更新日:2023.04.12
Updated: 2023.04.12
今週のうなぎセミナーについてお知らせいたします。
Here is information of the Unagi-seminar(July, 13).
************** Seminar on Seismology IV A, C /地震学ゼミナールIV A, C (Unagi Seminar) **************
科目:地震学ゼミナールIV A, C / Seminar on Seismology IV A, C(修士・博士)
日時:2023年 7月 13日 (木) 13:15~
場所:京都大学 防災研究所 本館E-232D または オンライン(Zoom)
Date and Time:2023-07-13, 13:15~
Place:Uji Campus Main Building E232D or Zoom (Hybrid)
Please join the seminar on-site, especially students who need credit.
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Presenter(発表者)1: 船曵 祐輝
Title(題目):
DASによる震源メカニズム推定
Abstract:
光ファイバーを歪センサーとするセンシング技術、通称DAS(Distributed Acoustic Sensing)が、地震学における観測技術として近年急速に広まっている。DASとは、光ファイーバーケーブル内を伝播するレーザー光の後方散乱の位相を測定し、地震波動場によってケーブルに引き起こされる軸ひずみを計算する新技術であり、近年地震学にも応用され始めている。DASにおいては、ケーブル自体が地震計として機能する、つまりはケーブル沿いの任意の区間を地震計と同等に扱える。このために、地震計をおよそ数km~数十kmおきに一点ずつ設置する必要はなく、超高密度に地震波動場を捉えることが可能になっている。
このDASの非常に高い空間分解能を活かし、様々な地震学的研究が進められている。(Li et al., 2021)では2019年Ridgecrest地震の余震を観測し、標準的なカタログの6倍もの余震を検出した。(Nishimura et al., 2021)では吾妻火山における火山性地震の震源位置を決定し、地中に埋められた光ファイバーケーブルが噴火時の火山灰や火山爆発で損傷しないことから、火山性地震のモニタリングに適した観測システムと評価した。(Fukushima et al., 2022)では、周波数-波数フィルターと地震波干渉法をDASデータに適用することで、三陸沖のVs構造とVp/Vs構造を推定した。
だが、これらの先行研究はあくまで既存の観測手法でできることをDASにも適用できるかどうかを試しているに過ぎず、また、DASのデータのうち、彼らが使っているのはそれぞれの観測点におけるP波やS波のarrival timeのみである。「もっといろいろな使い道があるのだろうな」と私には思えてならない。
私は、DASの最大の強みはその空間的連続性にあると考えている。観測点がとても短い間隔で一列に並んでいることから、それぞれの観測点や時刻の値を加算したり減算したりするだけで積分あるいは微分が可能であり、私はこの、DASの観測結果から容易に微分積分できる性質を活かした研究を展開したい。その端緒として、DASでP波の初動極性(のDASに沿った軸歪)を見て、そこから震源メカニズム推定を行うことを考えている。今回は、2022年10月に発生した京都の地震におけるP波の初動極性をDASで見た結果を紹介する。
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Presenter(発表者)2: 宮副 真夢
Title(題目):
Topic-1
The brittle-plastic transition of simulated quartz shear zone : insight from microstructural observation
Topic-2
Interaction between dilatancy & thermal pressurization in earthquake cycle simulation
Abstract(要旨):
Topic-1
断層における岩石の変形機構は,深さ(温度・封圧)により異なる。浅部は低温であるため,地震を伴う脆性変形が卓越する。脆性変形領域では、せん断強度は Byerlee の法則に従い、深くなるほど封圧の増加により大きくなる。一方で,深部では温度が上昇することにより、地震を伴わない塑性変形が卓越する。塑性変形領域ではせん断強度は流動則に従い、温度が高いほど小さくなる。この変形機構の入れ替わりが脆性-塑性遷移である。脆性-塑性遷移が起こる深さ領域(脆性-塑性遷移領域)は脆性領域の下限部にあたり、せん断強度が高くなるため、しばしば巨大地震の震源となる。本研究では脆性-塑性遷移領域の条件下でせん断実験を行い、回収試料の微細構造から脆性変形によるせん断歪量と塑性変形によるせん断歪の割合の変化をNoda(2021)のモデル用いて見積もった。その結果、低温側で実験中測定されたメカニカルデータとNoda(2021)モデルの計算結果には違いが見られた。この原因としてNoda(2021)のモデルでは初期の長軸方向とアスペクト比、y面の滑りが考慮されていないことが考えられる。そこで、低温側でも正確な計算が行えるようモデルを改良を試みた。
Topic-2
断層が滑るときには、間隙流体圧を増加させ、せん断強度を低下させる摩擦発熱(Thermal pressurization)という現象が起きるが、一方で間隙流体圧を低下させ、せん断強度を増加させるダイラタンシーという現象も起きる。これらの現象はよく知られており、個々にはおおく議論されているが、この二つの現象の相互作用についての議論は多くない。そこで今回の研究では、サイクルシミュレーションに摩擦発熱とダイラタンシー両方を導入することにより、この二つの現象の相互作用や、地震サイクル与える影響について考察する。
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今週のうなぎセミナーについてお知らせいたします。
Here is information of the Unagi-seminar(July, 13).
