Topics

Topics

宇治固体地球コロキウム(9月9日)

宇治固体地球コロキウム(9月9日)

セミナー等

SEMINARS

更新日:2021.09.01

Updated: 2021.09.01

第3回宇治固体地球コロキウムを以下のとおり開催します。


-------------- 第3回 宇治固体地球コロキウム -------------

日 時: 2021年9月9日(木) 16:00 – 17:30
場 所: Zoom

講演者: 橋本 学 教授
Title: InSAR時系列解析による地殻変動の検出
要旨:
 近年,SAR搭載の人工衛星が次々と打ち上げられ,高精度かつ高頻度の観測がなされるようになってきた.平行して,汎用性の高い解析ツールも開発され,研究者に広く公開されている.多くのSARデータが蓄積することにより,これを用いて地盤のゆっくりした変動を検出する試みが,2010年前後からなされてきた.我が国のSAR研究者グループのPixelも講習会を開催し,時系列解析の導入を図ってきて,それぞれの研究者が様々な地域の変動の検出を試みている.

 本発表では,まずInSARになじみのない初学者に向けて,InSAR解析の概略を説明する.さらに,時系列解析の例として京都・大阪地域の地盤変動の検出結果を報告する.

 私は2006年から2011年まで運用されたALOSのデータを用いて,京阪神地域などの地盤変動の研究を行い,有馬高槻構造線に沿った変動や京都盆地南部の隆起などを検出した.これらの変動がその後どうなっているのか興味があるところである.2014年以降にALOS-2とSentinel-1が打ち上げられ,今年までにかなりのデータが蓄積されている.これを国土地理院森下遊氏が開発したLiCSBASを用いて解析した.LiCSBASはpythonで記載された時系列解析コードで,イギリスのLeeds大COMETのプロジェクトの一環で開発されたもので,COMETによるSentinel-1データの解析結果から地盤変動の時間変化を検出するものである.しかし,ALOS-2など他のSARデータも容易に解析できる,極めて汎用性の高いソフトウェアである.

 2014年から2021年までの京都・大阪地域をカバーするSentinel-1およびALOS-2データを収集した.Sentinel-1についてはLeeds大のサイトLiCSARより解析済みの干渉画像とコヒーレンス画像を取得し,処理をした.ALOS-2については,Gamma®を用いて電離層補正を施した干渉処理を行い,その結果をLiCSBASに入力した.両者の結果に共通することは,(1)京都盆地南部の隆起域が縮小し,隆起速度も低下していること,(2)池田〜宝塚付近にみられた有馬高槻構造線と六甲断層帯に挟まれた地域の沈降が,隆起に転じていること,(3)大阪平野がほぼ全域で隆起していること,(4)奈良盆地南部で顕著な隆起の加速が見られること,(5)京都盆地の巨椋池干拓地と京田辺市・八幡市付近で急速な沈降が生じていること,など変化が認められた.顕著な変動が生じている地点において時系列をチェックしたところ,(2)については2008年ころ(ただし,大阪府北部地震以前)に変動の逆転が生じていることがわかった.

 なお,時間が許せば,2016年熊本地震後の余効変動の解析結果についても報告する.


<次回の予定>
10月29日 山下 裕亮

第3回宇治固体地球コロキウムを以下のとおり開催します。


-------------- 第3回 宇治固体地球コロキウム -------------

日 時: 2021年9月9日(木) 16:00 – 17:30
場 所: Zoom

講演者: 橋本 学 教授
Title: InSAR時系列解析による地殻変動の検出
要旨:
 近年,SAR搭載の人工衛星が次々と打ち上げられ,高精度かつ高頻度の観測がなされるようになってきた.平行して,汎用性の高い解析ツールも開発され,研究者に広く公開されている.多くのSARデータが蓄積することにより,これを用いて地盤のゆっくりした変動を検出する試みが,2010年前後からなされてきた.我が国のSAR研究者グループのPixelも講習会を開催し,時系列解析の導入を図ってきて,それぞれの研究者が様々な地域の変動の検出を試みている.

 本発表では,まずInSARになじみのない初学者に向けて,InSAR解析の概略を説明する.さらに,時系列解析の例として京都・大阪地域の地盤変動の検出結果を報告する.

 私は2006年から2011年まで運用されたALOSのデータを用いて,京阪神地域などの地盤変動の研究を行い,有馬高槻構造線に沿った変動や京都盆地南部の隆起などを検出した.これらの変動がその後どうなっているのか興味があるところである.2014年以降にALOS-2とSentinel-1が打ち上げられ,今年までにかなりのデータが蓄積されている.これを国土地理院森下遊氏が開発したLiCSBASを用いて解析した.LiCSBASはpythonで記載された時系列解析コードで,イギリスのLeeds大COMETのプロジェクトの一環で開発されたもので,COMETによるSentinel-1データの解析結果から地盤変動の時間変化を検出するものである.しかし,ALOS-2など他のSARデータも容易に解析できる,極めて汎用性の高いソフトウェアである.

 2014年から2021年までの京都・大阪地域をカバーするSentinel-1およびALOS-2データを収集した.Sentinel-1についてはLeeds大のサイトLiCSARより解析済みの干渉画像とコヒーレンス画像を取得し,処理をした.ALOS-2については,Gamma®を用いて電離層補正を施した干渉処理を行い,その結果をLiCSBASに入力した.両者の結果に共通することは,(1)京都盆地南部の隆起域が縮小し,隆起速度も低下していること,(2)池田〜宝塚付近にみられた有馬高槻構造線と六甲断層帯に挟まれた地域の沈降が,隆起に転じていること,(3)大阪平野がほぼ全域で隆起していること,(4)奈良盆地南部で顕著な隆起の加速が見られること,(5)京都盆地の巨椋池干拓地と京田辺市・八幡市付近で急速な沈降が生じていること,など変化が認められた.顕著な変動が生じている地点において時系列をチェックしたところ,(2)については2008年ころ(ただし,大阪府北部地震以前)に変動の逆転が生じていることがわかった.

 なお,時間が許せば,2016年熊本地震後の余効変動の解析結果についても報告する.


<次回の予定>
10月29日 山下 裕亮

トピック一覧に戻る

Back to Topic List

© Research Center for Earthquake Hazards.

© Research Center for Earthquake Hazards.