更新日:2017.04.10
Updated: 2017.04.10
今週のセミナーについて連絡いたします.
**************♦ うなぎセミナーのご案内 (Unagi-seminar) ♦**************
日時:11月16日(木)14:00~16:00
場所:宇治キャンパス本館E棟2階E-232D
(地震予知研究センター本館セミナー室)
Date and time: 2nd November, 14:00 ~ 16:00
Room: E-232D @ Main building
[発表者(Presenter)]
坂上啓(Hiromu SAKAUE)
[題目(Title)]
GNSSのデータを用いた1996-2016年東海地方短期的SSEの時空間発展の推定
Spatiotemporal evolution of short-term slow slip events in the Tokai subduction zone, central Japan during 1996-2016.
[要旨(Abstract)]
世界各地の海洋プレート沈み込み帯周辺において,スロースリップイベント(SSE)と呼ばれる非常にゆっくりとした非地震性の断層すべり現象が観測されている.東海地方では2000年から2005年と2013年以降に数年の時定数を持つ長期的SSEの発生が報告されており[例えば水藤・小沢2009;Ozawa et al.,2016],また,数日から10日の時定数を持つ短期的SSEも数ヶ月間隔で繰り返し観測されている[例えばSekine et al., 2010].
Sakaue et al. (2017) は,Fukuda et al. (2004, 2008) のインバージョン法を東海地方の2013-2016年の期間のGNSSデータに適用し,先行研究 [例えばOzawa et al., 2016] で行われていなかった長期的SSEと短期的SSEの時空間発展の同時推定を試みた.その結果, 2013年の初め頃から浜名湖の西側で発生した長期的SSEによる非常にゆっくりとしたすべりと伊勢湾周辺部で発生した短期的SSEの時空間発展を分離して推定した.
今回,解析期間を1996〜2016年へと大幅に延長し,短期的SSEに焦点を当てた解析を行った.解析の都合,暫定的な結果であるが,短期的SSEの時空間発展について紹介する.また,短期的SSEによる解放モーメントとこの期間に発生した深部低周波微動によって解放されたエネルギー量の間に相関があったことを報告する.
[発表者(Presenter)]
髙橋温志(Atsushi TAKAHASHI)
[題目(Title)]
台湾島のテクトニクスの研究
Tectonophysics of Taiwan in terms of geodesy
[要旨(Abstract)]
台湾島は人気の旅行先である.LCCの普及に伴い,さらに安くて近い旅行先になりつつある.美食の側面が強調されるが,自然を生かした観光名所も多い.新高山(現,玉山)や,大理石の壁が連続して現れる所謂絶景スポットである花蓮のタロコ渓谷などの観光名所の地学的な背景には(別に台湾だけじゃないけど),台湾島の形成のテクトニクスと深い関りがあるらしい.本研究は,大地が動いている感を,やや科学的に分析(測地学的な観点から考察)する.
台湾島は,ユーラシア大陸の大陸棚に,フィリピン海プレート上に載ったLuzon火山弧が衝突して形成された衝突帯である.台湾島東部の海岸山脈と中央山脈の境をなす台東縦谷がユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界に相当し,1951年には花蓮市で被害地震が発生している.台東縦谷の西側は東から順に,中央山脈・西部山麓帯・海岸平原と区分される.これらは,ユーラシア大陸の大陸棚に堆積した堆積物が起源であり,東側ほど大きく隆起している.これよりの下位の構造については,研究者によって見解が異なり,テクトニックな境界に関する認識は統一されていない.台湾島では,厚い堆積層の下に隠れている活断層が多いこともこの問題を難しくしている.
一方,高密度のGNSS観測網と統計的手法を組み合わせる方法が,地殻ブロックの境界検出に大きな成果を上げている.例えば,Simpson et al. [2012] やSavage and Simpson [2013]は,GNSSデータのクラスタ解析から,地質情報とは独立に地殻ブロックの境界を推定し,活断層など地質情報と整合的な結果を得ることに成功している.本研究では,Simpson et al. [2012]の手法によって台湾島の高密度GNSS観測データを分析し,測地学的な観点から地殻ブロックを解析した.
台湾には約300点のGNSS定常観測点が展開されている.本研究では,この定常観測点の速度ベクトルの水平成分を,階層型凝集クラスタリングアルゴリズムでクラスタ解析した(Simpson et al. 2012).まず,N個の観測データを速度空間に射影し,各観測データを初期クラスタとする.次に,速度空間上で距離が最も近いクラスタをペアにして,ペアの重心に,新しいクラスタを挿入する一方で,元のクラスタを削除する.つまり,このときクラスタ数はNからN-1に減少する.同様のプロセスをクラスタ数が1になるまで繰り返すことで,系統樹を構成する.
