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地震・火山研究グループ研究会(5月22日)

Seismic and Volcanic Hazards Mitigation Research Group Workshop (May 22, 2015)

セミナー等

SEMINARS

更新日:2015.05.08

Updated: 2015.05.08

下記の通り,2015年度2回目の防災研地震・火山グループ研究会を開催いたします.
今回は,2部構成とし,前半は阿武山観測所とサイエンスミュージアム構想について,構想を推進しておられる二人の先生方から現状とアウトリーチに関する講演を頂き,後半は,4月からあらたに京滋地区で研究を始められた新進気鋭のお二人から
研究発表をして頂きます.


皆様お誘い合わせの上,是非ご参加いただきますようお願い申し上げます.

 

2015年5月地震・火山グループ研究会


日時:2015年5月22日(金)14:00 – 17:00
会場:京都大学宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4・5
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_uji.htm
(構内マップ中の3番の建物です)

 

・第一部(阿武山観測所とサイエンスミュージアム構想)14:00 – 15:00

 

発表者:飯尾能久(京都大学防災研究所地震予知研究センター長・教授)
タイトル: 阿武山観測所と「満点計画」
要旨:
地震予知研究センターでは、8つの隔地観測所の機能の再編を進め、研究資源を新たなプロジェクト等に効果的に集中する体制をとっている。上宝、宮崎観測所は、それぞれ穂高砂防観測所および火山活動研究センターと連携して拠点を構成している。阿武山観測所は、歴史的な地震計を用いたアウトリーチ活動の拠点、および「満点計画」の基地という、2つの機能を持った観測所として活用を始めている。この2つの機能は、一見関係無いようにも思えるが、実は、根っこのところで深く関係しており、また、両方のプロジェクトは実際の活動においても相互乗り入れ的に実行されている。「根っこ」のところとは、地域のみなさんと共同するというコンセプトであり、阿武山のサポーターさんは、従来の観測所の垣根を越えて、「満点計画」のフィールドワーク等にも進出しつつある。
本講演では、これまでの阿武山観測所の歴史を踏まえて、主に「満点計画」のサイド から、阿武山観測所の新たな機能について紹介する。

 

発表者:矢守克也(京都大学防災研究所巨大災害研究センター長・教授)
タイトル: 浅いアウトリーチ/深いアウトリーチ
要旨:
3.11が地震研究に及ぼした影響はもちろん多岐にわたるが、その一つが「アウトリーチ」に関わることはたしかだろう。たとえば、地震学会が2012年にまとめた「地震学の今を問う」でも、「議論のまとめ」として提示された4つの項目の一つとして、「教育の現場やメディアで地震学の知見をどう伝えるか」が登場している。
本発表では、近年のサイエンス・コミュニケーション論や科学技術社会論をベースに、「アウトリーチ」にも2種類あるとの考えを紹介したい。第1は、即効性はあるけど、本質的な変化は期待薄な「浅いアウトリーチ」、第2は、その逆の「深いアウトリーチ」である。
「浅いアウトリーチ」は、サイエンスカフェなどに見られるように、専門家(玄人)と非専門家(素人)の色分けには一切手をつけず、玄人が「出血大サービス」で手取り足取り知識・情報を親切にお伝えしますという活動である。もちろん、こうした活動にも意義はあるが、たぶん、玄人の側には「ただでさえ研究で忙しいのに余計なことだ」と感じる人もいるだろうし、玄人と素人、また科学と社会との関係に本質的な変化を及ぼすことも少ないと思われる。
他方、「深いアウトリーチ」とは、玄人が玄人として携わっている活動の一部(もちろん、そのほんの一部ではあるが)を、素人が「担う」ことを中核とするアウトリーチである。満点地震計の設置・保守を小学生や地域住民が「担う」こと、あるいは、地震学に関する「浅いアウトリーチ」をボランティアスタッフ(「阿武山サポーター」)が「担う」ことは、まさにこれにあたる。こうした取り組みには、当座目に見える成果を見いだしにくいかもしれない。しかし、中長期的に見れば、玄人と素人の境界線を再編しつつ、玄人そのもの(地震学を支える未来の人材)の芽を育み、玄人の活動に対する素人の社会的な承認・支援の基盤を形づくることができる。
真のアウトリーチのためには、「伝える」こと(「浅いアウトリーチ」)だけでなく、「共にする」こと(「深いアウトリーチ」)が求められるし、京大・防災研はそうした先端的なチャレンジをなす場としてふさわしいと考えている。

