更新日:2021.04.08
Updated: 2021.04.08
今週のうなぎセミナーについてお知らせいたします。
Here is information of the Unagi-seminar(January 6).
************** Seminar on Seismology IV B, D /地震学ゼミナールIV B, D (Unagi Seminar) **************
科目:地震学ゼミナールIV B, D / Seminar on Seismology IV B, D(修士・博士)
日時:2022年 1月 6日 (木) 14:00~
場所:京都大学 防災研究所 本館E-232D または オンライン(Zoom)
Date and Time:2022-01-06, 14:00~
Place:Uji Campus Main Building E232D or Zoom (Hybrid)
###-------------- Presentation Information 1 --------------###
Speaker (発表者):野末 陽平 (Yohei NOZUE)
Title (題名):
GNSSデータから連続的な歪み速度場の推定:基底関数展開におけるボックスカー関数と3次B-スプライン関数の比較
Abstract (要旨):
GNSS観測などで得られた空間的に離散的な速度データから連続的な変形場を推定することは、測地学的に重要な問題である。1つの有力な方法として、連続的なモデル変動場を基底関数展開し、その展開係数をインバージョン解析により推定する方法がある[例えばYabuki & Matsu'ura (1992)]。その際、(1)基底関数にどの関数を用いるか, (2)どのような先験情報を目的関数に課すかにおいて任意性があり、それらに応じて変位速度場や歪み速度場の推定結果がどれだけ異なるかという点は疑問となるところである。
基底関数にはボックスカー関数や3次B-スプライン関数などがよく用いられる。前者は導入が容易である反面、滑らかな空間変化が期待される変位速度場の推定にはやや不向きであると考えられる。一方、後者は初期の計算に煩雑さを伴うが、区分的に定義された3次関数であるため変位速度場の推定にはより適切であると考えられる。そこで本研究では、基底関数としてボックスカー関数と3次B-スプライン関数をそれぞれ使用し、基底関数の間隔Lを系統的に変えて両者による推定結果を定量的に比較することを試みた。なお、先験情報として、変位速度場が空間的に滑らかであることを課した[Okazaki et al. (2021)]。
比較の結果、間隔Lの3次B-スプライン関数を基底関数に用いた場合、間隔0.4Lのボックスカー関数を用いた場合と比べて性能が同等以上であることが分かった。逆行列の計算コストはモデルパラメータ数の3乗に比例することを踏まえると、2次元空間での計算コストは基底関数の間隔の6乗に反比例する。従って、3次B-スプライン関数を用いた場合には、ボックスカー関数と比較して約1/250の計算コストにより同等以上の性能が得られることとなり、前者が優れた性質を持つことが確かめられた。
なお、上記の研究では先験情報として変位速度場の空間平滑性を課したが、一部の活断層周辺に歪みが局在していることは大いにあり得ることである。そこで、変位速度場の平滑性に加えてスパース性を先験情報として用いた、変位速度場や歪み速度場の解析も今後行う予定である。その研究の概略についても紹介する。
###--------------------------------------------------------###
###-------------- Presentation Information 2 --------------###
Speaker (発表者):岡田悠太郎(Yutaro OKADA)
Title (題名):
アラスカ沈み込み帯における短期的スロースリップイベントの系統的検出
(Systematic-detection of short-term slow slip events in the Alaska subduction zone)
Abstract (要旨):
北アメリカプレートの下に太平洋プレートとヤクタットマイクロプレートが沈み込むアラスカ沈み込み帯では,先行研究によって複数の長期的スロースリップイベント(L-SSE)が発生したことが報告されている(Ohta et al., 2006; Wei et al., 2012).一方で短期的スロースリップイベント(S-SSE)が定常的に発生している可能性は示唆されているものの,個別にモデル化されたイベントは1例のみである(Rousset et al., 2019).そこで本研究では,系統的検出を通してアラスカ沈み込み帯におけるS-SSEの活動様式を解明することを試みる.
本研究ではアラスカ州に設置されたGNSS観測局86局の,2007年4月から2021年3月の期間の日座標値を用いてS-SSEの検出を行った.検出にはS-SSE系統的検出手法(Okada et al., under review)を改良して使用した.その結果,本研究では14年間で42個のS-SSEを検出することに成功した.S-SSEのほとんどは1964年アラスカ地震のすべり域の深部延長に相当する深さ40 km付近に分布する.検出されたイベントの規模はMw 6.2 - 6.7,継続期間は1 - 40日間であった.また検出されたイベントの一部はテクトニック微動(Wech, 2016)と時空間的に対応していた.セミナーではこれらの解析結果に加えて,S-SSEとL-SSEやヤクタットマイクロプレートの間の関係について報告する.
