インフラは復旧できるが、失われた命や破壊された生活は二度と戻らない。従って、 地震被害を軽減するためには、脆弱な住宅を耐震改修などにより安全にして、人々の 命と生活を守ることが、何よりも重要な課題となっている。 住宅が破壊されれば、国民の命や地域の活動が失われ、政府は仮設住宅建設などの 膨大な支出を強いられることから、政府は積極的に住宅の耐震改修を進める必要があ る。しかしながら、住宅が個人資産であるため、多くの国で既存住宅の耐震改修が進 んでいない。個人レベルでの耐震改修に係る意思決定では、リスクに係る認識が不十 分であること、耐震改修という現実の損失より将来の不確実なリスクを選好する心理 的傾向が強いことがその理由としてあげられる。 耐震改修の動機づけのためには、住宅が地震で全壊すれば、命や生活などのかけがえ のないものを失うという個人の個別リスクを理解することが効果的である。このた め、地震リスクの理解と耐震改修の促進のために、専門家がより多くの個人に働きか け、適切なリスクコミュニケーションを通じてともに学び取り組むような、地域社会 に根ざした防災共育を推進することが求められる。途上国でのこのような活動のいく つかを紹介する。また耐震改修をした人は、現時点で何らかの利得を得、耐震改修を しない人は、現時点で何らかの負担を求められるような制度も効果的である。 In case of earthquakes, most of the victims are killed by collapse of their own houses. Governments are forced to invest a huge amount of financial resources for aid of the evacuees, demolition of debris, construction of temporary houses, which are mostly attributed to the collapse of the houses. Seismic retrofitting of existing vulnerable houses is therefore indispensable to reduce the seismic damage, particularly loss of lives. Through analysis of choice making with economics and psychology, it is reasonable for house owners not to invest for retrofitting as people tend to seek future risk rather than the current loss, which is the cost for retrofitting, and tend to discount the future risk. In order to promote retrofitting, it is proposed to promote better understanding of individual risk through “co-learning of disaster management” with appropriate risk communication at community level. Some successful community based disaster management activities are introduced. A new scheme is also proposed, where the owners of a safe house would pay less while the owners of an unsafe house would pay more.
第5回(9月)
下記の要領で,標記研究会を開催いたします.暑さもやわらぎ やっと落ち着いてさまざまな議論ができる季節になりました。 多数(とくに学生・院生諸君)のご来聴をお願いします。 いつもとちがって、火曜日に開催される点にご注意ください。
日時;2005年9月27日(火)14:00~17:00 場所:防災研究所研究本棟5階 D570 1.14:00~14:50 パプアニューギニア、ニューブリテン沈み込み帯における大地震のアスペリティの 非固有な破壊の振る舞い Non-characteristic rupture behavior of the asperities of overlapping large earthquakes along the New Britain Trench, Papua New Guinea 京都大学防災研究所 地震災害部門 朴 舜千(Sun-Cheon Park) An asperity is a relatively large high-stress drop zones on the fault plane of an earthquake and releases large seismic moment during the rupture of large earthquakes. Among the properties of asperities, it is poorly known whether or not an asperity ruptures similarly in repeating earthquakes, although some previous research has suggested that the size and location of an asperity remain the same over repeated earthquakes (e.g. Yamanaka and Kikuchi, 2005). In order to investigate whether or not asperities of large earthquakes along the New Britain Trench, Papua New Guinea rupture similarly, we derived slip distributions of five large earthquakes along the New Britain Trench in 1971, 1995 and 2000, which were assumed to rupture the overlapping regions of the subduction zone. We obtained slip distributions by Pdiff waveform inversions for the two 1971 earthquakes (Mw 8.0 and 8.1) and teleseismic P wave inversions for the 1995 (Mw 7.9) and 2000 (Mw 7.5 and 7.4) events. We then compared the slip zones and show the asperity distribution. The asperities did not show significant overlap although the slip zones suggest that the same portions of the subduction boundary ruptured in several of the earthquakes. The hypocenters can be located in the areas of the asperities or far from them. Also the sizes of asperities seem to vary. These facts support the idea that asperity is non-characteristic from earthquake to earthquake. 