更新日:2022.04.13
Updated: 2022.04.13
今週のうなぎセミナーについてお知らせいたします。
博士課程の発表者との兼ね合いで開始時間が変更となりました。ご注意ください。
Here is information of the Unagi-seminar(November, 10).
Note that this week we are going to start the meeting from 13.30 because there are two PhD candidates.
************** Seminar on Seismology IV B, D /地震学ゼミナールIV B, D (Unagi Seminar) **************
科目:地震学ゼミナールIV B, D / Seminar on Seismology IV B, D(修士・博士)
日時:2022年 11月 10日 (木) 13:30~
場所:京都大学 防災研究所 本館E-232D または オンライン(Zoom)
Date and Time:2022-11-10, 13:30~
Place:Uji Campus Main Building E232D or Zoom (Hybrid)
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Presenter (発表者) 1: Toshio Tanaka (田中俊雄)
Title (題目):
稠密地震観測によって推定された近畿地方中北部の活断層近傍における応力場
Stress field near the active faults in the north-central Kinki district investigated by dense seismic observation
Abstract (要旨):
近畿地方の中北部には有馬-高槻断層帯、三峠・京都西山断層帯、花折断層帯、琵琶湖西岸断層帯などの活断層が分布しており、日本で最も活断層が集中している地域の一つである。地震の活動性を理解するうえで、応力場についての理解は極めて重要である。西南日本におけるσ 1 の方位は一般に東西方向である。しかし、この地域の有馬-高槻断層帯や三峠断層帯は走向が東西に近い横ずれ型の断層であり、広域的な応力場の方位角のもとでは、横ずれのすべり運動は起こりにくいと思われる走向となっている。そこで、本研究では有馬-高槻断層帯、三峠断層帯を中心として、近畿地方の中北部における応力場の地域的な差異などについて調べ、σ 1 の方位が一様であるかどうかを総合的に検討した。さらに、σ 1 の方位と断層帯の走向などとの関連性を、より詳細に調べた。
応力場の解析に先立って、断層帯の走向とσ 1 の方位とのなす角度や摩擦係数などが、すべり運動の起こりやすさにどの程度影響を与えるのか、数値的に調べてみた。
解析は、2008年11月17日~2018年3月29日に発生した地震について、76の稠密観測点および74の定常観測点から得られた多数の地震観測データを用いてメカニズム解を求め、応力テンソルインバージョンにより、応力場を推定した。
解析ではまず最初に、解析範囲の広域応力場を求め、ほぼ東-西方向であることを確認した。次に詳細な解析を行った。精度よく得られた解析結果では、有馬-高槻断層帯の5km近傍の深さ10kmでは、σ 1 の方位角の平均最適解は104?であり、東から時計回りに14?回転していた。この方位と断層の表面変位とのなす角は24?であった。
一方、三峠断層帯では、σ 1 の方位角の平均最適解は81?で、有馬-高槻断層帯とは異なり、反時計回りに9?回転していた。この方位と断層の表面変位の方向とのなす角は29?であった。これらの結果は、近畿地方中北部という狭い範囲内でも応力場は一様ではなく、それぞれの断層帯の近傍において、σ 1 は横ずれのすべり運動を起こしやすい方位に回転していることを示していた。
σ 1 の最適解の方位の回転の原因を考察するために断層モデルを用いて考察した。下部地殻内または上部地殻内にすべり運動があると仮定したときに、上部地殻内の地震発生帯にどのような効果が及ぼされるかを調べた。これらのうち、下部地殻内のすべり運動については、脆性断層帯の深部延長として延性断層が下部地殻に伸びていると仮定し、すべり量や偏差応力などのパラメータについて、適当な数値を与えた。その結果、有馬-高槻断層帯近傍では時計回りに、また、三峠断層帯近傍では反時計回りに回転している上部地殻内の応力場が、説明できること分かった。その一方で、断層モデルで得られた結果を、一様モデルとAIC(Akaike's Information Criterion /赤池情報量基準)を用いて評価すると、一様モデルの方が断層モデルよりもよりよく説明できるという結果になった。
次に上部地殻内でのすべり運動に関する断層モデルも検討した。断層面については、表層から、地震が多発する領域付近までの面を設定した。
有馬-高槻断層帯近傍に関して、下部地殻内または上部地殻内にすべり運動があると仮定した二つの断層モデルを比較すると、上部地殻内に断層モデルを設定する方が、地震発生帯付近の応力場を、よりよく説明できる可能性があることが分かった。
Presenter (発表者) 2: 井上智裕(Tomohiro Inoue)
Title(題目):
ヒクランギ沈み込み帯のHOBITSS観測網に記録された海底圧力を用いた各事前処理における短期的SSEの検知能力
Abstract(要旨):