###--------------------------------------------------------###
今週のうなぎセミナーについてお知らせいたします。
Here is information of the Unagi-seminar(January 6).
************** Seminar on Seismology IV B, D /地震学ゼミナールIV B, D (Unagi Seminar) **************
科目:地震学ゼミナールIV B, D / Seminar on Seismology IV B, D(修士・博士)
日時:2022年 1月 6日 (木) 14:00~
場所:京都大学 防災研究所 本館E-232D または オンライン(Zoom)
Date and Time:2022-01-06, 14:00~
Place:Uji Campus Main Building E232D or Zoom (Hybrid)
###-------------- Presentation Information 1 --------------###
Speaker (発表者):野末 陽平 (Yohei NOZUE)
Title (題名):
GNSSデータから連続的な歪み速度場の推定:基底関数展開におけるボックスカー関数と3次B-スプライン関数の比較
Abstract (要旨):
GNSS観測などで得られた空間的に離散的な速度データから連続的な変形場を推定することは、測地学的に重要な問題である。1つの有力な方法として、連続的なモデル変動場を基底関数展開し、その展開係数をインバージョン解析により推定する方法がある[例えばYabuki & Matsu'ura (1992)]。その際、(1)基底関数にどの関数を用いるか, (2)どのような先験情報を目的関数に課すかにおいて任意性があり、それらに応じて変位速度場や歪み速度場の推定結果がどれだけ異なるかという点は疑問となるところである。
基底関数にはボックスカー関数や3次B-スプライン関数などがよく用いられる。前者は導入が容易である反面、滑らかな空間変化が期待される変位速度場の推定にはやや不向きであると考えられる。一方、後者は初期の計算に煩雑さを伴うが、区分的に定義された3次関数であるため変位速度場の推定にはより適切であると考えられる。そこで本研究では、基底関数としてボックスカー関数と3次B-スプライン関数をそれぞれ使用し、基底関数の間隔Lを系統的に変えて両者による推定結果を定量的に比較することを試みた。なお、先験情報として、変位速度場が空間的に滑らかであることを課した[Okazaki et al. (2021)]。
比較の結果、間隔Lの3次B-スプライン関数を基底関数に用いた場合、間隔0.4Lのボックスカー関数を用いた場合と比べて性能が同等以上であることが分かった。逆行列の計算コストはモデルパラメータ数の3乗に比例することを踏まえると、2次元空間での計算コストは基底関数の間隔の6乗に反比例する。従って、3次B-スプライン関数を用いた場合には、ボックスカー関数と比較して約1/250の計算コストにより同等以上の性能が得られることとなり、前者が優れた性質を持つことが確かめられた。
なお、上記の研究では先験情報として変位速度場の空間平滑性を課したが、一部の活断層周辺に歪みが局在していることは大いにあり得ることである。そこで、変位速度場の平滑性に加えてスパース性を先験情報として用いた、変位速度場や歪み速度場の解析も今後行う予定である。その研究の概略についても紹介する。
###--------------------------------------------------------###
###-------------- Presentation Information 2 --------------###
Speaker (発表者):岡田悠太郎(Yutaro OKADA)
Title (題名):
アラスカ沈み込み帯における短期的スロースリップイベントの系統的検出
(Systematic-detection of short-term slow slip events in the Alaska subduction zone)
Abstract (要旨):
北アメリカプレートの下に太平洋プレートとヤクタットマイクロプレートが沈み込むアラスカ沈み込み帯では,先行研究によって複数の長期的スロースリップイベント(L-SSE)が発生したことが報告されている(Ohta et al., 2006; Wei et al., 2012).一方で短期的スロースリップイベント(S-SSE)が定常的に発生している可能性は示唆されているものの,個別にモデル化されたイベントは1例のみである(Rousset et al., 2019).そこで本研究では,系統的検出を通してアラスカ沈み込み帯におけるS-SSEの活動様式を解明することを試みる.
本研究ではアラスカ州に設置されたGNSS観測局86局の,2007年4月から2021年3月の期間の日座標値を用いてS-SSEの検出を行った.検出にはS-SSE系統的検出手法(Okada et al., under review)を改良して使用した.その結果,本研究では14年間で42個のS-SSEを検出することに成功した.S-SSEのほとんどは1964年アラスカ地震のすべり域の深部延長に相当する深さ40 km付近に分布する.検出されたイベントの規模はMw 6.2 - 6.7,継続期間は1 - 40日間であった.また検出されたイベントの一部はテクトニック微動(Wech, 2016)と時空間的に対応していた.セミナーではこれらの解析結果に加えて,S-SSEとL-SSEやヤクタットマイクロプレートの間の関係について報告する.
###--------------------------------------------------------###
© Research Center for Earthquake Hazards.
© Research Center for Earthquake Hazards.