2.15:00~15:50 地震動予測のための動的破壊シミュレーション Dynamic rupture simulations for ground motion prediction (独)産業技術総合研究所 活断層研究センター 加瀬祐子 (KASE Yuko) 地震動予測に用いる震源モデルを動的破壊シミュレーションで作成する手法に ついて説明する.はじめに,活断層調査などから得られる,断層の走向に沿った 平均変位速度の分布から,不均質な応力分布を見積もり,統計的な処理により, 短波長の不均質を加える.得られた応力分布を用いて,自発的な破壊伝播過程 を数値計算し,それを震源モデルとして地震動を計算する.セミナーでは,大 阪平野直下の活断層である上町断層系を例として,破壊過程と地震動の予測結 果を示す.また,現状での動的震源モデルの問題点のひとつに,断層幾何形状 の取り扱いがあげられる.この解決に向けて,屈曲のある鉛直な断層上での自 発的な破壊過程の計算を試みた結果を紹介する. We model realistic rupture scenarios for ground motion prediction, using dynamic rupture simulations. First, heterogeneous slip distribution on a fault is estimated from distribution of average geological uplift rate along fault strike. We add short-wavelength component of heterogeneity statistically, and then convert it to static stress field. Spontaneous rupture processes are simulated by 3-D finite difference method, and then used as rupture scenarios for ground motion prediction. We show rupture processes on the Uemachi fault system, and ground motion distribution on Osaka sedimentary basin. We also show spontaneous rupture simulations on a vertical fault with a bend, which give more realistic rupture scenarios. 3.16:00~16:50 冷たい海底拡大系 Cold "avolcanic" spreading at mid-ocean ridges 東京大学海洋研究所 沖野卿子(Kyoko Okino) 中央海嶺系は大洋底を55,000kmにわたって延びる海底火山列で、 地球上の火成活動の約9割が起こっている場所である。ここでの海底拡 大速度は年間数ミリ(例えば南西インド洋海嶺)から年間170mm (東太平洋海膨)と多様であり、中央海嶺の地形やそこで生産される海 洋性地殻・リソスフェアの特徴は概ね拡大速度によって決まると考えら れている。すなわち、高速拡大系では海嶺軸はゆるやかな高まりをな し、地殻の構造は均質で古典的なオフィオライトモデルによく合ってい る。一方、低速拡大系では、海嶺軸では軸谷が発達し、地殻は複数の貫 入岩体で特徴づけられている。近年、低速の拡大系においては、発達し た正断層(デタッチメント断層)とその断層に沿って深部地殻やマント ル物質が海底に露出した構造(海洋コアコンプレックス)が数多く報告 されている。このデタッチメント断層は、メルトの枯渇し た、”avolcanic"な(=冷たいマントルを示唆?)条件下の海底 拡大プロセスにおいて、きわめて重要な役割を担っているらしい。海洋 コアコンプレックスはこれまで大半が低速拡大系の海嶺ートランス フォーム断層交点で見つかっているが、私達はあえて中速拡大系におけ るデタッチメント、具体的にはオーストラリア南極不連続(南東インド 洋海嶺の一部)やパレスベラリフト(フィリピン海の背弧拡大系)な ど、を中心に拡大過程とリソスフェアの構造の研究を進めている。古典 的な”拡大速度依存”の概念では十分にメルトが供給されているであろ う中速拡大系において海洋コアコンプレックスが存在するということ が、拡大プロセスを決定する真のパラメタは拡大速度そのものではなく 拡大速度とメルト供給のバランスであり、このバランスが海嶺の配置や 熱構造、マントルの組成などを反映しているであろうことを示唆してい る。 The global mid-ocean ridge system extends about 55,000 km and is responsible for ~90% earth's volcanic activity. The spreading rate ranges from a few mm/yr (ex. southwest Indian Ridge) to ~170 mm/yr (East Pacific Rise). Ridge morphology and oceanic crust/lithosphere characteristics can be classified based on spreading rate in general: fast spreading ridges show low and gentle axial highs and uniform crust with classic ophiolite stratigraphy, in contrast, slow spreading ridges show axial rift valleys and crust built up by multi, small intrusions. Recent studies show that an important mode of seafloor spreading at slow spreading ridges is asymmetric extension along long-lived, normal detachment faults, which may expose the lower crust and/or upper mantle (oceanic core complex) . Oceanic detachments play akey roll in the spreadig process under melt- starved, "avolcanic" ( =~ cold mantle?) conditions. Most of these oceanic