地殻変動データに現れる速度のコントラストは,変位速度の大きい断層を挟む領域で大きくなる.系統樹を上の方で切ると,速度空間上でのクラスタ間距離が大きい場合に対応する.このとき,多くの観測データからなる少数のクラスタが得られる.これが,運動学的な視点で見た場合の主要なブロック構造に対応すると考えられる.一方,その主要な各地殻ブロックの内部でも変形が生じており,軽老樹を下の方で切ると,より細かく分割された地殻のブロック構造が得られる.この細かく分割されたブロック構造は比較的長さの短い活断層の活動に伴う変形等に対応していると考えられる.先行研究では,“最適なクラスタ数“という概念があるが, Gap統計法など,統計的な評価手法だけでは一意には有意な結果を得られないことに注意する必要がある.つまり,あるクラスタ数における地殻ブロックの分割は,クラスタ解析の結果の一部に過ぎず,系統樹で表される構造こそがクラスタ解析の結果である.
GNSSデータは台湾海峡上にある観測点を基準とした際の分布である.速度空間上では,北西・南東方向に分布する系列と,東西方向に分布する系列が特徴的である.前者はルソン弧の衝突に伴う変形に対応した分布を示し,後者は台湾島南部で起きている屏東平原の運動に対応していると考えられる.
台東縦谷東縁に推定されたクラスタ境界は,フィリピン海プレートとユーラシアプレートの運動学的な境界に対応し地質情報とも整合的である.海岸山脈を含むクラスタは,Luzon火山弧の衝突の系列から北東方向に系統的にずれており,これは台湾島東部沖合でのStrain Partitioningを示唆する.台湾島南部ではピントン平原を取り囲むChaochou断層とChishan断層を境界とするクラスタが得られた.このクラスタは明確な内部構造を持ち,さらに細かく分割され,Fengshun断層帯を境として海岸沿いにクラスタ境界が抽出された.Fengshun断層帯は堆積層に埋もれており(Ching et al. 2011),地表のトレースだけでは議論しにくかった.本手法は堆積層に埋もれた活断層を探す上でも有用であることがわかった.一方,1999年のChi-Chi地震の震源断層(Chelungpu断層)はクラスタ境界としては推定されなかった.
**************♦ 皆 さまのご来聴をお待ちしています ♦**************
-------------------今後の予定(Schedule)----------------------.
11/23 お休み
11/30 植村
12/7 村本
12/14 お休み
12/21 三宅,安富
1/11 加藤,山村
1/29 修論発表会予行
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坂上啓(Hiromu SAKAUE)
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[要旨(Abstract)]
世界各地の海洋プレート沈み込み帯周辺において,スロースリップイベント(SSE)と呼ばれる非常にゆっくりとした非地震性の断層すべり現象が観測されている.東海地方では2000年から2005年と2013年以降に数年の時定数を持つ長期的SSEの発生が報告されており[例えば水藤・小沢2009;Ozawa et al.,2016],また,数日から10日の時定数を持つ短期的SSEも数ヶ月間隔で繰り返し観測されている[例えばSekine et al., 2010].
Sakaue et al. (2017) は,Fukuda et al. (2004, 2008) のインバージョン法を東海地方の2013-2016年の期間のGNSSデータに適用し,先行研究 [例えばOzawa et al., 2016] で行われていなかった長期的SSEと短期的SSEの時空間発展の同時推定を試みた.その結果, 2013年の初め頃から浜名湖の西側で発生した長期的SSEによる非常にゆっくりとしたすべりと伊勢湾周辺部で発生した短期的SSEの時空間発展を分離して推定した.
今回,解析期間を1996〜2016年へと大幅に延長し,短期的SSEに焦点を当てた解析を行った.解析の都合,暫定的な結果であるが,短期的SSEの時空間発展について紹介する.また,短期的SSEによる解放モーメントとこの期間に発生した深部低周波微動によって解放されたエネルギー量の間に相関があったことを報告する.