海底圧力計は、スロースリップ(以降、SSE)に伴う海底の上下地殻変動を高解像度にかつ連続的に観測可能な機器であり、近年様々な沈み込み帯で利用されている(例えば、Wallace et al., 2016)。一方で海底圧力記録には、SSE以外に海洋起源の圧力変動、測器固有のドリフトが含まれ、特に海洋起源の圧力変動が地殻変動と同程度またはそれ以上の振幅および周期で記録される(Muramoto et al., 2019)。このため、SSEに伴う海底地殻変動の推定に際して、海洋起源の圧力変動を適切に除去する必要がある。
最近では、その問題を解決するために、いくつか手法が試されている。例えば、1)海洋モデルによる計算値を観測値から差し引く手法、2)流速を並行観測し観測値を補正する手法、3)EOF(経験的直交関数)やCEOF(複素経験的直交関数)を用いて除去する手法、4)観測点同士を差し引く手法が挙げられる。しかしこれまで、SSEの検知能力という観点で各事前処理を評価した先行研究はほとんどなかった。
本発表では、ヒクランギ沈み込み帯に設置されているHOBITSS観測網に記録された海底圧力計を用いて、各事前処理をSSEの検知能力という観点から評価する。今回行った事前処理は、処理しない場合も含めて4つのケースを実施した(1:海洋モデルを差し引く、2:海溝軸外側を差し引く、3:観測点ペア全てを差し引く)。用いた時系列は、観測値を用いた場合と模擬時系列(非潮汐成分、長周期潮汐成分、測器ドリフト成分)を用いた場合の2つのケースを実施した。これらの時系列にある楕円断層から期待される変位(特定の時期、継続期間(14日))を加えた時系列に対して、Geodetic Matched filter(Rousset et al., 2017)の過渡的変動の抽出までを施し、変位を加えたタイミング及び位置に変動が検出されれば、検出とした。
その結果、すベての観測点ペアを用いた場合が最も小さい規模のSSEまで検知できることがわかった。全ての観測点ペアを用いた場合、おおよそ約Mw6以上のSSEを捉えられる。一方で、事前処理なし、海洋モデルを差し引く、海溝軸外側を差し引く場合は、全ての観測点ペアを用いた場合よりも規模の大きいMwでなければ観測できない。これらの結果は、全ての観測点ペアを差し引くという事前処理を行うことが、検知能力という観点から最適であるということを示唆している。
議論では、SSEの検知能力に対する検出閾値の依存性、加えるSSEの継続期間依存性について議論する。また、現時点での博士論文全体の流れについても発表する。
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今週のうなぎセミナーについてお知らせいたします。
博士課程の発表者との兼ね合いで開始時間が変更となりました。ご注意ください。
Here is information of the Unagi-seminar(November, 10).
Note that this week we are going to start the meeting from 13.30 because there are two PhD candidates.
************** Seminar on Seismology IV B, D /地震学ゼミナールIV B, D (Unagi Seminar) **************
科目:地震学ゼミナールIV B, D / Seminar on Seismology IV B, D(修士・博士)
日時:2022年 11月 10日 (木) 13:30~
場所:京都大学 防災研究所 本館E-232D または オンライン(Zoom)
Date and Time:2022-11-10, 13:30~
Place:Uji Campus Main Building E232D or Zoom (Hybrid)
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Presenter (発表者) 1: Toshio Tanaka (田中俊雄)
Title (題目):
稠密地震観測によって推定された近畿地方中北部の活断層近傍における応力場
Stress field near the active faults in the north-central Kinki district investigated by dense seismic observation
Abstract (要旨):
近畿地方の中北部には有馬-高槻断層帯、三峠・京都西山断層帯、花折断層帯、琵琶湖西岸断層帯などの活断層が分布しており、日本で最も活断層が集中している地域の一つである。地震の活動性を理解するうえで、応力場についての理解は極めて重要である。西南日本におけるσ 1 の方位は一般に東西方向である。しかし、この地域の有馬-高槻断層帯や三峠断層帯は走向が東西に近い横ずれ型の断層であり、広域的な応力場の方位角のもとでは、横ずれのすべり運動は起こりにくいと思われる走向となっている。そこで、本研究では有馬-高槻断層帯、三峠断層帯を中心として、近畿地方の中北部における応力場の地域的な差異などについて調べ、σ 1 の方位が一様であるかどうかを総合的に検討した。さらに、σ 1 の方位と断層帯の走向などとの関連性を、より詳細に調べた。
応力場の解析に先立って、断層帯の走向とσ 1 の方位とのなす角度や摩擦係数などが、すべり運動の起こりやすさにどの程度影響を与えるのか、数値的に調べてみた。