************** Seminar on Seismology IV A, C /地震学ゼミナールIV A, C (Unagi Seminar) **************
科目:地震学ゼミナールIV A, C / Seminar on Seismology IV A, C(修士・博士)
日時:2023年 7月 13日 (木) 13:15~
場所:京都大学 防災研究所 本館E-232D または オンライン(Zoom)
Date and Time:2023-07-13, 13:15~
Place:Uji Campus Main Building E232D or Zoom (Hybrid)
Please join the seminar on-site, especially students who need credit.
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Presenter(発表者)1: 船曵 祐輝
Title(題目):
DASによる震源メカニズム推定
Abstract:
光ファイバーを歪センサーとするセンシング技術、通称DAS(Distributed Acoustic Sensing)が、地震学における観測技術として近年急速に広まっている。DASとは、光ファイーバーケーブル内を伝播するレーザー光の後方散乱の位相を測定し、地震波動場によってケーブルに引き起こされる軸ひずみを計算する新技術であり、近年地震学にも応用され始めている。DASにおいては、ケーブル自体が地震計として機能する、つまりはケーブル沿いの任意の区間を地震計と同等に扱える。このために、地震計をおよそ数km~数十kmおきに一点ずつ設置する必要はなく、超高密度に地震波動場を捉えることが可能になっている。
このDASの非常に高い空間分解能を活かし、様々な地震学的研究が進められている。(Li et al., 2021)では2019年Ridgecrest地震の余震を観測し、標準的なカタログの6倍もの余震を検出した。(Nishimura et al., 2021)では吾妻火山における火山性地震の震源位置を決定し、地中に埋められた光ファイバーケーブルが噴火時の火山灰や火山爆発で損傷しないことから、火山性地震のモニタリングに適した観測システムと評価した。(Fukushima et al., 2022)では、周波数-波数フィルターと地震波干渉法をDASデータに適用することで、三陸沖のVs構造とVp/Vs構造を推定した。
だが、これらの先行研究はあくまで既存の観測手法でできることをDASにも適用できるかどうかを試しているに過ぎず、また、DASのデータのうち、彼らが使っているのはそれぞれの観測点におけるP波やS波のarrival timeのみである。「もっといろいろな使い道があるのだろうな」と私には思えてならない。
私は、DASの最大の強みはその空間的連続性にあると考えている。観測点がとても短い間隔で一列に並んでいることから、それぞれの観測点や時刻の値を加算したり減算したりするだけで積分あるいは微分が可能であり、私はこの、DASの観測結果から容易に微分積分できる性質を活かした研究を展開したい。その端緒として、DASでP波の初動極性(のDASに沿った軸歪)を見て、そこから震源メカニズム推定を行うことを考えている。今回は、2022年10月に発生した京都の地震におけるP波の初動極性をDASで見た結果を紹介する。
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Presenter(発表者)2: 宮副 真夢
Title(題目):
Topic-1
The brittle-plastic transition of simulated quartz shear zone : insight from microstructural observation
Topic-2
Interaction between dilatancy & thermal pressurization in earthquake cycle simulation
Abstract(要旨):
Topic-1
断層における岩石の変形機構は,深さ(温度・封圧)により異なる。浅部は低温であるため,地震を伴う脆性変形が卓越する。脆性変形領域では、せん断強度は Byerlee の法則に従い、深くなるほど封圧の増加により大きくなる。一方で,深部では温度が上昇することにより、地震を伴わない塑性変形が卓越する。塑性変形領域ではせん断強度は流動則に従い、温度が高いほど小さくなる。この変形機構の入れ替わりが脆性-塑性遷移である。脆性-塑性遷移が起こる深さ領域(脆性-塑性遷移領域)は脆性領域の下限部にあたり、せん断強度が高くなるため、しばしば巨大地震の震源となる。本研究では脆性-塑性遷移領域の条件下でせん断実験を行い、回収試料の微細構造から脆性変形によるせん断歪量と塑性変形によるせん断歪の割合の変化をNoda(2021)のモデル用いて見積もった。その結果、低温側で実験中測定されたメカニカルデータとNoda(2021)モデルの計算結果には違いが見られた。この原因としてNoda(2021)のモデルでは初期の長軸方向とアスペクト比、y面の滑りが考慮されていないことが考えられる。そこで、低温側でも正確な計算が行えるようモデルを改良を試みた。
Topic-2
断層が滑るときには、間隙流体圧を増加させ、せん断強度を低下させる摩擦発熱(Thermal pressurization)という現象が起きるが、一方で間隙流体圧を低下させ、せん断強度を増加させるダイラタンシーという現象も起きる。これらの現象はよく知られており、個々にはおおく議論されているが、この二つの現象の相互作用についての議論は多くない。そこで今回の研究では、サイクルシミュレーションに摩擦発熱とダイラタンシー両方を導入することにより、この二つの現象の相互作用や、地震サイクル与える影響について考察する。
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© Research Center for Earthquake Hazards.
© Research Center for Earthquake Hazards.