更新日:2018.04.07
Updated: 2018.04.07
今週のセミナーについて連絡いたします。
**************♦ うなぎセミナーのご案内 (Unagi-seminar) ♦**************
日時: 6月21日(木)14:00~16:00
場所: 宇治キャンパス本館E棟2階E-232D
(地震予知研究センター本館セミナー室)
Date and time: 21st June, 14:00 ~ 16:00
Room: E-232D @ Main building
Map: http://www.uji.kyoto-u.ac.jp/campus/map.html
====
[発表者 (Presenter)]
加藤慎也(Shin’ya KATO)
[題目 (Title)]
Fluid in the lower crust estimated by a high-resolution reflection analysis in the northern Kinki district, southwestern Japan
近畿地方北部において、高解像度反射法解析によって示唆される下部地殻の水
[要旨 (Abstract)]
内陸地震を引き起こす上部地殻の断層に応力集中するメカニズムとして、断層深部において下部地殻が局所的に柔らかいために、応力が上部地殻に集中するというモデルが提唱されている(water-weakened lower crust model ; Iio et al.(2002))。下部地殻が柔らかくなるためには水の存在が必要であると考えられている。断層深部に水が存在しているのなら、その場所で地震波速度の低速度領域として不均質構造が求められるはずである。現在まで、トモグラフィー解析から内陸地震の断層深部には低速度領域が存在するという結果が増えてきているが、得られている結果は分解能が20 kmと低く、断層深部において局所的に低速度領域が存在しているかどうかがわかっていない。また、この低速度領域が水に起因するという直接的な結果が得られていないことから、提唱されているメカニズムが正しいかどうかはわかっていない。この問題を解決するためには、断層深部において局所的な不均質構造を明らかにし、この不均質構造が水を表している事を示す必要がある。以上より、内陸地震を引き起こす断層に応力が集中するメカニズムを明らかにするためには、従来の解析より高分解能で地殻内の不均質構造を求める必要がある。
高分解能で下部地殻の不均質構造を明らかにできる解析手法は稠密地震観測網より得られた豊富なデータを用いたS波の反射法解析である。この解析における分解能は1.5 kmであり、従来のトモグラフィー解析の分解能より高くなっている。そのため、下部地殻における不均質構造を高分解能で求める事ができる。この解析手法を用いた先行研究はAoki et al. (2016)である。Aoki et al. (2016) は微小地震の中に顕著なS波の反射波(図1)が伴うことに着目し、下部地殻の詳細な反射構造を求めた。その結果、反射強度が強い領域が傾斜して面上に分布している(S波反射面)という不均質構造が存在している事がわかった。そして、傾斜したS波反射面の北端で深部低周波地震(DLFs)が起きているという位置関係と反射波の振幅の大きさからこのS波反射面は水の存在を表していると結論づけた。なぜならDLFsが生じる原因として考えられるているのが水の存在だからである(Ohmi et al. (2002)) 。
Aoki et al. (2016) はS波反射面は水の存在を表していると結論づけたが、この考えの元となるのはS波反射面とDLFsの位置関係である。そのため、S波反射面の正確な位置が必要とされる。Aoki et al. (2016)では、反射点を求める際の速度構造を地震波速度一定の半無限構造を仮定して解析を行っていた。しかし、実際の速度構造は深さが増加すると地震波速度も増加することから、速度一定の半無限構造で反射点を求めると深い領域では浅めに反射点が決まってしまう。このずれを防ぐために本研究では、JMA2001の速度構造を用いた破線追跡をすることで反射点の位置を求め、DLFsとの関係を議論していく。
本発表では、上記の他に今後の研究方針などをお伝えする。
====
[発表者 (Presenter)]
山村紀香(Norika YAMAMURA)
[題目 (Title)]
1586年天正地震の震源断層推定:液状化履歴地点における検討から
Source Fault Estimate of the 1586 Tensho Earthquake Based on Evaluating at Liquefaction Spots
[要旨 (Abstract)]
1586年に発生した天正地震は、中部地方から近畿地方にかけて甚大な被害をおよぼした内陸大地震である。しかし、信頼性の高い史料(古文書)の記述が少ないため、地震の詳細ははっきりとしていない。複数の先行研究があるが、史料の解釈の違いによって、震源の位置や規模の推定などが大きく異なるのが問題点である。被害が広範囲にわたるため、超巨大単独地震として考えている研究[たとえば、宇佐美ほか(2013)]や、連動して発生した2つの地震と考えている研究[たとえば、飯田(1987)]など、その見解は様々である。
本研究では、天正地震の詳細に迫るため、これまで詳細に検討されてこなかった地盤の液状化に着目した。史料の記述が十分でないため、遺跡発掘調査で報告された天正地震の液状化跡(噴砂跡・地すべり跡)にも焦点を置き、仮定した震源断層における地震動に対する各地点の液状化可能性[たとえば、岩崎ほか(1980)]を計算・評価することにより、天正地震の震源断層を推定した。この計算は、地震動予測式[たとえば、司・翠川(1999)]によって求めた地震動情報と現在のボーリングデータから行われ、土地の自然条件を考慮することによって、液状化可能性評価を行うものである。結果として、岐阜県北部に位置する庄川断層帯においてM_JMA7.9の単独地震が発生した場合、天正地震時に液状化したと考えられる地域周辺のほとんどにおいて液状化可能性が高くなり、液状化しやすい状態となった。これは、天正地震による液状化発生を単独地震で説明できることを意味し、震源が庄川断層帯である可能性を示す。
**************♦ 皆さまのご来聴をお待ちしています ♦**************
-------------------今後の予定(Schedule)----------------------
6/28 三宅、安富
7/5 水戸川、津田
7/12 M1×2
7/19 M1×2
今週のセミナーについて連絡いたします。