core complexes have been discovered at ridge-transform interactions at slow spreading ridges. Our group focuses on the oceanic detachments at intermediate spreading ridges: the Australian- Antarctic Discordant (South East Indian Ridge), Parece Vela Rift (Philippine Sea backarc) etc. The detachments at intermediate spreading rdiges indicate that the ridge morphology and crust/ lithoshpere characteristics are not strictly dependent on spreading rate, but are likely dependent on the balance between separation rate and melt suply reflecting ridge geometry, mantle composition, thermal structure, and etc. なお、研究会の終了後、いつものように326号室で懇親会をひらきます。
第4回(7月)
下記の要領で,標記研究会を開催いたします.季節がらとても暑いですが、 多数(とくに学生・院生諸君)のご来聴をお願いします。
第3回地震研究グループ研究会 日時;2005年7月29日(金)14:00~17:00 場所:防災研究所研究本棟5階 D570 1.14:00~14:50 「キネマティックGPS測位を用いた時定数の短い変動の検出手法の開発」 京都大学防災研究所COE研究員 佐藤一敏(Kazutoshi Sato) われわれは地震発生に伴う時定数の短い変動をGPSの見地から見ることが できないかを考え,検出手法の開発に取り組んできた.当初は巨大地震発生前に 見られるような前駆的異常地殻変動に着目し,キネマティックGPS測位を応用す ることによって,誤差要因を軽減し精度を追求してきた.その結果,変動を±1 cmの精度で追跡することが可能であることがわかった.このことを応用して, 実際の地震時(2003年十勝沖地震・2004年新潟県中越地震)に適用してみたが, 残念ながら前駆的異常地殻変動を捉えることはできなかった.ここで視点を変え て,これらの地震に共通するような連続地震(群発地震・余震活動)について, 個々の地震に対して変位量を同定し,測地学的立場から地震断層モデルを構築し てみようと考えた.今回は,2003年十勝沖地震・2004年新潟県中越地震に加えて, 2004年紀伊半島南東沖地震についても議論する. We grappled with the development of a monitoring technique of anomalous crustal deformations using GPS method. We paid attention to the anomalous crustal deformation before the earthquake occurrence at first. It is kinematic GPS positioning that fulfills our requirement. We were reduced some error factors by using this technique, and we improved positioning accuracy. As that result, the positioning accuracy is within the range of ± 1 cm. We verified effectiveness of our method in the actual earthquakes. Though a pre-slip could not be detected for the 2003 Tokachi-oki earthquake and the 2004 Niigata Chuetsu earthquakes, we succeeded in the separation of displacements of the mainshock and aftershocks which occurred consecutively in a short time. Then, we try to make a fault models about each earthquake. I will present the results of two upper earthquakes and the 2004 SE-Kii peninsula earthquake at this time. 2.15:00~15:50 「ACROSS(精密制御定常震源システム)を用いた地殻弾性の時間変化検出」 "Temporal variation in the elastic properties in crust detected with ACROSS" 名古屋大学環境学研究科 生田領野(Ryoya Ikuta) 我々は地殻構造の時間変化監視ツールとしてACROSS(精密制御定常信号システム)を 開発中である.その実用化のためのテストケースとして,野島断層の観察と同時に ACROSSの性能評価を行なった.野島断層の南端部(野島サイト)に最初に建造された ACROSSを用いて地表と地下1700mの間での地震波速度の時間変化を15ヶ月間にわたり 計測し続けた.結果,15ヶ月間にわたる地下の速度構造の変化をモニターし, ACROSS震源装置が長期,連続での運転の点で充分な性能を備えていることを明らかにできた. さらに遠方で起こった地震に伴い弾性波速度の異方性変動が検出された. 人工震源装置を用いて実地で異方性構造の時間変化が検出できた例は初めてであり, ACROSSシステムによる計測が地殻構造の解明,時間変化監視の点で新しい有効な アプローチとなることを示した.またその結果は断層破砕帯における岩石の 異方性物性にも新たな解釈を与えるものとなりうることが示唆される. さらに時間がありましたら,私がこの一年間PDとして参加している海底地殻変動 (ボス:安藤先生)についても宣伝させていただければと思います. We are developing a geophysical exploration system named ACROSS (stands for Accurately Controlled Routinely Operated Signal System). The purposes of my study in this project are at first, detection of temporal variation of travel time in seismic wave, and secondly, evaluation of ACROSS system. We carried out a long-term experiment using the ACROSS sources deployed near Nojima fault. We continuously measured temporal