[発表者(Presenter)]
髙橋温志(Atsushi TAKAHASHI)
[題目(Title)]
台湾島のテクトニクスの研究
Tectonophysics of Taiwan in terms of geodesy
[要旨(Abstract)]
台湾島は人気の旅行先である.LCCの普及に伴い,さらに安くて近い旅行先になりつつある.美食の側面が強調されるが,自然を生かした観光名所も多い.新高山(現,玉山)や,大理石の壁が連続して現れる所謂絶景スポットである花蓮のタロコ渓谷などの観光名所の地学的な背景には(別に台湾だけじゃないけど),台湾島の形成のテクトニクスと深い関りがあるらしい.本研究は,大地が動いている感を,やや科学的に分析(測地学的な観点から考察)する.
台湾島は,ユーラシア大陸の大陸棚に,フィリピン海プレート上に載ったLuzon火山弧が衝突して形成された衝突帯である.台湾島東部の海岸山脈と中央山脈の境をなす台東縦谷がユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界に相当し,1951年には花蓮市で被害地震が発生している.台東縦谷の西側は東から順に,中央山脈・西部山麓帯・海岸平原と区分される.これらは,ユーラシア大陸の大陸棚に堆積した堆積物が起源であり,東側ほど大きく隆起している.これよりの下位の構造については,研究者によって見解が異なり,テクトニックな境界に関する認識は統一されていない.台湾島では,厚い堆積層の下に隠れている活断層が多いこともこの問題を難しくしている.
一方,高密度のGNSS観測網と統計的手法を組み合わせる方法が,地殻ブロックの境界検出に大きな成果を上げている.例えば,Simpson et al. [2012] やSavage and Simpson [2013]は,GNSSデータのクラスタ解析から,地質情報とは独立に地殻ブロックの境界を推定し,活断層など地質情報と整合的な結果を得ることに成功している.本研究では,Simpson et al. [2012]の手法によって台湾島の高密度GNSS観測データを分析し,測地学的な観点から地殻ブロックを解析した.
台湾には約300点のGNSS定常観測点が展開されている.本研究では,この定常観測点の速度ベクトルの水平成分を,階層型凝集クラスタリングアルゴリズムでクラスタ解析した(Simpson et al. 2012).まず,N個の観測データを速度空間に射影し,各観測データを初期クラスタとする.次に,速度空間上で距離が最も近いクラスタをペアにして,ペアの重心に,新しいクラスタを挿入する一方で,元のクラスタを削除する.つまり,このときクラスタ数はNからN-1に減少する.同様のプロセスをクラスタ数が1になるまで繰り返すことで,系統樹を構成する.
地殻変動データに現れる速度のコントラストは,変位速度の大きい断層を挟む領域で大きくなる.系統樹を上の方で切ると,速度空間上でのクラスタ間距離が大きい場合に対応する.このとき,多くの観測データからなる少数のクラスタが得られる.これが,運動学的な視点で見た場合の主要なブロック構造に対応すると考えられる.一方,その主要な各地殻ブロックの内部でも変形が生じており,軽老樹を下の方で切ると,より細かく分割された地殻のブロック構造が得られる.この細かく分割されたブロック構造は比較的長さの短い活断層の活動に伴う変形等に対応していると考えられる.先行研究では,“最適なクラスタ数“という概念があるが, Gap統計法など,統計的な評価手法だけでは一意には有意な結果を得られないことに注意する必要がある.つまり,あるクラスタ数における地殻ブロックの分割は,クラスタ解析の結果の一部に過ぎず,系統樹で表される構造こそがクラスタ解析の結果である.
GNSSデータは台湾海峡上にある観測点を基準とした際の分布である.速度空間上では,北西・南東方向に分布する系列と,東西方向に分布する系列が特徴的である.前者はルソン弧の衝突に伴う変形に対応した分布を示し,後者は台湾島南部で起きている屏東平原の運動に対応していると考えられる.
台東縦谷東縁に推定されたクラスタ境界は,フィリピン海プレートとユーラシアプレートの運動学的な境界に対応し地質情報とも整合的である.海岸山脈を含むクラスタは,Luzon火山弧の衝突の系列から北東方向に系統的にずれており,これは台湾島東部沖合でのStrain Partitioningを示唆する.台湾島南部ではピントン平原を取り囲むChaochou断層とChishan断層を境界とするクラスタが得られた.このクラスタは明確な内部構造を持ち,さらに細かく分割され,Fengshun断層帯を境として海岸沿いにクラスタ境界が抽出された.Fengshun断層帯は堆積層に埋もれており(Ching et al. 2011),地表のトレースだけでは議論しにくかった.本手法は堆積層に埋もれた活断層を探す上でも有用であることがわかった.一方,1999年のChi-Chi地震の震源断層(Chelungpu断層)はクラスタ境界としては推定されなかった.
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© Research Center for Earthquake Hazards.
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