**************♦ うなぎセミナーのご案内 (Unagi-seminar) ♦**************
日時: 6月21日(木)14:00~16:00
場所: 宇治キャンパス本館E棟2階E-232D
(地震予知研究センター本館セミナー室)
Date and time: 21st June, 14:00 ~ 16:00
Room: E-232D @ Main building
Map: http://www.uji.kyoto-u.ac.jp/campus/map.html
====
[発表者 (Presenter)]
加藤慎也(Shin’ya KATO)
[題目 (Title)]
Fluid in the lower crust estimated by a high-resolution reflection analysis in the northern Kinki district, southwestern Japan
近畿地方北部において、高解像度反射法解析によって示唆される下部地殻の水
[要旨 (Abstract)]
内陸地震を引き起こす上部地殻の断層に応力集中するメカニズムとして、断層深部において下部地殻が局所的に柔らかいために、応力が上部地殻に集中するというモデルが提唱されている(water-weakened lower crust model ; Iio et al.(2002))。下部地殻が柔らかくなるためには水の存在が必要であると考えられている。断層深部に水が存在しているのなら、その場所で地震波速度の低速度領域として不均質構造が求められるはずである。現在まで、トモグラフィー解析から内陸地震の断層深部には低速度領域が存在するという結果が増えてきているが、得られている結果は分解能が20 kmと低く、断層深部において局所的に低速度領域が存在しているかどうかがわかっていない。また、この低速度領域が水に起因するという直接的な結果が得られていないことから、提唱されているメカニズムが正しいかどうかはわかっていない。この問題を解決するためには、断層深部において局所的な不均質構造を明らかにし、この不均質構造が水を表している事を示す必要がある。以上より、内陸地震を引き起こす断層に応力が集中するメカニズムを明らかにするためには、従来の解析より高分解能で地殻内の不均質構造を求める必要がある。
高分解能で下部地殻の不均質構造を明らかにできる解析手法は稠密地震観測網より得られた豊富なデータを用いたS波の反射法解析である。この解析における分解能は1.5 kmであり、従来のトモグラフィー解析の分解能より高くなっている。そのため、下部地殻における不均質構造を高分解能で求める事ができる。この解析手法を用いた先行研究はAoki et al. (2016)である。Aoki et al. (2016) は微小地震の中に顕著なS波の反射波(図1)が伴うことに着目し、下部地殻の詳細な反射構造を求めた。その結果、反射強度が強い領域が傾斜して面上に分布している(S波反射面)という不均質構造が存在している事がわかった。そして、傾斜したS波反射面の北端で深部低周波地震(DLFs)が起きているという位置関係と反射波の振幅の大きさからこのS波反射面は水の存在を表していると結論づけた。なぜならDLFsが生じる原因として考えられるているのが水の存在だからである(Ohmi et al. (2002)) 。
Aoki et al. (2016) はS波反射面は水の存在を表していると結論づけたが、この考えの元となるのはS波反射面とDLFsの位置関係である。そのため、S波反射面の正確な位置が必要とされる。Aoki et al. (2016)では、反射点を求める際の速度構造を地震波速度一定の半無限構造を仮定して解析を行っていた。しかし、実際の速度構造は深さが増加すると地震波速度も増加することから、速度一定の半無限構造で反射点を求めると深い領域では浅めに反射点が決まってしまう。このずれを防ぐために本研究では、JMA2001の速度構造を用いた破線追跡をすることで反射点の位置を求め、DLFsとの関係を議論していく。
本発表では、上記の他に今後の研究方針などをお伝えする。
====
[発表者 (Presenter)]
山村紀香(Norika YAMAMURA)
[題目 (Title)]
1586年天正地震の震源断層推定:液状化履歴地点における検討から
Source Fault Estimate of the 1586 Tensho Earthquake Based on Evaluating at Liquefaction Spots
[要旨 (Abstract)]
1586年に発生した天正地震は、中部地方から近畿地方にかけて甚大な被害をおよぼした内陸大地震である。しかし、信頼性の高い史料(古文書)の記述が少ないため、地震の詳細ははっきりとしていない。複数の先行研究があるが、史料の解釈の違いによって、震源の位置や規模の推定などが大きく異なるのが問題点である。被害が広範囲にわたるため、超巨大単独地震として考えている研究[たとえば、宇佐美ほか(2013)]や、連動して発生した2つの地震と考えている研究[たとえば、飯田(1987)]など、その見解は様々である。
本研究では、天正地震の詳細に迫るため、これまで詳細に検討されてこなかった地盤の液状化に着目した。史料の記述が十分でないため、遺跡発掘調査で報告された天正地震の液状化跡(噴砂跡・地すべり跡)にも焦点を置き、仮定した震源断層における地震動に対する各地点の液状化可能性[たとえば、岩崎ほか(1980)]を計算・評価することにより、天正地震の震源断層を推定した。この計算は、地震動予測式[たとえば、司・翠川(1999)]によって求めた地震動情報と現在のボーリングデータから行われ、土地の自然条件を考慮することによって、液状化可能性評価を行うものである。結果として、岐阜県北部に位置する庄川断層帯においてM_JMA7.9の単独地震が発生した場合、天正地震時に液状化したと考えられる地域周辺のほとんどにおいて液状化可能性が高くなり、液状化しやすい状態となった。これは、天正地震による液状化発生を単独地震で説明できることを意味し、震源が庄川断層帯である可能性を示す。
**************♦ 皆さまのご来聴をお待ちしています ♦**************
-------------------今後の予定(Schedule)----------------------
6/28 三宅、安富
7/5 水戸川、津田
7/12 M1×2
7/19 M1×2
© Research Center for Earthquake Hazards.
© Research Center for Earthquake Hazards.