variation in travel- time of seismic wave generated by ACROSS sources and detected by seismometers deployed at the bottom of 800m and 1700m deep boreholes beneath the sources. In this experiment lasted for 15 months, we evaluated the performance of ACROSS to carry out long-term measurement. We detected temporal variations of travel-time corresponding to atmospheric temperature and rainfalls. We also detected variation in shear wave anisotropy associated with middle range earthquakes. The result suggests that the ACROSS is available as a tool to reveal the crustal structure and monitor the state of shallow crust. 3.16:00~16:50 GPS連続観測から推定した2003年十勝沖地震の地震時破壊と余効すべり "Coseismic rupture and afterslip history of the 2003 Tokachi-oki earthquake inferred from continuous GPS data" 東京大学地震研究所 宮崎真一(Shinichi Miyazaki) 2003年十勝沖地震の地震時破壊過程と30日間の余効すべりをGPSデータから 推定した。地震時破壊過程の推定には 1-Hz GPS を利用した。北海道および 北東北から30点程度を選び出し、キネマティック解析によって1秒ごとの 観測点の位置を推定した。得られた結果は強震計の積分結果と整合的であるが、 GPSの方は永久変位もよく求まっている。この結果に対して multitime-window inversion を適用し、破壊過程を推定した。グリーン関数には Zhu and Rivera による Frequency-Wavenumber (FK) を利用した。得られた結果は強震計や 遠地データによる結果とおおむね一致しているが、細かい分布に違いはある。 次に地震後30日間の日々のGPSデータに対して、Segall and Matthews による時間依存インバージョンを適用し、地震後30日間の余効すべりの時 空間分布を推定した。余効すべりと破壊領域は空間的に相補的である。えら れたすべり分布から専断応力の変化を計算し、そのすべり速度の対数値に 対する依存性を調べたところ、ほぼ直線的に減衰していた。これが速度・ 状態摩擦構成則の定常状態に対応すると仮定し、さらに静水圧を仮定すると、 余効すべり領域の a-b の値がオーダーとして 10^(-3) と求まった。 We estimated the coseismic rupture and the afterslip history for the 2003 Tokachi-oki earthquake from GPS data. First we used 1-Hz GPS to model the rupture. The GPS "waveform" is consistent with the integrated strong motion data. In addition, GPS data show DC component clearly, which has been difficult to obtain from strong motion data. We employ multiple time-window inversion to model the rupture process. We used Frequency-Wavenumber (FK) code for Green function calculation. The inferred slip is consistent with previous studies. Next we inverted daily GPS data for 30 days from the main-shock of the earthquake. We employ time-dependent inversion and estimated afterslip history. Then we calculated the shear stress change due to the afterslip. The stress-log(slip-rate) paths shows quasi-linear relation with positive slopes, suggesting steady-state velocity strengthening friction. Assuming hydrostatic fluid pressure, the frictional parameter "a-b" is in the order of 10^(-3).
第3回(6月)
下記の要領で,標記研究会を開催いたします.多数のご来聴を歓迎いたします.
第3回地震研究グループ研究会 日時;2005年6月24日(金)14:00~17:00 場所:防災研究所研究本棟5階 D570 14:00~15:00 「私の地震学の研究:これまでとこれから」 "My researches on seismology over the past years and in the future" 地震防災研究部門 宮澤理稔(Masatoshi Miyazawa) 今年度4月より、新部門の地震防災研究部門に採用されましたので、自己紹介としま して、私が行ってきた地震学の研究や現在取り組んでいる研究を、アラカルト形式で 紹介します。これまでに主として、地震波走時トモグラフィの手法に関する研究、地 震波散乱問題に関する研究、地震や火山活動の誘発の研究、地震ハザードに関する研 究等を行ってきました。スマトラ地震による地震の誘発についても研究を行っている ので、この結果も併せて紹介します。 15:00~15:30 「スマトラ地震の自由振動から何が言えそうか?」 地震予知研究センター 川崎一朗(Ichiro Kawasaki) (休憩) 15:40~16:40 「遠地実体波解析による2004年スマトラ巨大地震」 東京大学地震研究所 山中佳子(Yoshiko Yamanaka) 遠地実体波を用いて2004年スマトラ地震の解析を行っている.これまでの手法で は太刀打ちできず多少手法に手を加えた.まだ解析途中で最終解には至っていないが, 実体波でみても断層長は1200kmにおよぶこと,ニコバル諸島の海溝付近では 200秒にもわたるゆっくりとした動きがあったことがわかった.また,破壊伝播が 遅かったという解析結果もあるが,実体波でみる限り意外と破壊伝播は早かったと思 われる.が,W-phaseの問題など,まだ未解決の問題も多々ある.解析から何がわかっ て,何が問題なのか,この地震はどういう地震だったのか?について議論する予定.