 

 

・第二部(研究紹介)15:15 – 17:00

 

発表者:平野史朗(立命館大学理工学部物理科学科・助教)

タイトル:地震時に解放されるポテンシャルエネルギーの推定精度
要旨:
地震時には、岩石に蓄えられた歪みすなわちポテンシャルエネルギーの一部が解放され、破壊と摩擦によって熱に変換されると共に、波すなわち運動エネルギーにも変換される。この解放ポテンシャルは、地震波の低周波極限から安定的に求められる量である地震モーメントから求められると言われてきた。しかしそれを可能にする理論モデルは、「断層面上の応力降下量が均一で、かつ破壊エネルギーが波動エネルギーに比べ無視できる」という、昨今の震源物理学においてはもはや窮屈な仮定に依拠している。本研究では、応力降下量が不均一かつ破壊エネルギーが無視できないという現実的な場合にも解放ポテンシャルを推定するために、低周波極限だけではなくどの程度短波長成分の情報が重要となるかを理論的に考察する。更に観測的経験則として知られる解放ポテンシャルのパワースペクトル密度がどのような断層挙動から生じうるかについて議論する。

 

発表者:太田和晃(京都大学防災研究所地震予知研究センター・特定研究員)

タイトル:南海トラフにおける深部微動のすべり過程
要旨:
南海トラフに発生する深部微動は沈み込むフィリピン海プレート境界面上の固着域と安定すべり領域の遷移領域に発生し、同様に遷移領域に発生する様々なスケールのスロー地震(低周波地震~継続時間1.5秒, 超低周波地震~20秒, スロースリップ~数日)と頻繁に同期して活動することが知られている(e.g., Obara, 2011)。
微動、及びスロー地震は同一の支配メカニズムによって発生するせん断すべり現象であることが示唆される一方、相互の関係には未だ不明瞭な点が多い。その一因として微動の波形解析が難しく、すべり過程を捉えるのが困難なことがあげられる。本研究では、合成グリーン関数を用いて微動のすべりを解析する新たな手法を開発・適用し、四国地域に発生する微動のすべりについて詳細なイメージを得ることに成功した。それを元に、微動のすべりのふるまいとプレート境界面の摩擦特性、微動と超低周波地震の関係性について議論する。

下記の通り,2015年度2回目の防災研地震・火山グループ研究会を開催いたします.
今回は,2部構成とし,前半は阿武山観測所とサイエンスミュージアム構想について,構想を推進しておられる二人の先生方から現状とアウトリーチに関する講演を頂き,後半は,4月からあらたに京滋地区で研究を始められた新進気鋭のお二人から
研究発表をして頂きます.


皆様お誘い合わせの上,是非ご参加いただきますようお願い申し上げます.

 

2015年5月地震・火山グループ研究会


日時:2015年5月22日(金)14:00 – 17:00
会場:京都大学宇治キャンパス おうばくプラザセミナー室4・5
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_uji.htm
(構内マップ中の3番の建物です)

 

・第一部(阿武山観測所とサイエンスミュージアム構想)14:00 – 15:00

 

発表者:飯尾能久(京都大学防災研究所地震予知研究センター長・教授)
タイトル: 阿武山観測所と「満点計画」
要旨:
地震予知研究センターでは、8つの隔地観測所の機能の再編を進め、研究資源を新たなプロジェクト等に効果的に集中する体制をとっている。上宝、宮崎観測所は、それぞれ穂高砂防観測所および火山活動研究センターと連携して拠点を構成している。阿武山観測所は、歴史的な地震計を用いたアウトリーチ活動の拠点、および「満点計画」の基地という、2つの機能を持った観測所として活用を始めている。この2つの機能は、一見関係無いようにも思えるが、実は、根っこのところで深く関係しており、また、両方のプロジェクトは実際の活動においても相互乗り入れ的に実行されている。「根っこ」のところとは、地域のみなさんと共同するというコンセプトであり、阿武山のサポーターさんは、従来の観測所の垣根を越えて、「満点計画」のフィールドワーク等にも進出しつつある。
本講演では、これまでの阿武山観測所の歴史を踏まえて、主に「満点計画」のサイド から、阿武山観測所の新たな機能について紹介する。

 