解析は、2008年11月17日~2018年3月29日に発生した地震について、76の稠密観測点および74の定常観測点から得られた多数の地震観測データを用いてメカニズム解を求め、応力テンソルインバージョンにより、応力場を推定した。
解析ではまず最初に、解析範囲の広域応力場を求め、ほぼ東-西方向であることを確認した。次に詳細な解析を行った。精度よく得られた解析結果では、有馬-高槻断層帯の5km近傍の深さ10kmでは、σ 1 の方位角の平均最適解は104?であり、東から時計回りに14?回転していた。この方位と断層の表面変位とのなす角は24?であった。
一方、三峠断層帯では、σ 1 の方位角の平均最適解は81?で、有馬-高槻断層帯とは異なり、反時計回りに9?回転していた。この方位と断層の表面変位の方向とのなす角は29?であった。これらの結果は、近畿地方中北部という狭い範囲内でも応力場は一様ではなく、それぞれの断層帯の近傍において、σ 1 は横ずれのすべり運動を起こしやすい方位に回転していることを示していた。
σ 1 の最適解の方位の回転の原因を考察するために断層モデルを用いて考察した。下部地殻内または上部地殻内にすべり運動があると仮定したときに、上部地殻内の地震発生帯にどのような効果が及ぼされるかを調べた。これらのうち、下部地殻内のすべり運動については、脆性断層帯の深部延長として延性断層が下部地殻に伸びていると仮定し、すべり量や偏差応力などのパラメータについて、適当な数値を与えた。その結果、有馬-高槻断層帯近傍では時計回りに、また、三峠断層帯近傍では反時計回りに回転している上部地殻内の応力場が、説明できること分かった。その一方で、断層モデルで得られた結果を、一様モデルとAIC(Akaike's Information Criterion /赤池情報量基準)を用いて評価すると、一様モデルの方が断層モデルよりもよりよく説明できるという結果になった。
次に上部地殻内でのすべり運動に関する断層モデルも検討した。断層面については、表層から、地震が多発する領域付近までの面を設定した。
有馬-高槻断層帯近傍に関して、下部地殻内または上部地殻内にすべり運動があると仮定した二つの断層モデルを比較すると、上部地殻内に断層モデルを設定する方が、地震発生帯付近の応力場を、よりよく説明できる可能性があることが分かった。
Presenter (発表者) 2: 井上智裕(Tomohiro Inoue)
Title(題目):
ヒクランギ沈み込み帯のHOBITSS観測網に記録された海底圧力を用いた各事前処理における短期的SSEの検知能力
Abstract(要旨):
海底圧力計は、スロースリップ(以降、SSE)に伴う海底の上下地殻変動を高解像度にかつ連続的に観測可能な機器であり、近年様々な沈み込み帯で利用されている(例えば、Wallace et al., 2016)。一方で海底圧力記録には、SSE以外に海洋起源の圧力変動、測器固有のドリフトが含まれ、特に海洋起源の圧力変動が地殻変動と同程度またはそれ以上の振幅および周期で記録される(Muramoto et al., 2019)。このため、SSEに伴う海底地殻変動の推定に際して、海洋起源の圧力変動を適切に除去する必要がある。
最近では、その問題を解決するために、いくつか手法が試されている。例えば、1)海洋モデルによる計算値を観測値から差し引く手法、2)流速を並行観測し観測値を補正する手法、3)EOF(経験的直交関数)やCEOF(複素経験的直交関数)を用いて除去する手法、4)観測点同士を差し引く手法が挙げられる。しかしこれまで、SSEの検知能力という観点で各事前処理を評価した先行研究はほとんどなかった。
本発表では、ヒクランギ沈み込み帯に設置されているHOBITSS観測網に記録された海底圧力計を用いて、各事前処理をSSEの検知能力という観点から評価する。今回行った事前処理は、処理しない場合も含めて4つのケースを実施した(1:海洋モデルを差し引く、2:海溝軸外側を差し引く、3:観測点ペア全てを差し引く)。用いた時系列は、観測値を用いた場合と模擬時系列(非潮汐成分、長周期潮汐成分、測器ドリフト成分)を用いた場合の2つのケースを実施した。これらの時系列にある楕円断層から期待される変位(特定の時期、継続期間(14日))を加えた時系列に対して、Geodetic Matched filter(Rousset et al., 2017)の過渡的変動の抽出までを施し、変位を加えたタイミング及び位置に変動が検出されれば、検出とした。
その結果、すベての観測点ペアを用いた場合が最も小さい規模のSSEまで検知できることがわかった。全ての観測点ペアを用いた場合、おおよそ約Mw6以上のSSEを捉えられる。一方で、事前処理なし、海洋モデルを差し引く、海溝軸外側を差し引く場合は、全ての観測点ペアを用いた場合よりも規模の大きいMwでなければ観測できない。これらの結果は、全ての観測点ペアを差し引くという事前処理を行うことが、検知能力という観点から最適であるということを示唆している。
議論では、SSEの検知能力に対する検出閾値の依存性、加えるSSEの継続期間依存性について議論する。また、現時点での博士論文全体の流れについても発表する。
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© Research Center for Earthquake Hazards.
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