第2回(5月)
下記の要領で,標記研究会を開催いたします.多数のご来聴を歓迎いたします. 今回は,「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)」による研究の報告です. なお,( )内のスピーカー含め,すべて予定です.都合により変更もありえます.
第2回地震研究グループ研究会 日時;2005年5月27日(金)14:00~17:00 場所:防災研究所研究本棟5階 D570 14:00~14:20 西南日本内陸における歪・応力蓄積様式の解明(大志万) 14:20~14:30 次の南海地震の発生予測の高度化(大志万) 14:30~14:45 次の南海地震に向けた応力蓄積過程の解明(柳谷) 14:45~14:50 キネマティックGPSによる時間~日周期の変動の検出手法の開発(橋本) 14:50~15:00 内陸歪集中帯の構造とダイナミクス(伊藤) 15:00~15:10 地殻活動モニタリングシステムの高度化(伊藤) 15:10~15:30 断層における注水実験および応力状態の時間変化(大志万) 15:30~15:50 断層面上の不均一な応力・強度分布の解明(Mori) 15:50~16:00 (休憩) 16:00~16:20 スロー・スリップ・イベントのマッピング(森井) 16:20~16:40 強震動予測に関する研究(岩田) 16:40~17:00 西南日本の低周波イベントの発生環境と特性の研究(大見)
第1回(4月)
今回は,2部門・1センターからそれぞれ1名ずつ,それぞれのフィールドでホットな話題をご提供いただくこととなりました.多数の聴講を歓迎いたします.
第1回地震研究グループ研究会(仮称) 日時: 4月22日(金)14時~16時10分 場所: 防災研究所本館5階 D570 (14:00~14:40) 地震防災研究部門 中島正愛 建築耐震設計の研究と実践 Research and Practice of Seismic Design for Building Structures 建築物耐震設計では、要求性能と保有性能という二つの指標を用い、保有性能が 要求性能を下回らないことを設計の基本要件としている。建物の要求性能を知る ための地震応答解析、またそれを複雑な解析を用いずに推定しようとする等価静 的解析、建物の保有性能を定量化するための詳細な構造解析、またそれを簡便に 担保するための構造規定を俎上にあげ、基礎研究と設計実践の調和と乖離を解説 する。 (14:40~15:20) 地震災害研究部門 田村修次 波の到来方向に基づく表層地盤の不均一性評価 Evaluation of non-uniformity of subsurface layers based on arrival direction of wave 現在、宅地の地盤調査法としてスウェーデン式サウンディング試験が広く行われ ている。この試験は、一般的に敷地の3~5箇所で行われているが、必ずしも局所 的な軟弱地盤を把握できるとは限らない。そのため局所的な軟弱地盤、産廃埋土 などが存在すると、その把握ができずに建物の不同沈下等の問題が起る可能性が ある。そこで人工的に加振をし、その波の到来方向に基づき、簡便に局所的な表 層地盤の不均一性を評価する方法を提案した。その妥当性を検討したところ、加 振源と観測アレイの間に軟弱地盤が存在する場合、波の到来方向が一定せず、ば らつくことが分かった。また、到来方向のばらつく波長から、軟弱地盤の深さを 推測できる可能を示した。 (15:20~15:30 休憩) (15:30~16:10) 地震予知研究センター 飯尾能久 内陸大地震の断層への応力蓄積過程と断層の強度 Stress build-up process of intraplate earthquake faults and their strength 内陸大地震の発生予測の実現のための重要な課題は,断層への応力蓄積過程,およ び,断層とその周辺の強度を明らかにすることであると考えられる.近年発生し た内陸大地震は,そのための重要なデータを提供している.新潟県中越地震,鳥 取県西部地震などを例にとって,現在分かりつつあることと,および,今後の課 題を述べる.
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