発表者:矢守克也(京都大学防災研究所巨大災害研究センター長・教授)
タイトル: 浅いアウトリーチ/深いアウトリーチ
要旨:
3.11が地震研究に及ぼした影響はもちろん多岐にわたるが、その一つが「アウトリーチ」に関わることはたしかだろう。たとえば、地震学会が2012年にまとめた「地震学の今を問う」でも、「議論のまとめ」として提示された4つの項目の一つとして、「教育の現場やメディアで地震学の知見をどう伝えるか」が登場している。
本発表では、近年のサイエンス・コミュニケーション論や科学技術社会論をベースに、「アウトリーチ」にも2種類あるとの考えを紹介したい。第1は、即効性はあるけど、本質的な変化は期待薄な「浅いアウトリーチ」、第2は、その逆の「深いアウトリーチ」である。
「浅いアウトリーチ」は、サイエンスカフェなどに見られるように、専門家(玄人)と非専門家(素人)の色分けには一切手をつけず、玄人が「出血大サービス」で手取り足取り知識・情報を親切にお伝えしますという活動である。もちろん、こうした活動にも意義はあるが、たぶん、玄人の側には「ただでさえ研究で忙しいのに余計なことだ」と感じる人もいるだろうし、玄人と素人、また科学と社会との関係に本質的な変化を及ぼすことも少ないと思われる。
他方、「深いアウトリーチ」とは、玄人が玄人として携わっている活動の一部(もちろん、そのほんの一部ではあるが)を、素人が「担う」ことを中核とするアウトリーチである。満点地震計の設置・保守を小学生や地域住民が「担う」こと、あるいは、地震学に関する「浅いアウトリーチ」をボランティアスタッフ(「阿武山サポーター」)が「担う」ことは、まさにこれにあたる。こうした取り組みには、当座目に見える成果を見いだしにくいかもしれない。しかし、中長期的に見れば、玄人と素人の境界線を再編しつつ、玄人そのもの(地震学を支える未来の人材)の芽を育み、玄人の活動に対する素人の社会的な承認・支援の基盤を形づくることができる。
真のアウトリーチのためには、「伝える」こと(「浅いアウトリーチ」)だけでなく、「共にする」こと(「深いアウトリーチ」)が求められるし、京大・防災研はそうした先端的なチャレンジをなす場としてふさわしいと考えている。

 

 

・第二部(研究紹介)15:15 – 17:00

 

発表者:平野史朗(立命館大学理工学部物理科学科・助教)

タイトル:地震時に解放されるポテンシャルエネルギーの推定精度
要旨:
地震時には、岩石に蓄えられた歪みすなわちポテンシャルエネルギーの一部が解放され、破壊と摩擦によって熱に変換されると共に、波すなわち運動エネルギーにも変換される。この解放ポテンシャルは、地震波の低周波極限から安定的に求められる量である地震モーメントから求められると言われてきた。しかしそれを可能にする理論モデルは、「断層面上の応力降下量が均一で、かつ破壊エネルギーが波動エネルギーに比べ無視できる」という、昨今の震源物理学においてはもはや窮屈な仮定に依拠している。本研究では、応力降下量が不均一かつ破壊エネルギーが無視できないという現実的な場合にも解放ポテンシャルを推定するために、低周波極限だけではなくどの程度短波長成分の情報が重要となるかを理論的に考察する。更に観測的経験則として知られる解放ポテンシャルのパワースペクトル密度がどのような断層挙動から生じうるかについて議論する。

 

発表者:太田和晃(京都大学防災研究所地震予知研究センター・特定研究員)

タイトル:南海トラフにおける深部微動のすべり過程
要旨:
南海トラフに発生する深部微動は沈み込むフィリピン海プレート境界面上の固着域と安定すべり領域の遷移領域に発生し、同様に遷移領域に発生する様々なスケールのスロー地震(低周波地震~継続時間1.5秒, 超低周波地震~20秒, スロースリップ~数日)と頻繁に同期して活動することが知られている(e.g., Obara, 2011)。
微動、及びスロー地震は同一の支配メカニズムによって発生するせん断すべり現象であることが示唆される一方、相互の関係には未だ不明瞭な点が多い。その一因として微動の波形解析が難しく、すべり過程を捉えるのが困難なことがあげられる。本研究では、合成グリーン関数を用いて微動のすべりを解析する新たな手法を開発・適用し、四国地域に発生する微動のすべりについて詳細なイメージを得ることに成功した。それを元に、微動のすべりのふるまいとプレート境界面の摩擦特性、微動と超低周波地震の関係性について議論する。

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© Research Center for Earthquake Hazards.

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